世界にはその世界に合った様々なルールがある、そのルールによっては必要とされるモノも当然変わってくる。
この世界でもそれは例外ではな、異世界モノに良くある冒険者ギルドに出される依頼に『レベル上げ代行』と言うものがあった。
この世界ではスキルを使って鍛冶職や製造職が仕事を行う、だがその為に日常生活の作業でスキルを使って仕事が安定して出来るほど神力が貯まることは殆どの者が無い。
その為に必要経費として冒険者ギルドに依頼を出して、一時的にパーティーを組んでもらい同行する事でレベル上げを行ってもらう仕事が存在する。
金額に応じて手強い魔物を倒す冒険者の質が上がり、冒険者側も依頼をこなせば自身のレベルが上がりギルドランクも上がる、そうすれば更に強い魔物を倒して…
っと持ちつ持たれつの需要と供給が安定したこのレベル上げ代行がこの世界のギルドの1つのメインの依頼となっているのだ。
「レベル上げ代行の依頼をお願いします。報酬は銀貨30枚で」
フーカが受付に依頼を出して1割の手数料込みで銀貨33枚をゴンザレス太郎が手渡す。
ハッキリ言ってこの額は高過ぎた。
通常のレベル上げ代行の場合、場所にもよるが銀貨5枚から10枚が相場なのだ。
だがこれにはフーカの考えがあった。
「私達二人を護衛出来て専属契約を受けれる人を募集して下さい、面接の後決めさせてもらいます」
「わ…分かりました」
とても7歳の依頼とは思えないほどしっかりしたフーカの依頼を処理し、直ぐに書類を作成する職員。
子供であろうが金銭を支払う以上一人の依頼主として扱う受付嬢、それを見ながら周囲をチラチラと意識するゴンザレス太郎。
少しして、既にアイアン達がギルドに居なかったのを確認し、幸いだったとゴンザレス太郎は安堵する。
依頼書を発行し終わり職員が確認を求め、確認後二人が許可をしたら掲示板に依頼書が貼り出される。
「おっおいこの依頼を見ろよ!」
朝方の依頼を終えて報酬で食事をして居た一人の冒険者が声を上げた。
この時間に貼り出される依頼には大したものは無い、だが午後は暇だし簡単なのならやっとくか…
って気持ちでそれを見て驚き、相棒の冒険者に声を掛けた。
「せ…成功報酬銀貨30枚?!」
その声に近くに居た冒険者達も次々に集まる。
それもそうだろう、高額報酬な上に専属契約を結べれば依頼を優先して回してもらえ、しかもこの高額報酬を定期的に得られるかもしれないのだから。
冒険者達は我先にと受付に押し掛ける。
だが次々に苦虫を噛み砕いたような顔をして受付を去る冒険者達。
そう、報酬に目が先に行ってしまい依頼主の指定した場所を確認していなかったのだ。
『慟哭の洞窟』
そこはギルドランクC以上のメンバーが居るパーティーが入れる難度の高いダンジョン、そこの魔物は非常に手強いのである。
特にギルドランクCと言えば一流冒険者と呼ばれる強さと技術を持った者しか到達出来ないランクなのだ。
二人はそのギルド内の様子を確認し、そのまま帰宅する。
いつの間にかフーカはゴンザレス太郎の袖ではなく小指を摘まみながら…
そして、翌日学校帰りにギルドに寄った二人に面接希望の冒険者が待っていたのだった。