「そいやっ!」
マコトの剣が犬ウナギの頭部を切り裂き絶命させる。
間違えてはいけない、頭が犬で体がうなぎの魔物だ。
地面をウネウネ動くのに吠えてくる奇妙な生き物である。
メールの結界で籠城して倒せる相手だけをフーカが見抜き、それをマコトかジルが指示通り一撃で仕留める。
ミスしてもメールの結界で敵を防ぐので安心だし、入り口が狭いので複数匹が同時に入ってくることはない。
特にこの前方の一角だけ結界を張ればいいというのはメールにとってもありがたかった。
消費神力は少なくて済むし、全面に比べての強度は何倍にもなる
その為、怪我を負うこと無く戦い続けていられる。
だが、いくら神力が使う分以上に貯まるからと言ってもそれを行うのは人間である。
当然疲れも溜まってくる。
「ふぅ、レベルをドンドンステータスに振ってるから倒すのは楽になってきたが、流石に疲れてきたな」
「でもこの後どうするの?ここから帰れなかったらいくら強くなっても同じよ?」
マコトとジルがどうやってここを出るかの会話をさっきからしているが結局結論は出ず、魔方陣から途切れること無く魔物は延々と出現する。
強行突破しか無いのかもしれないが、今みたいに一方的に攻撃できるわけもなく、一斉に攻撃をされたらいくら強くてもどうしようもない。
多勢に無勢とは上手いこと言ったものである。
そして、なにより一番の問題は食事だろう。
倒した魔物は全て別の魔物が食べてしまうため食料には出来ないのである。
まるで酸素の切れるの時間を逆算した映画の中のように場の空気は重くなる…
そんな時だった。
「あっ、出た…」
壁際に座ってずっと1人で空中に指で何かをしていたゴンザレス太郎が声に出した。
3人はその姿を先程からチラチラと見て、凄まじい違和感を覚えていた。
モンスターハウスで閉じ込められ飢え死にするのが先か、魔物に特攻して一か八かで命がけの脱出をするか、という時に何かをメモしながらずっと何もない空間に何かをやっていたのだ。
思い付くと言えばスキルを使って何かをしていると言うことなのだが、この状況下で一体何をやっているのか見当も付かなかったのだ。
何かを作り出す訳でもなく、何かが変わった様な感じは全く無いのだから…
そんなゴンザレス太郎がマジメの3人の方を向いて話し出す。
話しだすゴンザレス太郎に対して、若干フーカが興奮している気がするのは気のせいだと思いながら、3人はこの後アンビリーバボーな体験をする事になるなんて想像もしていなかった…
「皆さん、話があります。これから使うスキルでここを安全に出られるかもしれないのですが、この事を誰にも話さないと約束してくれますか?」
ゴンザレス太郎の言葉に、あり得ないと言う表情を浮かべる3人。
この状況下で『安全』に外に出られる方法などあり得ないと思うのが普通なのだ。
だがここに避難した時の行動といい、3人が驚く程のスキルを使って戦闘補助をしていたフーカが絶大な信頼を寄せていたのを見ている。
そう、フーカはゴンザレス太郎が何かをやっているのを見てここから出られる確信をしていたのだ。
少し考えた後3人は…
「分かった。」
「分かりました。」
「約束します」
そう次々に答え、近くに寄ったフーカにゴンザレス太郎は何かを耳打ちする。
それに驚いた仕草をしたフーカはその後、ゆっくりとその場に座り自らの膝を手でパンパンッと叩いた。
(あれは一体何をやってるんだ?)
マコトがそう考えていたのだが、気付けばゴンザレス太郎は顔を真っ赤にして嫌がってる…
だがそのままの姿勢で見つめ続けるフーカに負けたのか、ため息を一つ吐いてゆっくりと寝転がり、自分からその膝に頭を乗せた。
「って君ら何やってるの?!」
マコト、依頼主に対する口の聞き方を忘れるほどの衝撃を二人の行動に受けたのだろう。
だがその突っ込みも無視され、そのままゴンザレス太郎は眠りについたのだった。