異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第2話 ダンジョンの恐怖を知るアリー

「せいやっ!」

 

地蔵の体当たりを横に回転しながらかわしたアリー、その勢いに乗せて地蔵の背中を石刀で切りつける!

石で出来た地蔵がどうやって移動しているのか謎だが、足は固定されているようで先ほどから体当たりと両腕による攻撃しか行なわれていない。

なので特に苦労もなく小さな4体の地蔵を翻弄しながらピコハンは横目で確認する。

 

(おかしい・・・)

 

アリーは確かに他の冒険者よりも優れた動きをしており、地蔵の攻撃を上手く回避しながら着実にダメージを与えている。

足元に地蔵の欠片が落ちている事から確実に地蔵はダメージを負っているのは分かる。

だが・・・

 

「おっと」

 

小さな地蔵の振り下ろしチョップの様な攻撃をピコハンは地蔵の背に回りこむような動きで回避して、次に襲い掛かろうとしている地蔵に向かって突き飛ばす。

そうやって余裕の表情を浮かべながら、小さな4体の地蔵を同時に相手取りつつアリーの方へ気を配る。

そう、アリーとクリフは行き止まりになっているこのダンジョンのここが最深部だと考え、この地蔵を倒せば攻略できると考えているのだ。

ピコハンは公言していないが、未だダンジョンを攻略したと言う話は誰も言っていないので最深部の難易度は誰も知らない。

だがピコハンは知っている、だからこそ疑問に思ったのだ。

 

(この程度で攻略できる難易度なのか?)

 

そう、明らかに今回のダンジョンは手ごたえが無さ過ぎなのだ。

だからこそ必死に地蔵を相手に戦っているアリーに気を配っている。

そして、自分に襲い掛かる4体の地蔵を敢えて倒さないようにしているのだ。

 

(こういう場合こいつらを倒すと更に強い増援が来たりしそうだからな)

 

そうやって手を抜いて相手をしても余裕な程にピコハンにとっては地蔵4体は弱い相手であった。

 

「ほらっ!これでどうだ!」

 

突き出されたボス地蔵の腕を斜めに飛び上がりながら石刀で叩きつけるアリー!

その衝撃でボス地蔵の片腕が遂にひび割れて折れた!

だがアリーは油断をせずに再び踏み込み、ボス地蔵の横腹を通り過ぎながら斬り付ける!

腰が大きくひび割れた地蔵はアリーの方を向き直そうとして体を動かす、するとそのひびが広がりその動きがぎこちなくなった。

 

「アリーチャンスだ!」

 

扉の向こうでクリフが叫び、アリーは頷いて追撃に飛び出した。

だが次の瞬間ボス地蔵の顔面が破裂し、そこから人間の腕の様な物が生えてきた!

 

「はっ?」

 

その異様な光景に唖然としてしまったアリーはその腕が振り下ろされるのを見詰めてしまっていた。

予期せぬその現実に思考が停止してしまったのだ。

だがその腕はアリーの直ぐ真横に振り下ろされ、その衝撃でアリーは突撃していた勢いのままボス地蔵の横を通り過ぎて転げる。

 

「逃げろアリー!」

 

扉の向こうでクリフがボス地蔵に向かって何かを投げつけるのが視界に入り、アリーは慌てて扉に向かって走り出す。

だがボス地蔵の首から生えた腕はその飛んできた物を掴んで、走っているアリー目掛けて投げ返したのだ!

その行動にクリフは理解した。

前回アリーと冒険者数名が戦った時にその煙球の様なアイテムを投げつけて退却していたのを見て、ボス地蔵は理解していたのだと。

駆けるアリーの背中にとの投げつけられた玉が当たりそうになった時であった。

 

「させない!」

 

ピコハンがアリーの背後に迫る玉を叩き落したのだ!

地面に落ちた玉から一気に煙が噴出し、視界を遮りそれに乗じてアリーは扉まで駆ける!

そして、外に出ようとしてクリフがそれを妨害するように立っているのに怒鳴ろうとしてその顔を見て固まる。

クリフは一部始終を見ていたのだ。

 

「ははっ・・・嘘でしょ・・・」

 

クリフの視線を追って振り返ったアリーもそれを見て固まった。

立ち込めた煙が真っ二つに割れてピコハンがそこに立っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少しだけ巻き戻る。

 

アリーがボス地蔵に向かって追撃をしようとした時に、ボス地蔵の頭部が割れて腕が生えた!

そして、その腕がアリーに向かって振り下ろされようとした時、ピコハンは近くに居た地蔵の1体の頭部を掴んでアリーに振り下ろされようとしている腕に向かって投げつけたのだ!

いくら小さいとはいえ60センチは身長の在る地蔵、それが全て石だとすればその重量は結構なモノである。

それをピコハンは片腕で掴んで投げつけたのだ!

それが当たった為にアリーに振り下ろされた腕は横にそれていたのだ。

その勢いは凄まじく、腕にぶつかった衝撃で小さな地蔵は木っ端微塵に粉砕していた。

 

更にクリフが投げた煙球を投げ返された時も、ピコハンは襲い掛かる地蔵の胸を両手で掴んでその地蔵で叩き落したのだ!

勿論その衝撃でその小さな地蔵も木っ端微塵である。

そして、噴出した煙に向かって襲い掛かった残りの小さな地蔵2体の体当たりをしゃがんでかわし、その下半身を片手で掴む!

その握力は指が石の中にめり込む程の力で、そのままピコハンは煙の中から飛び出して腕の生えたボス地蔵に向かって飛び掛り、手にしていた地蔵を2体同時に叩きつけたのだ!

 

あまりの勢いに空気が割れ広がりつつあった煙はその部分だけが割れて視界を確保する。

アリーとクリフはピコハンがたった一人で全ての地蔵を大破したのを見たのであった。

 

 

 

 

 

 

「す・・・凄い・・・」

 

クリフが扉に両手を付いたまま硬直し、アリーもその光景を黙って見ていた。

その時であった。

部屋がいきなり揺れた!

 

「うっうわぁ?!」

 

クリフの声が一瞬聞こえた気がしたアリーは振り返って扉を見て唖然と固まってしまった。

先程まで扉の向こうにいたはずのクリフがいなくなり、扉の向こうには岩肌が見えていたのだ。

それは先程の振動が原因であることは一目瞭然であった。

 

「な・・・なに?えっ?くり・・・ふ・・・?」

 

アリーが呆然として扉の方を見ながら固まっていると再び振動がアリーを襲った。

それでアリーも理解した。

部屋ごと下へ降りたのだと。

 

「大丈夫ですか?」

 

振動に驚いて座り込んだアリーに声を掛けるピコハン。

そのピコハンを見てアリーは悟った。

一切困惑も恐怖もしていないピコハンの表情から、ダンジョンの本当の恐ろしさを自分以上に理解しているのだと感じ取ったのだ。

そして、ピコハンの背後に視線をやり、口から言葉が漏れる。

 

「う・・・嘘でしょ・・・」

 

アリーのその言葉にピコハンも振り返り口にする。

 

「はぁ・・・やっぱりそうだよね」

 

そこには千手観音の様な物凄い腕が多数生えた石の魔物が1体、そしてその横にはアリーが戦ったボス地蔵が4体こちらに向かって移動してきていた。

あのボス地蔵を倒せばこのダンジョンを攻略出来ると考えていたアリーはその絶望的状況に腰が抜けていた。

逃げ道は完全に無くなり、自分はここで死ぬのだと考えていたのだ。

だがピコハンはアリーの肩に手を置いて一言告げる。

 

「ここから動かないでね」

 

その言葉にアリーはピコハンを見上げる。

自分よりも小さな少年だった筈なのに、その姿が巨大に見えたのだ。

言葉を発する事無く頷いたアリーにピコハンは微笑みを向けて肩から手を離す。

 

「さて、ちょっと本気出そうかな」

 

そのピコハンの後姿にアリーはつり橋効果なのか、胸がドキドキするのであった。

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