異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第19話 辞めたボブ

「よう早いなナナシ!」

 

翌日の昼過ぎ、魔育園に来た七志をアントンが出迎えていた。

頼られるお兄ちゃんと言った感じのアントンはやはりリーダーシップを発揮しているようで、魔育園に通う他の3人も頼りにしているのである。

 

「あら、もう魔力欠乏症は大丈夫なの?」

 

ルルさんの孫であるルリが二人を見かけて声を掛けてくる。

相変わらずの茶髪ボブカットがチャーミングのルリはあどけない笑顔でナナシの様子を気遣う。

その後ろにはもう一人の女の子、昨日は見かけなかったが彼女がこの魔育園に通う最後の一人だろうと理解した。

ルルさんの話ではナナシを入れて5人が揃うと言っていたからだ。

 

ナナシ、アントン、ボブ、ルリ、そして彼女ユズハで全員揃ったわけだ。

ちなみにユズハは水色の髪をした少し影のある女の子であった。

ここに通うのは子供ばかりなのは理由があった。

子供の間に魔法を学び、大きくなったらその魔法を使って働きに出るのが普通だからだ。

なので今は魔力を高める為に少し高めの月謝を払いながら魔育園に通っているのである。

 

「昨日は挨拶できなかった・・・ユズハよ」

「あっあぁ俺はナナシ、宜しく」

 

一言だけ挨拶を済ませたユズハはルリの後ろに隠れるように姿を隠す。

どうにも照れ屋なのかそれとも男が怖いのか・・・

 

「それじゃ後はボブだけか」

 

アントンがそう口にした所でルルさんが顔を覗かせた。

 

「全員居るようだね、それじゃ少し早いけど基礎学習始めるよ」

「えっ?ルルさんちょっと待ってまだボブが・・・」

 

ルルが授業を始めると言い出したのでアントンが口を挟む、だがルルは少し辛そうな顔をしながら告げる。

 

「ボブなら辞めたよ、今朝連絡があったんだ」

「えっ・・・」

 

それ以上は何も告げられずルルさんの授業が行なわれるのであった。

ちなみに今日の授業は魔法の無詠唱についてでナナシに合わせて復讐も兼ねての授業であった。

基本的に魔法は基礎を理解していれば後は魔道書をインストールすれば使える。

だがその基礎が慣れてくると自身の中で改悪され、間違った方向に思考が流れる事がある。

簡単に言うと火を起こす魔法はその場に熱源を発生させる魔法なのだが、例えばそれが火と言う物を出現させる魔法と勘違いしたりするのである。

これを間違うと無詠唱で魔法を発動した時に火が直ぐに消えてしまったりする。

こういった基礎の復讐をルルさんは一番大切だと何度も言っていて、皆それを納得していた。

そう考えればボブが辞めても学んだ事は得られているので問題は無いのかもしれない・・・

そう考えていたナナシであった。

 

そうして夕刻、ルルさんの所での授業が終わり、ちょっとした野外訓練も平行した事で少しレベルアップしたナナシのステータスはこうなった。

 

ナナシ

 

Lv.8

HP 41

MP 4

魔力8

 

ルルさんはそれを見て呆れ、ルリは慰めてくれていたが七志は一切動揺していなかった。

そりゃ魔力やMPは多い方が良いかも知れないが、彼の詐欺魔法の規格外の効果を理解すればそれを補っても充分で在るからだ。

そんな事を考えていた七志にアントンが声を掛けてきた。

 

「なぁ、昨日のボブなんだけど・・・これから一緒に様子を見に行かないか?」

 

さすがに昨日あんな態度をいきなり取っていたボブの所へナナシを連れて行こうとする事にアントンは悩んでいるようであった。

普通ならまずOKはしないだろう、だが七志自体はボブにそれほど嫌悪感を持っては居なかった。

というか集団で集まればああいう人間が居るのはどこの世界でも同じと考えていたから気にしていなかったのだ。

それでもアントンにとっては悩んだ末の結論であった。

 

「ルルさんは特に何も言ってなかったけど、話したときの表情を見れば何か理由があるに違いない・・・」

「いいよ、5人揃わないと困るんでしょ?気にはなるし一緒に行くよ」

「だからボブにはあまり好印象を持ってないだろうけど・・・っていいの?!」

 

あっさり行くと行った七志の返答に驚くアントン。

実は決定付けていたのが七志に念話で話しかけている嵐の言葉であった。

 

『虐めっ子が学校にこれなくなった理由・・・動画のネタとしては美味しいじゃないか行こうぜ』

 

真っ黒であった。

 

 

 

そうして魔育園から北へ向かった場所に在るボロイ建物の前に到着していた二人はそこから聞こえる怒鳴り声を聞く・・・

 

「一体どう責任をとるつもりなんだい?!」

 

何かが割れる音やぶつかる音が響き、その建物の玄関に座り込む一人の少年にアントンは気が付いた。

 

「ボブ?!」

 

アントンの声を聞いて顔を上げるボブは昨日までの威勢のよさは全く無く、泣きはらした顔をしていたのであった。

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