朝日が洞窟に差し込み、内部が少し照らされる。
その入り口の横を少し奥に行った場所、そこで夜営していたマジメの3人とゴンザレス太郎とフーカは無言で出発の準備をしている。
荷物をまとめ終わり、マコトが2人に代表して話をする。
「色々聞きたいことや言いたい事もあるが、今回は俺のミスが原因で危険な目に遭わせてしまってすまなかった」
そう言って最初にマコトが謝罪してきた。
そう今回の最大の失敗は、マコトが洞窟に入って直ぐに転移の罠を踏んでしまい、全員をモンスターハウスに飛ばしてしまったのが原因なのだ。
「そこで、今回の依頼に関しては失敗とさせてほしい」
冒険者にとって依頼の失敗とは自らの経歴に傷をつけると同じ事である、なのでこれは彼等が自らに課した罰なのだろう。
昨夜の内に話し合ったのか、二人もマコトの言葉に口を挟みはしない。
信頼し合ってるのが見てとれて、好感が持てた。
「それと護衛対称の二人が居なかったら、ここにこうして生きていられなかった事も確実だ。感謝をしてもしきれない」
転移して直ぐにゴンザレス太郎の作戦で穴を堀りそこに籠城し、フーカのスキルで魔物の弱点を見抜いてもらい、最後は極秘のゴンザレス太郎のスキルの一端を披露して貰い助けてもらった。
彼等にもプライドがあるのだ。
「だから…」
「いいですよ」
ゴンザレス太郎が言葉を被せた。
昨夜マジメの3人が話し合っていたのは薄々気付いていた。
「今回の事でかなりの神力を得ることが出来ましたし、謝罪をしたいのであればこちらから提案があります」
「って、提案?」
「僕達を皆さんのパーティーに加えて貰えませんか?」
「えっ?」
ゴンザレス太郎はフーカと先程話して決めていた。
ゴンザレス太郎のスキルの秘密を漏らさない為にも、仲間になった方が良いと判断したのだ。
特にこの世界では個人のスキルは秘匿にするのが普通、一端とは言え教えてしまった以上抱え込む方向でフーカが提案したのだ。
まぁこの3人であればそんな心配も要らないかもしれないが、ちなみにフーカは余程の事でない限り提案はしても最終的にはゴンザレス太郎の決定に従う…
もしも何かあれば、自分が全力でどうにかするつもりなのだろう。
これが愛の力だと自分を奮い立たせるに違いない、フーカ…恐ろしい娘!?
「もし認めてくださるのなら…もう幾つか皆さんの為に僕のスキルを披露させて貰います。」
その言葉は悪魔の囁きのようだった。
あんな無茶苦茶なスキルが他にもまだある、それを伝えるには充分な言葉だった。
それにフーカのユニークスキル『スキミング』は冒険者にとって喉から手が出るほど欲しいスキルである。
なにせ見るだけで相手の名前や使えるスキル、更には弱点まで分かるのだから。
その他にも、採取に関しても役に立つのだから冒険者にとって喉から手が出るほど欲しい人材なのは間違いない。
そしめ、3人は知らないがその他にも『スピリチュアリティ』と言う嘘を見抜くスキルもあるのだが、それは内密である。
ゴンザレス太郎のその提案が余りにも予想外だったのだろう、話を聞いてマコトは慌て…
「も…もうちょっと相談させてくれ!」
マジメの3人は再び会議を始めるのだった。
ちなみに、ゴンザレス太郎、もし自分達がマジメの3人のパーティーに加わったら『マジメゴフ』になるのか…
まるでロシア人の名前みたいだな…って考えていた。