『初めての魔物狩り』
この動画で動物愛護なんとかって団体が騒いでいたりするのだが、その狼が地球に存在しない種類だと判断されると共に彼らは何も書き込まなくなった・・・
巨大掲示板でもコメント欄でもこれがCGなんか本物なのかの談義が毎度の事のように繰り返され、それがまた人を呼び、気付けば海外のテレビ番組に紹介される事となるのだが彼らはまだそれを知らない・・・
ルルが本棚から一冊の本を持ち出してきた。
表紙に『火』と、この世界の言葉で書かれており、それがアントンが使っていた黒魔法の火の魔法の魔道書なのだと七志は予想していた。
「ほら、これがファイアの魔道書じゃ」
ルルからファイアの魔道書を受け取り、説明のあった通りに中を開かずに表紙に手を置いて唱える。
「インストール」
この世界の魔道書は中を見てはいけないのがルールなのである。
正確には見るとその魔術が込められた文字列が脳内に焼き付いてしまい、下手をすれば廃人になる可能性があるとのことであった。
一冊の魔道書があれば何人でも黒色属性を持つ人間ならインストールできるのが凄く大助かりであった。
某RPGの様に一度使うと無くなるアイテムじゃないのはお財布にとても優しいのだ。
「本当にナナシ全属性大丈夫なんだな・・・」
「どういうことじゃ?」
「ルルさん、こいつ倒した狼の魔物、収納魔法で収納してたんだ」
「な・・・なんじゃと?!」
どうやら見られていたようであった。
ちなみに収納魔法は黄色魔法の無属性魔法である。
異空間を開く魔法と、その中で一定の空間を結界で囲む魔法の二つが必要で、かなりの高度な魔法なのであった。
「しかもナナシは魔力がこんなに少ないのに?」
「あぁ、狼一匹を丸々収納してたぜ」
七志は現在ファイアの魔道書が『インストール』の効果で脳内にコピーされていた。
其の為、二人の会話が全く聞こえなくなっており、収納魔法の事が知られたなんて全く気付いていなかった。
しかも七誌の収納は嵐のパソコンのフォルダ内にそのまま保存されている為に時間が止まっている。
この時間経過が止まるという事を知られたら物凄い事になるのだが、それすら七志はまだ気付いていなかった。
「もしかしたら本当にこの坊やは化けるかもしれないねぇ」
「ルルさん、それじゃあ」
「あぁ、一応魔道選手権にはエントリーする旨を通達しておこうかねぇ」
「やったぁ!」
現在この魔育園にはアントンを含め4人の生徒が通っており、七志が加われば5人となり魔道選手権にエントリーが可能となるのであった。
勿論七志はこれを聞いていないのだが・・・
そして、七志の脳内に魔法陣が形を作り上げ、線が燃え上がるイメージが完成した。
「ぷはぁ?!」
呼吸すら忘れていた感覚に驚き、七志は口を開いて大きく呼吸を繰り返す。
「初めてのインストールじゃ、仕方ない事じゃから心配要らんわい」
「はぁ・・・はぁ・・・そう・・・なんですか?」
「2つ目の魔道書をインストールする時にはもっと楽になってる筈じゃから安心せい」
ルルの言葉に落ち着きを取り戻して、七志は自身の手を見つめる・・・
今なら分かるのだ。自分がファイアの魔法を使用する事が出来ると言うのが・・・
「それじゃ今から教えるから良く聞くんじゃぞ。まず呪文を決まった形式で唱える、何色の魔法か、どんな魔法か、何処から出すか、奇跡を願う言葉、そして出したい形をイメージしてその形を魔法名と共に唱えるのじゃ」
これがこの世界の魔法の使用方法であった。
この為、アントンが使用していたファイアの魔法の呪文は・・・
『「黒の魔法 火の力よ我が手より全てを燃やす火の奇跡を!ファイアーアロー!」』
となる訳で在る。
なお、正確に唱える必要が在るのは色と魔法の種類、後は奇跡と魔法名である。
「一応無詠唱でも使用はできるが、その効果は20%くらいしか発揮できないのじゃ」
これが対人戦でのポイントであった。
色を唱えて属性を述べるので、詠唱をするとどんな魔法を使うのか大体バレてしまうのだ。
其の為、対処されない魔法攻撃を仕掛けるには無詠唱が必須となるのだが、無詠唱は消費MPが同じにも関わらず効果は5分の1にまで落ちる。
「それじゃ試しにやってみな」
「分かりました。」
早速実際に七志は初魔法に挑戦するのであった。
『黒の魔法 火の力よ我が手より全てを照らす火の奇跡を!ファイアー!』
ナナシの手から人魂の様な火が出現しその光景に七志は歓喜の表情を浮かべる!
魔法が使用できたのだからそれは仕方ないだろう。
だが・・・
「やった・・・これ・・・で・・・」
そこまで言って七志は出していた火が消えてその場に崩れるように倒れる。
「そ、そんな馬鹿な?!」
ルルが慌てて介抱するのだが実際に目で見た事に驚きを隠せなかった。
ファイアーの魔法は使用してもMP1で小さい炎を出すだけである。
七志のMPは3在った筈なのにいきなり魔力欠乏症に陥り気を失う筈が無いので在る。
慌てるルルとアントン、そして魔育園の生徒達は七志を協力して医務室へ送り届けるのであった。