気付くとそこはとても天井の高い部屋の中だった。
(ここが異世界!?あの白い人形は確か転移じゃなくて転生って言ってたな、つまり俺は今赤ん坊って事か!?)
達也は筋肉が全然ないからなのか、仰向けのまま全く動けないし、声を出そうとしても泣くことしか出来ないのでそうだと確信した。
「あらあら、起きちゃったのね」
(この人が母親か!中々の美人さんじゃないか!)
「おっ起きたならちょっと抱かせてくれよ」
(っとなるとこっちがお父さんって…うわわわ)
頭の重さに首が耐えきれず、首がもげるイメージが頭を過りヒヤッとする。
「あなた気を付けて、まだ首が座ってないんだから」
「おっとと…こ、こうか?」
父親の腕に頭を乗せて貰い、持ち上げられた浮遊感に心が踊る。
力強い腕に包まれる安心感、達也も昔感じていた筈の感覚であるが凄く新鮮であった。
「おっ?!今こいつ笑ったぞ!おーいパパだぞー」
(やはり父さんか、中々の男前で鼻筋も通ってて…これは自分の顔に期待してもいいんじゃないか?)
父親の顔を見て、自分が今回の人生ではイケメンになるかもしれないと考えて嬉しくなった。
「きゃっきゃっ」
「ををっ?!パパが大好きか!パパも大好きだぞ!」
親バカである。
「ところでアナタ、この子の名前は決まった?」
「いやーまだ二つの候補で悩んでいるんだよなー」
「この子の将来得られるスキルがとても良いものになる名前を占ってもらったんでしょ?」
「それがな、候補の名前が5つくらい出たそうでな…占い師もこんなことは初めてだと言ってたよ」
(ん?もしかして俺の名前の話か?生まれ変わるならやっぱり格好良い名前に憧れるよな)
「最終的に候補に残ってるのが『ぺニス太郎』と『ゴンザレス太郎』なんだ」
(ちょっと待て!なんでそんな名前?!けど絶対ぺニス太郎だけは嫌だ!)
「俺的にはぺニス太郎に決めようかと思って…」
「ビエーンビエーンビエーン!!!」
全力で阻止するために泣いた!とにかく泣いた!
その名前では将来絶望する未来しか見えないのだ。
「もしかしたら『ぺニス太郎』は嫌なんじゃない?」
(そうだよママンその馬鹿な親父をどうにかして止めて!)
「しかしだな、これからの時代これくらい個性的な名前じゃないと女の子にモテないんだぞ」
(いや、モテてもそんな名前だったら逃げられるから!歩く変質者だから!)
「それにゴンザレス太郎って呼びにくくないか?」
(そこっ?!最終的に悩むとこそこっ?!)
「いいじゃない、ゴンザレス太郎…私は好きよ」
(ママンその調子だ!だけど出来れば違う名前がいいよぅ)
「そうか、お前が好きと言うならそうするか!今日からこいつはゴンザレス太郎だ!」
この残念な両親に付けられた名前で時は進み、ゴンザレス太郎は6歳になっていた…