「うぅ…こ、ここは?」
「目が覚めたナナシ君、ここは魔育園の医務室だよ」
ベットの上で目を覚ましたナナシの前に立っていたのは茶髪ボブカットの少女であった。
ナナシが来てからずっと座禅を組んでいた女の子で、背が低くナナシより年下に見えた。
「どっか痛いところある?」
目の前の少女にそう言われ、自分の手を見ると少し擦りむいた様な傷があった。
多分倒れた時に付いたのだろうと思いナナシが見詰めていると…
「あっ手を怪我してるのね」
そう言って両手でナナシの手を握りしめた。
そして、詠唱が始まる…
「白の魔法 癒しの力よ我が手より癒しの光によって奇跡を!ヒール!」
手に包まれた場所から白い光が出て、暖かくて心地よい気持ちに浸るナナシ。
光は僅か1秒ほどであったがその手を離されると先程までの傷が完全に治っていた。
そう、それが白魔法の基礎魔法『ヒール』である。
「これでよし!」
「あっありがとう」
「ううん、どういたしまして」
ニッコリ微笑む少女に少し照れ臭くなったナナシは恥ずかしさから俯く。
「それじゃもう少し休んだらさっきの部屋までおいでね」
「待って!」
そう言って少女は部屋から出ようとしたのでナナシは声を掛ける。
そして、こっちを振り向いて首をかしげる少女にナナシは緊張しながらもその目をジッと見つめ返し口を開く…
「な…名前…おして…教えて…くれないかな?」
「ん?あっ言ってなかったね」
両手を胸の前で合わせてあどけなく少女は口にする。
「ルリ、私はルルさんの孫のルリよ」
そう言ってルリは部屋を出ていった。
部屋に一人残されたナナシは怪我を治して貰った手を反対の手で触れて呟く…
「ルルさんの孫のルリか…」
『若いっていいねぇ~』
突然ナナシの脳内に聞こえるいつもの声!
「なっ?!嵐見てたのか?!」
『いや~「な…名前…おして…教えて…くれないかな?」なんて知らないよ』
「ちくしょー!」
顔面真っ赤にして両手を頭に当てて叫ぶナナシ。
勿論バッチリくっきり動画に納められたその映像は、嵐と言う魔王の手によって編集され加工されて公開される。
アダルティーな内容でない甘酸っぱい青春ラブコメ回として女性層のハートをアイアンクロー間違いなしであった。
『それはそうとナナシ、お前ファイアーをインストールしたよな?』
突然真剣な声に変わった嵐の言葉に、瞬時に気持ちを切り替えてナナシは頷く。
「あ、あぁ…なんか使った瞬間にMP使いきって気を失ったらしいけど…」
ルルの説明によるとMPは自然回復するので、魔力が有る限り気絶するだけで死ぬことはないとのことだが…
『なんかな…新しく『まほう』ってフォルダが出来てて中に『ファイアー』があるんだけど…』
ナナシの覚えた魔法までパソコンで管理されるのかと違うこと考えたナナシであったが…
『詳細を見ると…『時間焼却』になってるんだ…』
「はっ?」
そして、この瞬間ナナシの詐欺魔導師という後に伝説に残る物語が始まるのであった…