異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第15話 リトーと世界の真実

「あなたも・・・女神様なのですか?」

 

笑い転げる真っ白の輪郭だけのその人物に、ピコハンは恐る恐る声を掛ける。

今までの加護を与えてくれた神とはまるで違う雰囲気に完全に呑まれていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ちょっと待って・・・うん、よし。えっと女神かどうかって質問ならそうでもありそうではないかな」

 

笑っていた白い人影は意味不明な言い回しであやふやな返答を返してくる。

 

「とりあえず君の名前を聞いてもいいかな?私はそうだな・・・マリスって呼んでもらえるかな?」

 

そう言って白い人影は少女の姿へ変化した。

銀髪のセミロングのその美少女はまさに美の化身と呼べる輝きを放つ。

 

「どう?これで女って事にしてくれる?」

「神様はなんでもありなんですね」

 

ピコハンは知らないが、これはマリスと名乗った神がとある世界で自身のもう一つの体として作り出した物である。

元々神と言う存在に性別は存在しない、だが好意を持った相手と異性に変化する事が出来るのである。

 

「さて、それじゃあ改めておめでとうピコハン君」

「えっ?俺の名前・・・」

「神はなんでもお見通しと言うことさ」

 

そう言って自身の銀髪を手でフワリと流すマリス。

その表情は懐かしさを浮かべていた。

 

「それよりも、よくホゼを倒したね。お陰でこうしてアイツの世界にも干渉できるようになったよ」

「あっそれでですか・・・」

 

初対面の時の話し方とあまりにも違いすぎてピコハンは警戒しながらも話を続ける。

それはマリスが自身を描いた姿に合わせて話し方を変えているのだが、そんなことピコハンに分かる筈がなかった。

だが自身の手足が徐々に土の加護で治りつつあるのを見て、マリスが嘘を言ってるのではないと考え力を抜いていた。

 

「それよりも、ホゼを倒した事で多分世界中の玄武に関する歴史書とかが認識阻害から外れて今頃大騒ぎだろうな」

「・・・マリス様は全てを知っているんですか?」

「まぁ全てではないけどね、どっちにしても君は知るべきなんだろうから話してあげるよ・・・この世界の真実を・・・」

 

 

 

 

 

その頃、王都の図書館で書物を漁っていたクリフは一冊の本を手にしていた。

今まで手に取れる筈の場所に在ったにも関わらず、一度も手にする事無く見逃していたその本を読んで驚きに包まれていた。

 

「まさかそんな・・・これが真実だとしたら・・・」

 

そこに書かれていたこの世界の真の歴史にクリフは暑くもないのに汗を流す。

現在は失われた文字で書かれたそれを解読しながら読み進めるクリフは最後まで読みきってその名前を凝視する。

 

「これが・・・リトー・・・」

 

 

 

 

 

 

 

ピコハンに対してまるで子供に読み聞かせるようにマリスは話をする・・・

 

「今から数百万年前、海辺に暮らす1人の男が居た。ある日そいつは海辺で猟師達に襲われている一匹の魔物を助けたんだ。その魔物はお礼にとその男を背中に乗せて海の中にある自分達の住処へ連れ帰った。そこで一族で盛大に男への恩返しを行なった。その恩返しは数日続いたんだけど、男は家に残した家族の事を思い出して帰ることにしたんだ。」

 

簡単に話されている内容だが、ピコハンはまるで見てきたようにその光景を思い浮かべながら話を聞いていた。

 

「そして、その魔物の背に乗って帰ろうとした時に男に一つの箱を種族の長が手渡した。魔物が海辺まで男を連れて行き男と別れて魔物は海へ、男は自分の家へと帰っていった。だが・・・男が記憶を頼りに帰った自分の家が在った筈の場所には何も無かったんだ・・・。男は暫くその近辺を彷徨い歩いて遂にそれを見つけた。街だ。それも見た事も無い巨大な建物が立ち並び、見た事も無い乗り物が走り回るその光景に男は理解をした・・・自分は人の身では生き長らえられないくらい長い年月が経過した世界へ来てしまったのだと。」

 

 

 

 

 

 

 

 

クリフが凝視したその今は失われた文字を指でなぞる・・・

その文字は・・・

 

『裏(リ)島(トウ)』

 

クリフは物語が真実であるのならば、ピコハンこそが次の玄武になるのだと考えて思い出した。

 

「な、何故私はピコハン殿を永久の古墳へ?!」

 

慌てて立ち上がりクリフはアリーを呼びに図書館を飛び出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「変わり果てた世界で数日過ごした男だったが、理解の及ばない数々の電子機器・・・と言っても分からないだろうから、不思議なアイテムとしよう。数々の不思議なアイテムにも馴染めず彼は再び海へと戻って来ていた。そして、そこに置き忘れていた魔物の長に渡された箱が落ちているのに気が付いた。男はその箱へ手を伸ばし箱を開けてしまった。」

 

マリスは一つ溜め息を吐いて一度目を瞑り再び語りだす。

 

「開けた箱からは白い煙が噴出し男はその煙に包まれてしまった。その結果、男は老人となってしまったのだ。だがそれを見ていた一匹の魔物が居た・・・男に助けられたあの魔物だ。老人となった男はそこを死に場所としたのかそこへ座り込み何日も身動きもせず過ごしていた。そして・・・運命の日がやってきたんだ。」

 

ピコハンの全身の毛が逆立つ。

まるでそれを知っているかの様な感覚に包まれながらも自分にそんな知識が無いことを理解し聞き続ける。

 

「その日、その進化した人類の手によって世界は滅びる事となった。戦争と言う人間同士の争いで決して使ってはいけない世界を滅ぼす兵器をいくつも複数の人が互いに向けて使用してしまったのだ。その結果、その世界は生物が生きることの出来ない世界となり、その日滅びる事となった。だがその中で男だけは無事だった。その魔物が男を助けたのだ。亀の様な魔物は自身の本来の姿を現し、自身の体内へ男を入れて海の奥深くへ逃げていった。もうそこしか生物が生息出来る場所は残されていなかったのだ。その魔物の名前が『玄武』そして、男の名前が『浦島』なのだ。」

 

ピコハンは自身の中で何かが繋がる感覚を感じた。

パズルのピースが今繋がったのだ。

 

「その後、玄武と浦島は生き残った生き物を玄武の中へ救出し、そこに一つの世界を作った。浦島は玄武の寿命を知り玄武を死なせない為に玄武の命を繋ぐ存在が育つ世界を作り上げた。それがこの世界だ・・・」

 

ピコハンは話を聞きながら何故か涙を流していた。

そして、徐々に頭の中に知らなかった記憶が蘇ってくる・・・

 

「やはりな、ピコハン・・・お前は先祖返りだ。大昔の人間は他の生き物を殺す事でその存在の力を得て自身を強くしたと言う・・・心当たりは無いか?」

 

そう言われピコハンは自身の両手を見る・・・

今まで不思議だった事が全て解き明かされていく・・・

 

「しかし、何故俺にこんなに色々教えてくれるんだ?」

「まぁ色々理由はあるんだが・・・この世界の何処かにアイツがいるみたいなんでね・・・」

「アイツ?」

「あぁ・・・それはピコハン、君かと思ったけどどうやら違うようだ」

 

その時、この空間が大きく揺れた!

 

「ふむ、長居しすぎた様だ。浦島・・・おっとここではリトーだな、リトーがここへ干渉してピコハンを連れ去りたいようだな」

 

その言葉にピコハンはアリーの事を思い出す。

 

「俺、行かないと・・・」

「あぁ、行くといい。ほらっ私からは時の加護をやるよ」

 

マリスがそう言いピコハンへ幾つもの光が飛び込んでくる。

いつの間にか手足の白骨化も傷も完全に回復しており、そのまま立ち上がりピコハンは一応一礼をして入ってきたドアへ歩を進める。

 

「ピコハン・・・お前なら世界を変えられるかもな」

 

マリスのその言葉を聞いてピコハンはダンジョンへと戻ってきた。

大広間の天井にある穴を見詰めそこへ向かって大きくジャンプするピコハン!

すると重力方向が再び変化し、ピコハンは穴の中へ落ちていく。

その後、来た道を迷う事無く戻り墓石の並ぶ部屋まで戻ってきた。

 

「ホゼは一応殺した相手を埋葬していたんだな・・・」

 

そう言いピコハンは重力方向が変化した時に墓石の下から出た白骨を上から土をかけて埋めなおす。

そして、ダンジョンの入り口へとピコハンが来るのとほぼ同時にクリフとアリーが到着する。

 

「ピ、ピコハン?!どうしたの?!なんでそんな服がボロボロなの?!」

 

アリーの悲鳴に上半身裸だったのを思い出したピコハンは何故か両手で乳首だけを隠し照れる。

そんなピコハンにクリフは共有箱を開いて中から着替えを出し手渡す。

 

「と、とりあえず着替えて下さい」

「あぁ、ありがとう」

 

その場でボロボロの服を脱いで着替えたピコハン。

着替えを見られたかな?と視線を周囲へ巡らせる。

 

「ピコハンさんどうかしましたか?」

「いや、あれ?アリーは何処かなと思って・・・」

「アリー?それって誰・・・アリー?!」

 

クリフは自身がアリーの存在を忘れていた事を思い出した。

そのクリフの反応にピコハンは永久の古墳を見る。

 

「まさか・・・」

 

そう言ってピコハンは永久の古墳に駆け込み直ぐに出てきた。

 

「クリフ!俺はアリーを追う!ここは既に他と同じダンジョン化しているから王宮に伝えて来てくれ!」

「わ、分かりました!ピコハンさん!これを!」

 

そう言ってクリフは小さいサイコロの様な物を投げて渡す。

 

「僕の研究結果の一つ、手作り共有箱です!」

「分かった!ありがとう!」

 

そう言ってピコハンはダンジョンの中へ再び駆け込んでいく・・・

ピコハンを見送ったクリフもダンジョン化した永久の古墳を伝える為に来た道を戻る。

まるで導かれるようにピコハンはそこを駆けて行く・・・

いつの間にか神殿の様な作りのそこを駆けるピコハンは上を見上げる。

 

「そう言う事かよ・・・」

 

視界に入っている訳ではないがピコハンにはそれが分かった。

これが第4段階になった証なのだとダンジョンの一番最上階に自分を待つリトーの気配を感じ、ピコハンは助走をつけて飛び上がった!

 

「オラァアアア!!!」

 

そのまま石造りの天井をぶち破り、上の階へとピコハンはショートカットするのであった。

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