異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第39話 終わらない帰ってきた日々

ドゴンッ!!ドゴンッ!!

 

空から次々と降ってくるクリスタルのブロックが地面をどんどん埋め尽くしていく・・・

それを避けながら積み上がるクリスタルブロックを上へ上へと登り続ける青年の姿が在った。

 

「ゴールはどこなんだよ?!…って危ねっ?!」

 

突如クリスタルの一つが獣の形に変形し、青年の足を噛み切ろうとしたのだが素早く足を抜いてかわした。

噛み付くのに失敗したクリスタルの獣は再び青年に襲い掛かろうとするのだが、その頭部を踏み抜かれて絶命する。

 

「ふぅ、いったい何時まで頑張れいいんだよ」

 

そう言いながらも軽やかなステップで次々と降ってくるクリスタルを回避しながら積みあがるクリスタルの上を移動する青年。

左手に婚約の腕輪を装備したその青年こそピコハンである。

 

「おっ!あれがゴールかな?!」

 

円柱に伸び続ける空間に振り続けるクリスタルが積もり始めて3時間ほどが経過し、ようやく横穴を見つけたピコハンは振ってくるクリスタルに飛びまわし蹴りを決めた!

 

「おらさっ!!」

 

軽い口調とは裏腹に物凄い勢いで横の壁に突き刺さるクリスタル。

次々と壊さない様に蹴りを入れていき壁にクリスタルが階段の様に設置された。

 

「よしっ!」

 

そこを物凄い速度で駆け上がるピコハン!

そして、横穴の中へ飛び込んだ!!

 

「って今度はこれかよ・・・」

 

穴の先には延々と斜め下へ続く滑り台の様な物が設置されており、ピコハンは困惑しながらもそこへ腰掛ける。

そのまま坂を下り始め滑り台は左へ右へ変則的に向きを変える!

 

「おわっ?!」

 

突如滑り台の途中に刃物が設置されているのに気付いたピコハンは足を付いてジャンプしてそれを回避して滑り台を滑り続ける!

 

「っまじかよぉおおおおお!!!!」

 

突如広い部屋に出たと思ったら、滑り台がそこで途切れていたのだ!

体を空中に放り出されるピコハンであるが、その目は直ぐに部屋の状況を判断する。

もし、床が無くて毒が敷き詰められていたりした場合等を考慮しているのだ。

 

「ってそれは予想していなかったぁああああああああああああああああ!!!」

 

その叫びが響く中、地面一面に小さなヒヨコが敷き詰められるように並んでいたのだ!

空中で身動きの取れないピコハンはそのヒヨコを殺せば何か酷い目に遭いそうな予感がし、どうにか回避しようと落下しながら考える。

 

「うん・・・無理!」

 

そして、そのまま勢いよく地面に着地し、足のブレーキで数十匹のヒヨコが犠牲となった。

辺りに飛び散る鮮血が生き残った黄色いヒヨコの体を赤く染め上げ・・・巨大化した!?

 

「おいおいおいおい・・・これ全部相手しないと駄目なのかよ・・・」

 

一匹が巨大化すると敷き詰められていた他のひよこが押し潰され、次々と血の付いたヒヨコが巨大化を始めた。

その光景に少し考えるピコハンであったが、直ぐに巨大化したヒヨコはピコハンの手によってその命を断たれる。

 

「さて、収穫収穫♪」

 

共有箱を展開させ狩った巨大ヒヨコを村で待つ皆へ送る作業に取り掛かるピコハン。

楽しそうにしながらも何処まで続くのか分からないダンジョンの次の道を探し始める・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

玄武の中から外の世界へ出てきてから既に6年が経過していた。

ピコハンはルージュと正式に結婚をし、村を発展させようと共に頑張っていた。

そして、数日前・・・

 

「ぴ、ピコハンさん!大変です!」

「あークリフ・・・お父さんと呼んでも良いんだよ」

「そ、それはまぁ置いといて・・・ダンジョンです!新しいダンジョンが発見されました!」

 

クリフとアリーはルージュとピコハンの子供として家族になったのだが普段は家に居ない。

特にクリフは外の世界の秘密を色々と探ろうと毎日勉学に勤しんでいた。

 

「本当にダンジョンなのか?」

「えぇ・・・入る度に中が違っているそうです」

「ダーリン、行ってきても良いよ」

 

ルージュが話を聞いていたのかピコハンにそう言いだす。

その言葉に笑顔で頷くピコハン。

ここ暫く村長として成長したピコハンは重荷を背負わされストレス発散の場が欲しかったのである。

そして、それを見越したルージュはピコハンの強さをしっかりと知っているので安心して送り出そうとしていた。

 

「分かった。とりあえず行ってみるか!」

 

こうしてクリフが聞いた情報を頼りに向かった先、そこに在ったダンジョンに足を踏み入れて既に数日が経過していた。

不思議な事に玄武の中で使えた共有箱やその他のアイテムも問題なく使用できていたのだ。

そんなこの数日の事を思い出しながらピコハンは周囲に在った巨大ヒヨコの片づけが終わり先へと進む。

そして、それを見つけた。

 

「ここにもやはり在ったのか・・・」

 

それはダンジョンの最下層に配置されているアイテム、ダンジョンの核とも呼ばれている玄武の甲羅の一部であった。

それに手を翳したピコハンに反応したように、玄武の甲羅の欠片であるダンジョンの核はその役目を終え地面へ落ちる。

 

「これで・・・3枚目・・・」

 

そう言ってピコハンは再びあの恐ろしく長い道のりを帰る事に溜め息を吐きながら来た道を戻るのであった・・・

 

 

 

数日後・・・

 

「やっとでたぁ~いや~中々収穫もあってよかった良かった」

「良くないわよ!」

「げっ!?マリアーナ・・・」

 

青くて長い髪の女性がそこに立っていた。

ピコハンの姉であるマリアーナである、と言ってもピコハンにとっても妹にとっても記憶は全てなくしており、姉が一方的に知っている困った現状であった。

 

「ダンジョンに行くなら非常食の携帯は必須だって言ったじゃないの!」

「ご・・・ごめんなさい・・・」

 

世界最強の存在で、攻略できないダンジョンは無いとまで言われたピコハンは家族には弱かった。

 

「それより、もう直ぐリリアが出産でしょ?」

「あぁ・・・おれも遂に叔父さんか・・・」

 

ピコハンの妹であるマリアーナ、彼女はもう直ぐ子供が生まれる。

父親はなんと・・・酒呑童子であった。

 

「つか、マリア姉はまだ相手は居ないの?」

「わ、私の事はいいのよ!」

 

記憶はなくしてしまったが、こうして姉と妹も無事に帰って来たのである。

 

「それはそうと、どうだったの?」

「あぁ、やっぱりそうだわ」

 

そう言うピコハンの手に見えたのはダンジョンの核である玄武の欠片であった。

既に3つ目のダンジョンを攻略したピコハンであるが、その玄武の核を集めればもしかしたらなにか奇跡が起こるかもしれないと少しずつ集めているピコハン・・・

彼のダンジョン攻略はまだまだ続く。

あの日、あの場所の近くに居た全ての者は生き返っている筈である。

つまり・・・玄武もきっと・・・

 

「これを集めたらどうなると思う?」

「さぁ、そういうのはクリフに聞いて頂戴」

 

 

2人は仲良く村へと帰還する。

数日に一度新しく発見されるダンジョン、その度にピコハンは単独でそのダンジョンへ向かい攻略して帰ってくる。

それが彼の日常であり彼のすべてであった。

魔法の様なアイテムや貴重な金属等が取れるダンジョン、この世界では今だピコハン以外で攻略を成し遂げた者のいないそこで取れる貴重な物を誰もが欲していた。

だからピコハン村長は新しいダンジョンが発見されるたびに1人で向かう。

それが彼の仕事であり彼の人生であった。

この世界にあの日散らばった玄武の欠片が世界にダンジョンを作り上げたと仮定するならばきっとこれからも次々とダンジョンが現れるであろう。

それを攻略できるのはピコハンたった一人なのであった。

 

「よーし、次のダンジョンはもっと短い時間で攻略するぞ!」

 

 

 

 

 

そんな世界を眺める女神達。

彼女達の後ろには魂石と呼ばれる石が置かれていた。

 

「駄目ね、また玄武の欠片みたい」

「タツヤの記憶はやっぱり違う世界にあるんじゃない?」

「だとしてもゴンザレス太郎は本当に元に戻せるのかえ?」

 

デウスの一言に言葉に詰まるフーカとサラ。

それはそうであろう、二人はサラの母親の魂石の事をよく知っているのだ。

幾度も転生タイムリープで繰り返した人生の中でもサラの母親が生き返った事はなかった。

ラストエリクサーを使用しても死者が甦れるのは死後10分以内だけなのだ。

時間を進めることは出来るが戻す方法など存在しない、その上、ラストエリクサーを使用できる世界は限られているのだ。

そんな答えのでない自問自答を女神達は繰り返していたのだが…

 

「あれ?そういえばフーカが見付けたもう1つの世界の彼…」

 

そこまでダマが話してフーカのオッドアイが大きく開いた。

あの世界の特異性、そして彼の力ならば…

微かな希望が見えた女神達は互いを見合って頷く。

 

「あとは、記憶ね!」

 

マリスの言葉に目的と目標が出揃った実感を得た女神達は、ソッとゴンザレス太郎の魂石に手を添えるのであった…

 

 

第2章 完

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