異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第31話 散る命と極限の一撃

右足と左腕を貫かれ、穴の開いた酒呑童子は既にまともに戦える状況ではなかった。

その彼が竜巻から落下したピコハンの地上への激突音で意識を取り戻した。

全身を襲う激痛と動かない手足・・・

自分に出来る事は限られているその状況でそれはやって来た。

 

「ん?」

 

ゴンザレス太郎が何かをしようとして首を傾げていた。

その瞬間ピコハンから告げられた言葉を思い出す。

 

「あの力は使用制限があるらしい・・・そこまで耐えれば・・・」

 

そう、ピコハンがデウスから聞かされた言葉・・・

 

「この世界には存在しない魔力を使うのに彼は体内の魂を練成して使っている、だからそれが尽きるまで耐えろ!そうすればきっと勝てる!だから頼むぞ!」

 

現在のゴンザレス太郎の肉体はリトーの肉体を奪い取った物である。

そして、その体内にはリトーが今まで自身の為に集めたいくつもの魂が収められていた。

ダンジョン内で殆どの魂は使用され消費し、ピコハン達に殺されて消滅したが残されていた魂を練成しゴンザレス太郎は魔力としていたのだ。

それは本来ありえない物を一時的に生み出す禁断の力。

元素の中にニッポニウム、またはニホニウムと呼ばれるものがある。

これは元素と元素を衝突させた時に一瞬だけこの世に存在する幻の元素である。

それと同じように魂と魂をゴンザレス太郎の体内でぶつけ合い、一瞬だけ出現した魔力に似た物を彼は魔力として使用していたのだ。

つまり、彼の魔力は自然発生するものではなく、ゴンザレス太郎自身が体内で精製し一時的に使用できる形にして使っていたものなのであった。

 

「「この時を待っていた!!!!」」

 

目配せの必要もなく、唖然と自身の中で使用できなくなった魔力に疑問を持った事で隙の生じたゴンザレス太郎、その隙を見逃さず残った手足で飛びついた酒呑童子とピコハンは同時に叫ぶ!

突如ピコハンの体内に驚くほどの力が収束していく!

それはその身で受けた事でほぼ近い存在となったピコハンが自然と理解した力。

誰に教わることも無く、生まれた時から知っている生物の本能とも言える力。

玄武候補第4段階まで成長したピコハンだからこそ、あの玄武の咆哮を彼は理解していたのだ!

 

「くっ離せ!」

「お前は終わりなんだよ!」

 

ゴンザレス太郎の足にしがみ付いた酒呑童子は嬉しそうにゴンザレス太郎に告げる!

その酒呑童子にゴンザレス太郎の手刀が振り下ろされた!

それは酒呑童子の背中に突き刺さり肉を裂き骨を折る!

だが顔を一瞬歪めた酒呑童子は血を吐きつつも顔を上げて告げる!

 

「捕ま・・・えたぞぉぉぉおおお!やれぇええええピコハン!!」

 

体内に打ち込まれたゴンザレス太郎の腕を自らの筋肉を締め付ける事で抜けなくした酒呑童子は叫ぶ!

それと共に飛び出すピコハン!

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

地面を削り後ろに爆発的な衝撃を放ちながらゴンザレス太郎に突っ込むピコハン!

その背後にまさにあの咆哮と同じエネルギーを爆発的に左手から放ちながら突っ込んだピコハンの右拳が光る!

完全に大振りで破壊力だけを求めた究極のこの力、本来戦闘には完全に不向きであった。

直線的にしか使用できず、反撃にあえば完全なるカウンターとなる上に、他の場所の防御は完全に度外視した攻撃。

外せば終わり、しかも一度しか使用できない技である事をピコハンは知っていた。

しかし、それ以外にゴンザレス太郎を倒す方法が思いつかなかったのも事実。

酒呑童子がゴンザレス太郎の両足をしがみ付くことで固定し、背中に腕を埋め込ませた状態で身動きが取れない上、防御もままならない姿勢で固定した事が全てのパズルのピースを一致させた!

 

「くそっ・・・止まれ・・・やめろぉおおおおお!!!!」

 

初めてゴンザレス太郎の口から叫び声が上がった!

その言葉を聞いた酒呑童子は小さく告げる・・・

 

「俺達の・・・勝ちだ・・・」

 

次の瞬間ピコハンの拳は腰を捻った状態のままのゴンザレス太郎の横腹に打ち込まれた!

その体内に拳に宿った光と共に恐ろしいまでの力が一気に流れ込む!

渦を巻くように拳と触れた部分が変形しゴンザレス太郎の肉体をそこへ巻き込むように収束したと思ったらそれは一気に開放された!

ピコハンの打ち込んだ拳の先からあの玄武の咆哮が放たれた様に、ゴンザレス太郎の体を木っ端微塵に吹き飛ばしながらエネルギーが爆発した!!

衝撃で周囲の壁や岩がまるで圧殺されるようにめり込み、周囲の地形を変形させる!

 

「やっ・・・・た・・・・・・」

 

そのまま膝を付くピコハン、酒呑童子の顔が目の前に在った。

その体はゴンザレス太郎と共に吹き飛ばされ腕を突っ込まれていた腰から下が無かった。

 

「ぐはっ・・・流石だよ・・・でも一つだけ言っておくぜ・・・」

「酒呑童子・・・」

「俺とお前の勝負は俺の勝ち逃げだ・・・お前は俺より強くなったかもしれないが・・・俺の・・・勝ちは・・・譲らな・・・い・・・」

 

そのまま酒呑童子は笑みを浮かべて動かなくなった。

膝を突くピコハンは両肩で息をしながら空から射し込む日の光を見上げた。

天井の岩盤は既に吹き飛ばされ、周囲も開けたその状況がこれまでの戦いがどれ程凄まじかったかを語っていた。

一体自分は何をしていたのか・・・

両親に捨てられてから生きる為だけにダンジョンを攻略する日々・・・

その行き着いた先が外の世界に出てライバルを失い、ただ一人この場に居るだけである。

 

そのまま座り込んだピコハンは今後どうするか・・・

それを呼吸と共に上下する肩を落ち着かせながら考えていた時であった。

壁にめり込んだ小さな欠片が周囲の岩にヒビを入れた。

 

「えっ?」

 

正面に位置するその岩に入ったヒビの音に気付いたピコハンの顔は一気に青ざめていく・・・

その岩の内部で急速に何かが形を成していくのだ。

 

「ははは・・・うそ・・・だろ・・・」

 

それが何か直ぐに気付いた。

その肉片は人型と変形し、割れた岩を避けながら立ち上がった。

そこに立つのはゴンザレス太郎。

そう・・・彼の肉体は不老不死を得たリトーの肉体である。

即ち、どうやっても彼は死ぬ事は無く、その肉体は永遠に不滅なのだ。

 

「残念だったな・・・」

 

自身の体に起こった事に驚きながらもゴンザレス太郎が跪くピコハンに告げる。

魂が無いので魔力は使えなくてもピコハンには抗える程の体力は残っていないのだ。

一歩前に歩き出すゴンザレス太郎にピコハンはそれでも立ち上がった。

 

「やるしか・・・ないんだよな・・・」

 

自身に言い聞かせ、折れそうな気持ちに蓋をする。

既に体は加護の力が及ばないほどボロボロになり、真っ直ぐ立っているだけでもフラフラする状況であるがそれでもピコハンは構えた。

最後の最後まで諦めない!

まるでそう決意したようにピコハンは気力だけで戦う決意を決めた!

その時であった。

 

「ぐぅあっ?!」

 

突如ゴンザレス太郎の肉体が拘束された。

頭上と足元に2つの魔法陣が出現し体の自由を奪ったのだ。

 

『ここまでよタツヤ』

 

その美しい声を聞いてピコハンは体の力を抜く。

そこには美しい黒髪で目を隠したあの女神、フーカが居た。

 

『よく頑張りましたねピコハン君・・・ですがもう少しだけ頑張って下さい』

 

フーカの言葉にこれ以上何をさせる気なんだとピコハンは表情に出す。

 

『彼を解放する為に玄武を・・・討って下さい、彼は私達5人の女神が抑えます。ですが私達5人で抑えられるのは約10分・・・その間に・・・』

 

その言葉と共にゴンザレス太郎が暴れようとして、それを押さえ返す女神フーカ。

ピコハンは視線を穴へと向ける。

そこはあの玄武の頭部が出てきたあの穴である。

もう倒れて休みたい、だがピコハンは最後の力を振り絞り足を踏み出した。

何処までも深く続いているようなそこへ足を踏み入れた直後であった。

 

「オイ待て小僧!」

 

突如聞こえた声に反応し穴の方を見るとそこにはあいつ・・・

リトーの生首が転がっていおり、こっちを睨みつけながら怒鳴っていたのであった。

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