無事にギルドに帰還したゴンザレス太郎とフーカは職員に出された書類に依頼完了のサインをして返却し、横で待っていた3人は成功報酬の銀貨30枚を職員から受けとる。
そうして一同はその場で解散となった。
流石に約丸一日徹夜でダンジョンに潜ったのだから仮眠をとったとはいえ各々の疲労はかなり溜まっており、ゴンザレス太郎も自宅に戻るやお母さんの小言を聞きながらそのまま眠るのだった。
「こんにちわおばさん、ゴン太君居ますか?」
日が沈み始めたその日の夕方、ゴンザレス太郎の家を訪れたのはシズクであった。
シズクは学校でアイアン達から、昨日冒険者ギルドでフーカとゴンザレス太郎が一緒に居たと聞き、更には二人揃って学校を休んでいたのを不審に思い家を訪れたのだ。
シズク自身はゴン太の事を友人としか見ていないのだが、ゴン太が自分に気があるのは知っていた。
だがそれがフーカに奪われたかもしれないと考えて気になって伺ったのだ。
子供とはいえ乙女心は複雑である。
「あらシズクちゃん久し振りだねぇ~ゴンザレス太郎なら今朝帰ってきてそのままずっと寝てるんだよ、そろそろ夕飯だし起こしてやってくれないかい?」
「あっはい、分かりました。失礼しま~す」
シズクはゴン太の自宅に約1年振りに入った。
学校に行き始めた頃は何度かアイアンやホネオと4人でゴン太の家で遊んだのだが、気付けば男女を意識するようになりそういう事も直ぐになくなった。
なのでシズクは変に緊張していた。
「ゴン太君?起きてる?」
ゴンザレス太郎の部屋をノックするが、少し待っても返事がないのでゆっくりとドアを開ける。
ゴンザレス太郎は布団で寝ていた。
だらしなく涎を垂らし、完全なアホ面を晒していた。
「フーカちゃんもなんでこんなのが良いのかしら?」
それは教室でフーカがゴンザレス太郎の事を「ダーリン」と呼んでいたのを聞いていたから出た言葉だった。
あの言葉で二人は交際を開始したのだとあの場にいた全員が考えていた。
そんなゴンザレス太郎の頬を指で摘まみシズクは愚痴る。
「あんた私の事が好きなんじゃなかったの…」
とても7歳とは思えないおませさんである。
ゴンザレス太郎は前世の記憶があるし、フーカはやり直した分だけ長生きしているので考え方が大人でもおかしくはないのだが、シズクは正真正銘見も心も7歳である。
「う…ううんんん…フーカ…近いよ…」
頬を摘まんでいるゴン太から発せられたフーカの名前に、思いがけずイラッときたシズクはゴン太のおでこを平手で叩いた!
何とも思ってない異性の友人に対して抱く感情とは明らかに違うのだが、本人は無自覚である。
「いい加減におきろー!」
パチーン!と良い音と共にゴンザレス太郎は飛び起きた。
まだダンジョン内で魔物に襲われ続けていた時の感覚が残っており、魔物の攻撃が来たのかと驚いて反応したのだ。
だがステータスは全く上げておらず、神力にレベルを注ぎ込んでいたゴンザレス太郎の動きは遅く、シズクは逆に反応できなかった。
これが素早く飛び起きていたら、条件反射で能力全強化のユニークスキルを持つシズクは反応し、避けるなり反撃するなりしていたのだろうが、ゆっくりなため逆に反応できなかったのだ。
バッティングセンターの遅い球が打ち返しにくい感じである。
「アイタッ」
頬を摘まんでいたその手を殴るように払い除けられ、シズクは痛みを感じた。
寝ているゴンザレス太郎の頬を摘まんでいたのが悪いのだが、それに先程までのイラつきも加算され見事なビンタがゴンザレス太郎の左頬に炸裂!
寝起きのその頬に綺麗な紅葉を咲かせる。
そして、いきなり他人を叩いてしまった自分が怖くなりシズクは近くにあった犬っぽい魔物のぬいぐるみを抱き締め、慌てて部屋を飛び出して家に帰るのだった。
「えっ?なにっ?」
好きな人が先程まで部屋に居たなんて思いもせず、寝ぼけたゴンザレス太郎は痛む頬を擦るのであった…