異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第13話 奇跡を呼び込む決死の拳

「うぉおおおおおおおお!!!!!!!」

 

ドドドドドドドドドドドドドド!!!!と拳が頭上のスライムに叩き込まれる音が密封された空間に響き渡る!

既にスライムはピコハンが拳を叩き込んでいる部分だけが持ち上がり地面に着地していた。

スライムの体内でテントを貼っている様な状況でピコハンの居る部分だけが残っているのだ。

拳を叩き込む度にその部分から波紋が広がり、少しだけスライムは凹む。

だがそれ以上のダメージを与える事が出来ず、無駄な延命処置を行なっているのと同じ状況となっていた。

 

「があああああああああああああ!!!!」

 

途中からピコハンの叫び声が変化した。

その叫び声もスライムに包まれた状態では外へ伝わらずにいる。

そして、その叫び声の原因は痛みであった。

幾ら規格外の攻撃力で拳を叩き込んだとしてもスライムの体に触れている以上それは拳に影響を与えていた。

既にピコハンの指は消化され始めており、指の骨がむき出しとなっていた。

途中まで飛び散っていた血も既に血管が消化されているので拳から飛び散らなくなっていた。

それでもピコハンは拳を突き出すのを止めない、いや止められない。

両手から指が溶かされる凄まじい激痛が伝わるが、その拳を止めればスライムに押しつぶされ全身を消化されて死ぬのは目に見えている。

このまま殴り続けてどうなるというのか・・・

そう考えて諦めて楽になる、消化されて命を無くすのはこのまま殴り続けるのよりもきっと楽だ・・・

 

「ぐぅううああああああああああああ!!!!!!!」

 

脳裏にそんな甘い囁きが聞こえた気がしたピコハンはそれを振り払うように更に拳を突き出す!

時間にして僅か15秒程だろう、ピコハンの顔色が青紫になりつつあった。

酸欠である、スライムに密閉された空間と言うのもあるが、殆ど呼吸をする事無く全力で拳を突き上げ続けているのだからそれも仕方ないだろう。

既に握りこんだ手の力を弱めれば指が手から外れるところまで消化されているのだがピコハンは何も考えずに腕を動かし続ける。

そして・・・その時は来た。

 

奇跡、それは諦めない者にのみ訪れるモノである。

 

全ては偶然であった。

重力方向が変わりピコハンを包み込むようにスライムが位置した事。

これによりスライムの天敵であるクリオネがフェロモンを発して敵認定しているのがスライムとその中に居るピコハンとなった。

 

全ては偶然であった。

このスライムが知性を持たない軟体生物であった事。

一斉に部屋に居たクリオネがスライムに襲い掛かりスライムの表面はクリオネの破裂の衝撃で削られ続けていた。

それも破裂する度にその破壊力を増しながら。

 

全ては偶然であった。

このスライムの核と呼ばれる脳の様な物が破裂して削られるクリオネを避けて体の奥深くへ下がった事。

上面はクリオネによって破壊されているが、下面のピコハンに殴られ続けている部分はダメージが一切無かったのだ。

 

全ては偶然であった。

普段なら生物を押し潰して消化し直ぐに近くの穴へと逃げクリオネから逃げていた事。

だがピコハンが殴り続けている為にその場から移動が出来なくなっていた。

 

全ては偶然であった。

部屋の重力方向が変化した為にスライムが新たにこの部屋に流れ込まなくなっていた事。

これにより増え続けるのはクリオネのみとなっていた。

 

全ては偶然であった。

殴り続けるピコハンの拳が消化されて骨をむき出しになっても殴り続けていた事。

このスライムは骨を消化できなかったのだ。

その為、拳の骨だけになったピコハンの拳は止まらずに殴り続けられていた。

 

そして・・・全ては必然となった!

クリオネの連鎖的な一斉爆破音!その衝撃はスライムの体に包まれていたピコハンには届かなかった。

クリオネから逃げようとスライムの核は体の下へと下がりピコハンの拳が届く所まで来ていた。

結果、ピコハンの拳はスライムの体内の核に叩き込まれた!

 

「だああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

既に感覚のなくなっているピコハンはスライムの核に拳が当たった事すらも気付かず拳を突き上げ続ける!

そして、スライムの核がピコハンの拳によって木っ端微塵に砕け散った!

一瞬にしてスライムの体はピコハンの拳によって出来た波紋により全方向へ爆発するように飛び散る!

スライムの核は断末魔の叫びすらも上げる暇なく消え去り、爆発するように飛び散ったその体は飛んでいた無数のクリオネに触れて部屋中で一斉に大爆発が起こる!

それでもスライムの体が飛び散る方が爆発力が強かったようで、それはピコハンとは逆方向へ広がる!

爆発に巻き込まれたクリオネは静電気ではなく熱によって焼死する。

これが更なるクリオネを呼ぶ為のフェロモンを出さなくなり部屋に居たクリオネはフェロモンと共にその殆どが一気に消え去り、まるで雨が降るように大広間の中にはスライムの体だった液体が降り注いだ。

幸いにも核が死んだ事でスライムの体は消化する力を失っており、拳を突き上げたまま固まっているピコハンに降り注いだ。

拳を天へ向けて突き上げた状態で意識を失っているピコハンはその雨により崩れるようにその場に倒れこむ。

 

「げほっごほっごほっ・・・」

 

降り注ぐスライムの液体により目を覚ましたピコハンは新鮮な空気を吸おうと深呼吸をするのだが、口の中にスライムが一緒に入り込んで咳き込む。

直ぐに顔を下にして指が白骨化した両手を地面に付いて四つん這いになり口に入ったスライムを吐き出しながら呼吸を整える・・・

ピコハンは生き残ったのだ。

 

『まさか生き残る玄武候補が現れるとはね・・・』

 

その声に気付いたピコハンは顔を上げる。

そこにはいつの間にか1人の男性が立っているのであった。

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