翌朝、七志は嵐からコメントの事を聞いて確かにアデルのボロ布が消えていた事は気になっていた。
だが七志の魔法の効果自体はその場に居たボブですら理解していないので質問するわけにも行かず、モヤモヤしたまま宿を出発して魔育園に向かっていた。
「ちょっと寄って行くかな」
朝から魔育園に行くのには理由があった。
アデルは助ける事が出来たが、今後別な何かが在った場合の対処法の一つとして使える魔法の数を増やしておきたいと言うのがあったからである。
そんな七志であったが、宿から魔育園に向かう途中であの雑貨屋が目に止まり立ち寄る事にした。
そう、七志が助けたお婆さんの雑貨屋である。
「こんにちわ~」
「はいいらっしゃ・・・えっ?」
「あれっ?」
そこで店番をしていたのは魔育園で出会った水色の髪をした少女、ユズハであった。
営業スマイルなのだろうが店に入ってきた七志に見せたその顔は普段の影のある雰囲気とは一転し、明るく元気があった。
「確か・・・ナナシだよね?」
「ユズハお客さんかい?」
店の奥から御婆さんが出てきた。
そして、七志の顔を見て嬉しそうに目を開いて近寄ってくる。
「おぉあんたか!また来てくれたんか嬉しいよ」
「お婆ちゃん、ナナシの事知ってるの?」
「あぁこの子がね・・・」
「昨日魔育園の場所を聞くのに寄った時に買い物したのさ」
御婆さんが変な事を言う前に七志は口を挟む。
これから魔育園で毎日顔を合わせて色々学ばせてもらうのに変な気遣いをして欲しくなかったというのもあったのだ。
「お婆ちゃん、私が通っている魔道館の魔育園に昨日入った人が居るって言ったでしょ?彼よ」
会話に割り込んだ七志に驚いていた御婆さん、ユズハの言葉を聞いて七志が知られたく無いのだと理解して口を塞いだ。
「そうかいそうかい、今後ともユズハと仲良くしてやって下さいな」
「はいこちらこそ先輩であるユズハさんには色々学ばせてもらいます」
適当な挨拶を交わしこの話を終えて御婆さんに店に寄った件について話す。
「御婆さん実は雑貨屋で魔物の肉とかって買取できます?」
「ん?うちは生ものは買取しとらんのじゃ、そういうのは冒険者ギルドに売りに行くと良いぞい。じゃが魔物の素材に関しては買取しとるでよ」
「それじゃあこれどうですか?」
そう言って七志が御婆さんの目の前にユズハに気付かれない様に出した。
それは昨日アントンと狩りをした時に持ち帰った狼の魔物の素材であった。
既にフォルダに入った段階で嵐が右クリックを行なうと『分別』と言うコマンドが表示され、それをクリックするだけで魔物が素材や肉に加工される事を知っていたのだ。
「これまた綺麗に毛皮や爪、牙を取り外したもんじゃわい」
「どうですこれ?」
「ふむ、野狼の素材はこれだけ綺麗なら価値が在るぞい!高値で買い取らせてもらうとするかな」
「ありがとうございます」
七志は頭を下げ査定してもらい結果、金貨1枚と言う破格で買い取って貰った。
普通に銀貨70枚くらいの査定結果だったのだが、これは御婆さんの七志へのお礼の代金も含まれていた。
といっても七志が一度フォルダに収納したアイテムや物は綺麗に処理される、なのでアントンの魔法で焼けた部分は綺麗に修復されていたのもあったので結果的にもそれくらいの価値は本来あった。
「凄いわねこれ・・・どうやってこんな綺麗に仕留めたの?」
ユズハが目を輝かせて聞いてきたのでドヤ顔で・・・
「企業秘密です!」
と答える七志であった。