異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第33話 ピコハンの決断!

まるでそこで眠り続けているだけに見えるルージュ、この隙間を広げて抱きしめに行きたい気持ちが溢れるが・・・

 

「止めておけ、一応繋がってはいる様に見えるがあっちは別の空間じゃ、広げて繋がってしまえば全員本当に死ぬぞ」

 

リトーの言葉に手を止めるピコハン、それはその中に浮かぶ女性の姿を見れば本当だと理解できた。

少女から年寄りまで様々な年齢の女性がそこに漂っているのだ。

つまり、取り込まれてからもこの中で寿命が尽きるまで生き続けると言う事を表している。

特に年寄りと言うのは玄武の中では殆ど見る事の無い存在である。

それもその筈、玄武の意思によって子を捨てる誘導をされるが働けなくなった人間も勿論人捨てによってダンジョンに捨てられる。

その中で玄武候補を成長させる為に喰われるのは若者が多いのは当然なのだ。

感受性が高いと言うのもあるが、使用されるその魂が年を取っていると使えない場合があるのだ。

それが第4段階まで成長したピコハンには本能的に分かっていた。

 

「ルージュ・・・」

「だが、お前が望むのであれば玄武となってからあの女・・・ルージュだったな、そいつと暮らす夢を見る事は出来る」

「夢?」

「玄武となっても完全に意識が無くなる訳では無い、世界を守る為にその身を犠牲にして1万年の眠りに着くのだ。その間は夢を見る事も出来るじゃろう」

 

嘘である、完全な作り話だがそれをピコハンに確認する術は無い。

しかもここに残されたルージュの肉体は成長を続け、寿命を迎えるまでしか生きられない。

玄武となって1万年を生きるピコハンが共に居られるのは100年にも満たされないのだ。

だが・・・

 

「夢で・・・ルージュと・・・共に・・・」

「あぁ、そうじゃ・・・夢の中が現実となればそこで共に暮らせるのじゃぞ?」

「ルージュ・・・」

 

ピコハン、ルージュの姿を見てリトーの言葉に誘導されつつあった。

事実、今の状態で脳死と近い状態のルージュを助ける術は無いし、玄武を討てば中の人々もルージュも死ぬ・・・

その現実を突きつけられてピコハンは苦しみだす。

 

「それにな、お前が玄武を殺そうとしても多分それは無理じゃ」

「えっ?」

「竜宮城が破壊された今、真の玄武が眠り続けるそこは誰も真の玄武には辿り着けないのじゃ」

 

諦めて玄武になれと、そう伝えるリトーの言葉に出てきた真の玄武。

それこそがこの世界の基盤となっている神獣玄武である。

浦島が助け竜宮城へ連れて行かれ、帰ってきてから人類が滅びる世界より浦島を助け返し共に玄武の世界を作った者。

そして、リトーはたった一つ大きなミスを犯した。

それは・・・

 

「無理・・・だと・・・」

 

ピコハンに無理と告げたことであった。

様々なダンジョンで死ぬような目にも常識の通用しない光景も、そして・・・死んでもおかしくない状況を何度も生き延びたピコハンは無理と言う言葉は覆せると考え始めていた。

そう、あのゴンザレス太郎との戦いの中でもそれは確実にピコハンの心に宿っていた。

諦めなければ何とかなる。

それを思い出させるキーワードが『無理』だったのである。

 

「そうか・・・ここは玄武の中、つまりダンジョンなんだよな・・・」

 

今までの全てがピコハンの頭の中を駆け抜けた。

そして、その目つきが変わる!

 

「ここがダンジョンなのであるならば・・・俺はここを・・・攻略する!」

 

隙間から顔を離してルージュに笑顔を向けてピコハンは更に奥へと泳ぎだした。

横で髪の毛を掴んでいるリトーが何かを叫んでいるがもうピコハンの耳には届かない。

その目は一直線に一つのことだけを考えていた。

そうだ・・・

 

「そうだ・・・俺が玄武になったとしても間違い無くゴンザレス太郎は玄武を殺す。だったらそんなのは意味の無い事だ」

「だからと言ってお前が全てを滅ぼすのか?!」

 

リトーの言葉はピコハンには届かない、もうピコハンに迷いはなくなっていた。

そして、更に深く続くその穴から噴出される水流にその身を晒しながらピコハンは壁を伝って奥へと進んでいく・・・

 

「くっやっぱりこういうのが居るか・・・」

 

その流れる水流の中、そいつは岩肌から生まれてきた。

丸い球体の中に細胞が詰まっているようなそれは進入した者を食い殺す白血球の様な物である。

ピコハンは食いつかれる前に岩肌を手づかみで横移動してそれを避けていく。

水流に流されていくそいつらはピコハンに触れれば喰い始めるのだが、そうでなければ流れにそって進むだけであった。

 

「くそっ・・・急いでいるのに・・・」

 

そのピコハンの前にまるで弾幕を張るかのようにそいつらが流れてくる・・・

ピコハンは進んでは戻ったりして回避を続けながら少しずつ奥へと進むのであった・・・

 

 

 

 

「童ももう限界じゃ・・・」

 

ゴンザレス太郎を拘束していたデウスの力が尽きてその姿が消える。

それと同時に飛び出そうとするゴンザレス太郎を岩が盛り上がり抱きつくように捕まえた。

そこには3人目の女神ダマが居た。

彼女の土の力でゴーレムを作り出しそれと共に再びゴンザレス太郎を封印する・・・

 

「邪魔を・・・するなぁ!」

「無理・・・」

 

残り時間・・・6分!

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