異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第26話 神の覚醒

『まずはおめでとう、と言わせてもらうわね』

 

そう微笑みながら告げる女神フーカ、ここまで辿り着いた事を祝ってくれているのだと考えたピコハンと酒呑童子であったが、突然光の空間が割れる現象に驚く!

そこは光の扉を潜る前の神殿の様な場所、あの空間から出れないと以前聞いていたピコハンはその事実に驚きを隠せない。

そのピコハンの表情を見て手を口元に当てて小さく笑うフーカは告げる。

 

『勘違いしているみたいだから言っておくと、ここは外よ』

 

一瞬何を言われているのか分からないと言う表情を見せた2人であったが、直ぐにその答えに気付いた。

そして、周囲を見回しピコハンは口にする・・・

 

「まさかここは・・・」

『そう、玄武の背中よ』

 

驚きの事実であった、だが最後に潜った闇の穴の中で体が大きくなる感覚を感じたのを思い出して理解した。

彼等は元居た世界、玄武の中から外へ出てきたのだ。

 

『玄武の中だと存在できない私達だったけど、ここなら少しの間こうして実体化できるのよ』

 

フーカの言葉にそれでも神と言う存在はこの世界に常駐出来ないということを知るピコハン。

だがそうなると無理してここに居るのも大変なのではないか?と言う考えに行き着くのは当然である。

 

「だ、大丈夫なんですか?」

『うん?まぁ私自身には制限時間があるだけだから大した事は無いわよ』

「おい、それよりも俺じゃなかったって事はもう用は無いんだよな?」

 

酒呑童子が口を開く、ピコハンがもしかしたら女神達が探している人物が彼ではないかと考え、ここまで連れて来たのだが違うとなると彼に用は無かった。

 

『そうね、とりあえず攻略報酬として私からは・・・風の加護を与えましょう』

 

そう告げたフーカから緑の光が2人の体に飛んで入っていく。

これで5つの加護を得たピコハンは自身の体内に宿る力の使い道が気になった。

4つの加護だけでも既に世界最強とも言える力を得ていたし、なにより玄武の外へ出てしまった今これ以上の力が必要なのかと疑問に思っていたのだ。

だがそれを見透かした様にフーカは告げる。

 

『2人には彼を・・・探して貰いたいの、だからその力はきっと役に立つはずよ』

「っでその彼ってのは誰の事を言ってるんだ?」

 

酒呑童子の疑問も当然だろう、ピコハンは結局どんな人物なのかも分からないでその相手を探していたのだ。

その質問に対する答えをピコハンも興味深そうにフーカに視線を向けて待つ。

 

『そうね、ここまで来たら説明が必要ね・・・彼の名前はゴンザレス太郎、私達5人の女神の旦那様よ』

「ごん・・・ざれす・・・?」

「太郎?」

 

予想以上に不思議なその名前に首を傾げる2人であったが、女神5人の旦那と言う事でその人物が規格外の存在だと言うことは分かる。

だが名前が分かってもその名前をこの世界で名乗っている筈は無い、それならばどうやって探せばいいのか疑問に思うのは当然であろう。

 

『そろそろ時間のようね・・・間違い無く彼はこの世界に居る、私には分かる。だからお願い・・・』

 

そう言ってフーカはその姿を消した。

また時間が開けば姿を見せてくれることだろう、なんにしても玄武の外に出てしまったのだ。

彼等はこれからどうするかと考え始めていた。

2人が通ってきたと思われる場所には既に何も無く、玄武の中へ戻る方法と言うのが分からないのだ。

 

「あっ共有箱は使えるみたいだ」

 

体のサイズが中と外で変化していると仮定して考えていたピコハン、それでも共有箱が使えると言う事実に安堵していた。

それはつまりあの歴史の通りなら玄武の外は滅びた世界となっているわけである、それはつまり食料等が手に入らないと言う事にも繋がる。

周囲を見渡しても神殿の中に緑が残っているのはこの玄武の背だけかもしれないのだ。

とりあえず中からクリフが用意してくれていたであろう簡単な食料を取り出して、酒呑童子と共に食す。

 

「それでこれからどうするんだ?」

「中に戻る方法も分からないし、もうちょっと探索してみるか」

 

酒呑童子の疑問にピコハンはそれしか無いであろう答えを返す。

酒呑童子としても行く宛ても無く食料が自給自足で何とかできるまではピコハンと共に行動するしか無いのである。

とりあえず2人は周囲を探索しようと神殿の外へ出る事にした。

 

「青空だよな・・・」

「これが滅びた世界の空なのか?」

 

酒呑童子に続きピコハンの疑問の言葉も仕方ないだろう、玄武の大きさが分からないが空に雲が見えないという事から標高は物凄く高いと言うことだけは分かる。

屋根の無かった神殿から出てもそこに広がるのは荒廃した神殿の跡地と木々だけである。

2人は一歩森の中へ足を踏み出そうとした時であった・・・

 

「見つけたぞ!」

 

その声に足を止めるピコハンと酒呑童子。

まさかと思いながらもその声がした方向を振り返るとそこには1人の老人が立っていた。

だがその顔に見覚えがある・・・

そう、それはリトーであった。

老けてはいるが雰囲気と声がそれを教えているのだ。

 

「まさかここまで辿り着いてしまうとは・・・だが小僧!お前だけは逃がさんぞ!」

 

リトー、いやその姿が語る通り彼は浦島太郎その人である。

今まで様々な魂をその身に宿し変化させて自身を変化させ続けていた存在であったが、2人の手によって取り込んでいた魂の殆どを殺されて消失してしまったのだ。

だが浦島自身は玉手箱の煙により不老不死となっていた。

例えそれが溶岩に落とされようとも彼だけは死ぬことは無かったのだ。

 

「あれでも死なないとかどうすればこいつは倒せるんだ?」

 

酒呑童子の言葉には余裕が含まれていた。

それもその筈、フーカの風の加護を受けた二人は先程よりも更に強くなっていたのだ。

今なら1人でも浦島を倒せると考える酒呑童子が余裕を見せない筈は無かった。

だが何度も撃退されていた筈の浦島は2人に対し執拗に迫る。

それに違和感を覚えて居るピコハンは気付いた。

そう、浦島の中に取り込まれているもう一つの魂に・・・

 

「ワシは不滅じゃ!玄武の寿命が尽きる前に小僧を殺して次の玄武としなければアイツが死んでしまうのじゃ!」

 

一方的な言葉であるが玄武が死ねば中の人たちがどうなるのか分からない、それがピコハンに混乱を与えていた。

ホゼが望んだ、次の玄武が居なければ世界が滅びると言う事になら無い為には、自分が生贄にならなければならない。

だがそうなれば再びルージュを失った様な悲しみの連鎖が繰り返される事となる。

なにか良い方法は無いのかと思考が巡り続けていたピコハンだった。

だがそんな事はお構い無しに浦島は語り続ける。

 

「だからワシは切り札を使わせてもらう!ワシ自身もこの魂だけは完全に制御できないのじゃが仕方ないじゃろう!覚悟せよ!」

 

そう言って浦島の姿が少し変化する。

顔が見る見る若返り、身長が少し伸びる、曲がっていた背が真っ直ぐになり、そこには一人の青年が立っていた。

自身の両手を見てピコハンと酒呑童子の方へ目をやり告げる。

 

「5分だ!この存在すらも変化させる力を持つ魂に取り込まれる前にお前達を殺す!」

 

その言葉と同時に浦島は突っ込んできた!

だがそれと同時に前へ突っ込んだ酒呑童子が浦島と腕をぶつけ合い中間で停止した!

酒呑童子が先程よりも強くなっていた事実に驚く浦島に逆に言い放った。

 

「5分だ?お前が俺に倒されて地面に転がるまで掛かる事の無い時間だ!」

 

その言葉と同時に浦島の顔面を超スピードの回し蹴りが捉え、後方の神殿の柱に浦島は叩きつけられる!

直ぐ様酒呑童子は追撃に掛かる!

叩きつけられた浦島の体が地面に落ちる前に突っ込んで肘を腹部へ叩き込む!

 

「ぐはぁ?!」

 

そのまま浦島は地に足を付く事無く酒呑童子のラッシュを叩き込まれ、柱の倒壊と共に吹き飛ばされた。

だが・・・

 

「無駄だ!私は不死身だ!」

 

飛び起きるように立ち上がった浦島の体からは直ぐにその傷が癒える。

だがその事実を目の当たりにしても酒呑童子は逆に笑みを強くする。

強くなりすぎた今、自分が全力で戦える相手がピコハン以外に居るという事に喜びを噛み締めているのだ。

そして、2人は再び激突し殴り合う。

そこに武器などは必要なく、互いに素手で終わりの無い戦闘が繰り広げられていた。

逆に武器を使っても武器の方が直ぐに駄目になるだろう、しかも互いに傷は直ぐに癒える体である。

 

「ハハハハハハハハ!!!!最高だ!最高に楽しいぜ!!!!」

 

血が飛び散り打撃音が止まらない中、酒呑童子の笑い声が響く!

ピコハンはそこにはまだ参戦していない。

一つ頭の中で疑問に思っていた事が繋がりつつあったのだ。

 

存在すらも変化させる力・・・

生き物を別の物へ変化させる様な力、それが玄武候補や鬼を生み出した力だと言うことは直ぐに分かる・・・

そんな在りえない力、一体どんな魂がそんな力を宿していると言うのだ・・・

そんなまるで・・・神様みたいな・・・神様?

 

それにピコハンが気付いたのとその声が響くのは同時であった。

 

「ぐぁああああああ!!!ば、馬鹿な!?まだ!!!まだ時間はある筈だ??!!!!あっあぎぇええええええええ!!!!!」

 

突然酒呑童子と殴り合っていた浦島が苦痛の表情を浮かべて叫び出したのだ。

その異様な様子に酒呑童子は攻撃を中断して距離を取る。

そして、ピコハンの言葉が耳に届いた。

 

「まさか・・・あいつの中にある魂が・・・ゴンザレス太郎?」

 

その言葉に酒呑童子が振り向くと同時であった。

浦島の首が自らの腕で切り落とされ足元に落ちたのだ。

切断面から噴出す血がその周囲を赤く染める・・・

そして、その血が止まると地面を赤く染めていた血が浦島の体に纏わり付きながら戻っていく・・・

その血が無くなった頭部に集まり輪郭を形成し、そこに顔が出来上がるとそれは目を開いた。

 

「こ・・・ここは・・・何処だ・・・俺は・・・誰だ・・・」

 

口にした言葉は誰に語りかけるものでもなく自問自答を繰り返す。

その視線がピコハンに向けられた。

その目は大きく開かれてまるで何かに驚いている様にも見えた。

やがて小さく口にされる言葉・・・

 

「お前・・・その気配・・・知っている・・・誰だ・・・お前は・・・だれだぁあああああ!!!!!」

 

その叫びと共に体から紫色の靄の様な物が浮かび上がり、頭上にいくつもの光の塊が飛び出した!

それが周囲の森に落下し巨大な爆発をする!

それはまるで御伽噺に出てくる魔法の様であった。

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