異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第20話 赤鬼達vs両腕の使えないピコハン

折れた両腕をまるで鞭の様に振り回しながら、踊るように蹴りのみで赤鬼を次々と倒していくピコハン。

折れた両腕に力が入らず骨折の為、常に激痛が駆け抜けるがそんな事を気にもせずにピコハンは襲い掛かる赤鬼達を次々と沈めていく。

 

「があああああああ!!!」

 

数匹の赤鬼がピコハンを囲って複数で押さえつけようと両手を伸ばしてきた。

囲まれた状況を逆に利用して三角飛びの様に囲って来た赤鬼に空中で蹴りを入れながら暴れるピコハン!

 

「相手は手負いの人間一匹だぞ?!何をやってるんだ!」

 

複数居る赤鬼の中でも一回り体の大きな赤鬼が叫び、目の色を変えて襲い掛かる赤鬼達!

何度かピコハンの折れた腕を掴んだ赤鬼も居たのだが次の瞬間にはピコハンの蹴りで掴んだ腕をへし折られ絶叫する赤鬼。

犯されてボロボロになっている女達をピコハンと共にやってきた女達が介抱しながらその光景を見守る。

まるでどちらが鬼なのか分からない程の圧倒的なピコハンの強さに恐れながらも、ピコハンの敗北が自分達の全滅に繋がると理解している彼女達は目を離さない。

 

「きゃぁ?!」

 

そんな中、先程の赤鬼が女の一人を捕まえた。

既にピコハンにより赤鬼は4匹を残すのみとなり周囲には瀕死の赤鬼達が横たわっていた。

 

「動くな小僧!お前は強い、だがこの女がどうなってもいいのかな?」

 

そう言いボス赤鬼は捕まえた女の頭部を鷲掴みにしてゆっくりと力を込める。

 

「アアあああああ・・・たす・・・けて・・・・」

 

ギリギリと自身の頭が握り潰されそうになるのに恐怖する女は真っ青な顔をしながら泣く。

それを見てピコハンは止まった。

 

「そう、それでいいんだ・・・」

 

そう告げた赤鬼に対してピコハンは目を向ける。

まるで生ゴミを見下ろすような視線を向けたピコハンに赤鬼は恐怖を感じた。

しかし、全滅寸前まで追い込まれた赤鬼は恐ろしくも無抵抗になったピコハンに対して嬉しそうな笑みを浮かべる。

 

「させない!」

 

女性の頭部を掴んでいる赤鬼の手へ飛びつき、その手首に噛み付く一人の女性が居た。

人間同様手首の動脈は内側に在るので噛み付く場所が悪く、歯型が付いた程度であったが赤鬼の意識がそっちに反れた。

彼女こそキャベリンの親戚の娘、アンナであった。

 

「こ、この女?!」

「きゃぁ?!」

 

赤鬼は頭部を掴んでいた腕を振り、アンナと共に捕まえていた女が手から離れた。

その一瞬でピコハンは飛び出し、ボス赤鬼の腹部に蹴りを叩き込んだ!

 

「ぐべはぁ?!」

 

くの字に腰を曲げるボス赤鬼。

腹部に叩き込まれたピコハンの左足は足先を赤鬼の腹部に突き刺しており、そこを軸に右足での膝蹴りがボス赤鬼の頬に叩き込まれる!

それと同時に突き刺さっていた左足が引き抜かれ腹部から大量に出血するボス赤鬼。

 

「ば・・・ばかにゃ・・・」

 

膝蹴りで顎の骨が歪み、上手く話せなくなっていたボス赤鬼はそのままゆっくりと前に倒れようとする。

その前でピコハンは一度着地し直ぐに飛び上がり左足を振り上げる!

 

「がぁあああああ!!!」

 

ピコハンの雄叫びと共にボス赤鬼の頭部に踵落としが炸裂し、赤鬼の頭部は地面に叩き付けられ周囲がひび割れを起こす。

その威力を目の当たりにした残った3匹の赤鬼は両腕が使えないにも関わらず、強すぎるピコハンを見て我先にと逃げ出す。

実に30を超える赤鬼の大軍であったのにも関わらず生き残ったのは僅か3匹。

それが赤鬼達に絶望を与えたのだ。

実際にはまだ息の在る赤鬼も居るのだが、そいつらを見捨て逃げたのだ。

 

「終わったか・・・」

 

呟きと共に膝をついて朦朧とする意識を何とか繋ぎとめるピコハン。

赤鬼達は逃げたが、それでもここはまだ鬼が跋扈する地域なのだ。

 

「君っ!大丈夫?!」

 

アンナが駆け寄りピコハンはボロボロの状態にも拘らず微笑みを浮かべる。

殆どの者がボロボロの状態になりながらも互いを助け合いその場を後にする。

赤鬼の死体は勿論そのままである。

もし持ち帰ったとしても素材として使えるのは角くらいなのだ。

そうして見えてきたのはここに来た時に通った洞窟であった。

 

「もう直ぐよ!頑張って」

 

アンナの声掛けに誰もが最後の力を振り絞り中へ足を踏み入れる。

そして、洞窟の途中に在る天井の水溜りの下で座り込む一同。

ここまで来れた事に喜びもあるが天井に在る水溜りへは届かないのだ。

 

「あとはどうやってあそこを通るか・・・ね」

 

アンナの一言にピコハンは壁に寄り添って座った状態でアンナに声を掛ける。

 

「ごめん、俺の腰に在るこれ取ってくれる?」

「えっ?うん、これ?」

 

そう、ピコハンの腰に装着しているペットボトルサイズの筒の様な物。

アンナはピコハンの指示でそれを展開する。

それは一応持ち込んでいた共有箱であった。

 

「中に手を入れると紙とペンが入っていると思うからそこに『台になりそうなもの頼む』と書いて入れてくれ」

「うん、分かった」

 

アンナは両腕が使えないピコハンに代わりメモを書いて共有箱の中へ再び入れる。

 

「10分位したら中に台に使えそうな物が来ると思うから出して使ってくれ、俺は少し・・・眠る・・・」

「えっ?あっ分かった」

 

そう言ってピコハンはそのまま横になり意識を失うのであった。

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