異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第30話 絶望的な力の差と状況

地盤を貫通し地平線へ飛び雲を引き裂いて何処までも飛ぶ光の咆哮。

直撃を受けた3人はそれに飲み込まれた。

それは玄武の最大にして最後の抵抗。

元々寿命がもう直ぐ尽きる玄武は本能的に次の玄武候補であるピコハンを狙っていたのだ。

下顎を破壊され、唯一動かせる首から上の戦闘能力が皆無となった玄武の本当に最後の一撃だった。

だが力を使い果たして死んだピコハンの肉体を喰らって、彼を次の玄武にしようとした玄武は目を見開くこととなる。

そう、目の前にゴンザレス太郎が突っ込んできたからだ!

その体の回りには輝く帯状の魔法陣が巡回していた。

その帯状の魔法陣で自らを包み込み咆哮を防いだのだ。

 

「死ね!」

 

ゴンザレス太郎のその言葉と共に手にその帯状の魔法陣が圧縮され、漆黒の弾となって玄武の頭部に打ち込まれた!

玄武の目から涙の様な物が零れ落ちると共に玄武の頭部は木っ端微塵に吹き飛ぶのであった。

 

「酒呑童子!おい!酒呑童子!!」

 

玄武が殺された事を見ていたピコハンは共に落下し、意識を失い倒れている酒呑童子を揺する。

だが既に出血が酷く、玄武の咆哮を喰らった酒呑童子は意識を取り戻さない。

ピコハンの前に居た酒呑童子が盾となる形でピコハンは殆どダメージを受けなかったのだ。

偶然か狙ったのかは分からないが酒呑童子がピコハンを守った事には変わりない、そんなピコハンの声にゴンザレス太郎は首だけピコハンの方を見て目を大きく開く。

 

「くっ・・・やってやるよ!」

 

恐ろしい程の威圧がゴンザレス太郎から放たれたがピコハンは立ち上がり、倒れた酒呑童子の前に立つ。

2人掛かりでも倒すどころか圧倒されない状況を作るので精一杯だったピコハンであるが、構わず1人立ち向かう。

その姿が嬉しかったのか口元を歪ませてゴンザレス太郎は近付いていく。

ゴンザレス太郎の手から放電現象にも似た電気が地面に向かって走る、その電撃が触れたその場所の土が盛り上がりその先端をゴンザレス太郎が握ると土は飛び散って一つの形を残した。

木刀、いや土で出来ているから土刀と言うべきか、それを手にしたゴンザレス太郎を見てピコハンは自分の考えに確信を持つ。

 

(あいつは、俺を殺したい訳じゃない!)

 

そう、それは何度か戦って気付いていた。

酒呑童子に対しては殺意を持って殺す気で攻撃を仕掛けていたが、ピコハンに対してだけは殺すよりも無力化させるのが目的の様に感じるくらい差があったのだ。

だがそれは一つのチャンスにもなる、動物でも何でもそうなのだが殺して持ち帰るのと生かしたまま持ち帰ると言うのには天と地ほどの難易度の差がある。

つまり、手を抜かなければ殺してしまうと言う事である。

そんなピコハンの考えを証明するかのようにゴンザレス太郎は手にしていた土刀を振る!

そこから光の槍の先端の様な物が数え切れないほどピコハンに向かって飛んできた!

だがそれを避ける事無くピコハンはその場で急所を防いで耐え抜く!

一撃一撃の攻撃力がそれ程でもなかったと言うのが幸いした。

自分がよければ後ろで倒れている酒呑童子に攻撃がいってしまうのを防ぐ為にその身を持って受け止めたのだ。

 

「そいつがそんなに大事か?」

 

ゴンザレス太郎の言葉がピコハンに向けられる、だがピコハンは首を横に振って答える。

 

「こいつとはまだ決着がついていないんだ!だから殺させない!」

 

そう告げたピコハンの脇を通過してそれは酒呑童子の左腕を貫いた!

目にも止まらない攻撃と言うのに驚きを隠せないピコハンは振り返り酒呑童子を見る。

出血が酷くて意識が戻っていないのにも関わらず、左腕に出来た穴からも血が流れ出していた。

 

「止めろ!」

 

そんなピコハンの叫びをあざ笑うかのようにゴンザレス太郎の手から放たれたそれは酒呑童子の右足太股を貫いた。

またもや肉眼で確認出来ない程高速の攻撃・・・

その正体は超電磁砲であった。

手にしていた土刀から生み出された小さな塊は電磁加速されて狙った場所へ飛んでいく!

気付いた時には既に体を貫かれているその攻撃が、もし自分に向いたら抵抗する事無く命を奪われると言う事実に生唾を飲み込むピコハン。

今の位置関係だと一方的になぶり殺しにされるだけだと理解したピコハンはゴンザレス太郎へ突っ込む!

だがそれすらも予想していたのか、突如ピコハンの足元から巨大な竜巻が突如出現した!

それに取り込まれるようにゴンザレス太郎の眼前からピコハンは空高く持ち上げられる!

戦闘により天井の土壌は破壊されて地上と穴で繋がっている状態の上へまで竜巻は伸びていく!!

その中を暴風によって円を描くようにピコハンの体は巻き上げられる!

視界が高速で回転し目を回しそうになるピコハン、そんな状態のピコハンに向けてゴンザレス太郎は周囲を大きな岩を複数個同時に魔法で持ち上げそれを竜巻の中へ放り込んだ!

 

「ぐぁああああああぎぃいいいいいい」

 

竜巻内部の暴風によりピコハンの体は引き裂かれんばかりの痛みを受けていた。

そこへ魔法で投げ込まれた岩がピコハンを狙っているわけでも無いのに向かって飛んでくる!

それを逆に足場としてピコハンはゴンザレス太郎へ向けて岩を蹴り返した!

ピコハンの頭部が少し割れ出血をしており、竜巻内部の乱気流により予期せぬ方向から頭部へ岩が当たったのである。

その痛みをお返しとばかりにゴンザレス太郎へ向けて蹴り返したのだが、その岩はゴンザレス太郎に直撃する寸前で空中で静止した。

そして、その浮いた岩にゴンザレス太郎は飛び乗り、岩は自然と竜巻内部のピコハン目掛けて飛び出した!

竜巻内部で乱気流に体を引き裂かれそうになりつつもピコハンは小さく口にする・・・

 

「くそ・・・まだなのか・・・」

 

そんなピコハンに向かって竜巻内部に飛び込んだゴンザレス太郎は光の槍の先端の様な物を次々とピコハンへ飛ばす!

竜巻に巻き込まれ自由の効かないピコハンはそれを全身に受けてしまう。

あちこちから出血をしたその様子を見てゴンザレス太郎は嬉しそうに微笑を浮かべた。

だがその笑みも直ぐに消えて暴風に巻き込まれながら身動きの取れないピコハンへ向かってゴンザレス太郎は手にしていた土刀を投げた!

 

「弾けろ!」

 

その言葉と共にピコハンと同じ高さまで放り投げられた土刀は一瞬放電し、爆発するように飛び散る!

土刀が弾けた勢いで発生していた竜巻は掻き消え、爆風に巻き込まれたピコハンは地面へ落下してくる。

全身が竜巻によって血塗れな上に破裂した土刀の破片があちこちに刺さっているのだ。

落下して受身と言うような大層な物ではないが、頭部だけはしっかり守っていたピコハン・・・

既に限界を超えた疲労により立っているのすら不思議な状態である、だがそれでも立ち上がれるのには理由があった。

風の加護、あの竜巻内部に居る間はピコハンの怪我は常に治り続けていたのだ。

それを理解したゴンザレス太郎は攻撃ついでに自らが出現させた竜巻の残りカスをを飛散させた。

 

「そろそろ・・・終わりにしようか・・・」

 

ゴンザレス太郎がフラフラのピコハンに近付く。

そして、その手をピコハンに向けて翳した時であった。

 

「ん?」

 

ゴンザレス太郎が何か不思議そうな表情を浮かべた。

その瞬間ゴンザレス太郎の両足がしっかり捕まれた!

いや、足に抱きつかれたのだ!

それを行ったのは先程倒れていた酒呑童子であった。

物凄い力で逃げられないように下半身を抑えた酒呑童子とゴンザレス太郎へ向けて駆け出したピコハンは共に口にする!

 

「「この時を、待っていた!!!!」」

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