異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第14話 水溜りの奥・・・

「おわぁっ?!」

 

水溜りの中に在る筈の地面が無く、その中へバランスを崩して飛び込んだピコハン。

水中で呼吸が出来ないと思った次の瞬間には水面を突き抜けて、洞窟の中に転げて咄嗟に受身をとる。

岩肌が少し痛かったが、すりむいたくらいで特に怪我と言う怪我はしていなかったのが幸いであった。

 

「ここは・・・どうなってんだ?」

 

天井を見上げてピコハンは呟く、その見上げる天井には水溜りが在ったのだ。

そう、天井に水溜りが出来ているので在る。

そして、その異様な光景を見詰める視線を地面に移すと微妙に踏み鳴らされてない地面が視界に入る。

 

「これって・・・もしかして天井?」

 

通常ならダンジョンの中で地面と天井の違いなんて確認する事が無いのが普通だが、人だけでなく獣すらも歩いた形跡が地面には無く天井には在った。

そして、それを確認しながらピコハンは気付く!

 

「って松明消えてるのになんで見えるんだ?」

 

そう、水溜りに入るまでは洞窟内は真っ暗で松明が無ければ何も見えなかったのに、現在はまるで洞窟内がいつものダンジョンの様にはっきりと見えるのだ。

手に持っている松明は湿りこのままでは使用できないだとうとピコハンは足元に突き立てる!

もし迷った時の道標としようと考えたのだ。

 

「さて、どっちに進むかな・・・」

 

流石普段ダンジョンに単独で潜っているだけあってピコハンの判断に迷いは無かった。

通常ならこの異様な光景に困惑するのだが、ダンジョンは異常なのが通常という考えが頭に在るピコハンには関係なかった。

とりあえず一度行き止まりだった奥の方へ進む事にしたピコハン・・・

そして、突き当りでそれを見かけた。

 

「これは・・・人の仕業だな・・・」

 

そこには探検者と思われる男の遺体が横たわっていた。

足が変な方向に曲がっているのに加え、腹部から大量に出血をしたのであろう、刃物で切り付けられた後と周囲に残る血の後から仲間割れか盗賊的なモノかは分からないが、この人物が殺されたと言うのは確認できた。

そして、着ている物以外何も所持していないところから、

食料や消耗品を奪われたのだとピコハンは判断した。

 

「なんにしてもキャベリンの言ってた人は女だから違うか・・・」

 

そう言ってピコハンは来た道を戻りだす。

死体に関しては所持品が全く無かったのに加え、死んでから結構時間が経過しているのか腐敗が始まっていたので触らないで放置したのだ。

疫病が広まったりアンデット化する可能性もあるが、この場所で火を使うと何が起こるか分からなく非常に危険な上、水溜りを通過した時に湿ってしまったので松明関係は持っていないのだ。

一応共有箱を展開して遺体を回収する事も可能では在るが、所持品もない見も知らぬ人物にそこまでする必要は無いとピコハンは判断していた。

人の死が日常となるダンジョンなのだから仕方ないだろう。

 

「とりあえずループや一方通行と言った罠ではないみたいだな・・・」

 

地面に突き刺した松明の場所まで戻って来たピコハンは天井に在る水溜りに視線をやり、独り言を呟きながら逆側の洞窟の外側へ向けて歩き続ける。

広さ的に女王蟻の剣を振り回すのは難しいので、暗器としていつでもクナイが取り出せるようにしながら警戒しつつピコハンは先へ進む。

そして、洞窟の外が見えてきた。

太陽の光が差し込む場所まで歩きピコハンは驚きにその光景を見詰めるのであった。

 

「なん・・・だここ・・・」

 

そこには荒れ果てた大地に草木の全くない、まるで滅んだような世界が広がっていた。

広大に広がるそこを見渡しながらピコハンは立ちつくす。

そこは完全に別世界であった。

だが空を見上げてピコハンはなんとなく理解する。

そこには天井に岩肌が見えておりその岩から太陽が透けて見えており光が届いているのだ。

天井が在る、つまりここは世界の裏側なのだ!

 

「っ?!」

 

あちこちを眺めていたピコハンは突然殺意を身に浴び、咄嗟に体を横へ移動させる。

すると今さっきまで立っていた場所を何かが物凄い速度で通過していった。

チラリとそれを見ると短剣であった。

 

「今回の獲物は運が良いらしいな」

 

突然聞こえたその声はピコハンの直ぐ近くから聞こえた。

視線をやるが声の主は見つからない、だがその方向から物凄い殺意が自分に送られているのは分かる。

そして、そこに熱を持った何かが在るというのも火の加護により察知していた。

 

「だが・・・雄に用は無い!」

 

踏み込みと思われる足音が自分の立つ数穂先の場所に現われた!

だが、それだけでピコハンにとっては充分であった。

足音と火の加護の感知でその自分を狙う者との距離とサイズを理解したピコハン、地面を蹴って一気に前に突っ込んだ!

 

「なっ?!!」

 

直後、ピコハンの肩に相手の腹部が衝突する感触を感じ、ピコハンはそのまま見えない何かの振り上げられている腕と思われる物を掴んで、そのまま前に進みながら真後ろに背負い投げを行なった!

しかも投げた相手の腕を放さなかった為、そいつは地面に頭部と思われる物をぶつけながら勢いに引っ張られ地面を削る!

 

「があああああああああああ!!!」

 

人間だったら頭部からあの勢いで地面に叩きつけられれば間違い無く重症は確実なのだが、そいつは叫びを上げるだけで対して効いていないのを感じさせた。

ダメージを負ったからなのかそれともナニか理由が在るのか、突然そいつは姿を現わした。

殆ど全裸で赤い体、腰に1枚布の様な物を巻きつけ、人と同じ姿をしたその大男は痛む頭部と首を擦りながら立ち上がる。

唯一違うのは、そいつの耳の上辺りに2本の曲がった黄色い角が生えている事だろう。

 

「ただの人間風情が調子に乗るなぁ!!!」

 

地面に転がっていたそいつの武器はまさしく金棒、ピコハンは人の言葉を話す魔物なのだと理解し、クナイを1本手にして構える。

そして、そいつの振り上げられた拳がピコハンに迫る!

だがその速度もパワーも今のピコハンにとってしてみれば大した事は無く、ピコハンはその腕の内側をクナイで切り付けた!

どんな生物でもそうだが、関節の内側となっている部分は皮膚が非常に弱いのだ。

その傷跡はまるでリストカットをしたように出来上がり、一気に血が噴出す!

間違い無く動脈を切り裂いたのだ。

 

「こ・・・こんな馬鹿なぁあああ!!」

 

慌てて自身の腕を止血する為、もう一本の手で傷口を押さえる魔物。

油断は一切しない、戦いとはお互いの命と命のやり取りなのだ。

ピコハンは瞬時に間合いを詰めてそいつの首元にクナイを突きつけた。

 

「降参するなら命は奪わないがどうする?」

「ぐ・・・分かった。降参する。」

 

そいつは口惜しそうに宣言し項垂れた。

そして、気になる言葉を発する・・・

 

「まさか、鬼である俺よりも強い人間がいるなんてな・・・」

 

ピコハンは理解していなかったが、そいつは鬼と言う種族の魔物で、赤色の肌をしているので赤鬼と呼ばれる魔物であったのだ。

一度は命を狙われたが、今は情報が欲しいピコハンはクナイを仕舞い赤鬼から距離を取る。

 

「それじゃ色々教えてもらえるかな?」

 

ピコハンの言葉に赤鬼は出血部分を抑えながら静かに頷くのであった。

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