異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第6話 奴隷商とナナシ②

(くふふふ・・・これは美味しい馬鹿がやって来てくれたもんだ)

 

奴隷商の店主は含み笑いをしながら店の入り口を見詰める。

ちなみに店主が予想したのは『次に来るのは男の客』である。

 

(元々の値段から4倍以上の値で伝えてあるから俺が負けても損は全く無い、更に奴隷を買いに来るのなんて99%が男なんてのは常識なのさ)

 

ナナシが店主と向かい合って座りながら立たされている奴隷の4人を眺めて尋ねる。

 

「そう言えば、ここのお客さんってどのくらいの頻度で来られるのですか?」

「そうですね、大体1時間に3組くらいは来られますね。入れ替わりが激しいものですから買いに来るタイミングが重要なんですよ」

「へぇ~」

 

そんな何気ない会話をしながら時間を潰していると店の扉が開く音が響いた。

 

「いらっしゃいませ!」

 

嬉しそうに店主は立ち上がりやってきた痩せた男の接客に回る。

ご機嫌になるのも当然であろう、元の値段の8倍で奴隷が売れると確信したからである。

やって来た客は求める奴隷が今は居なかったようで直ぐに店を出て行き、ナナシの前に店主が座り嬉しそうに語り始める。

 

「はははっどうやら私の勝ちのようですね!」

「ですね、お見事です。どうですか?次はそちらが何か指定してみては?」

「ほぅ・・・そうですね、では後ろの4人の誰が一番最初にトイレに行きたいと言いだすかってのはどうですか?」

「面白そうですね、では一番左の男性って事で」

 

そう聞いて店主は2番目の男を睨みつけた。

金貨7枚と教えられた男である。

現在の価格は金貨14枚になっているそいつにナナシには分からないように目で合図を送る店主。

少しして2番目の男が手を上げた。

 

「す、すみませんトイレ行かせて貰っても良いですか?!」

「えぇ、お客様の前ですから慌てずに行ってらっしゃい」

 

そう嬉しそうに告げる店主に頭を下げて男はトイレへと歩いて行った。

 

「これで私の2連勝ですね、それでお支払いの方は大丈夫ですか?」

「はい大丈夫ですよ、それにしても店主さんお強いですね、勝負の方はこの辺りで終わらせてもらっても良いですか?」

「えぇ、楽しい一時でした。それでは合計金額は金貨32枚と、金貨28枚と、金貨288枚と、金貨1枚と銀貨60枚ですね。合計しますと金貨349枚と銀貨60枚になりますね」

 

この区では、金貨1枚は日本円で約1万円の価値が有る、つまり奴隷4人のお値段340万6千円という事である。

実際の4人の値段が22万円程なのでとんでもない値段なのだが、ナナシは基準が分からないのである。

 

「そろそろ俺の護衛が来る筈なのでお支払いはそいつが来たらさせてもらいますよ」

「そうですか、それでは待たせてもらいますね」

 

さり気なく部下と思われる男が数名入り口の方へ回りこむ、ナナシが逃げ出さないように囲っているのだ。

もしナナシが嘘をついて文無しでからかっていたとしても、無料で奴隷が1人手に入ると店主はナナシを見下しながら椅子に深く腰掛ける。

 

「すみません、こちらに主がお邪魔していませんか?」

 

店の入り口から声が聞こえ視線がそちらに集中する。

ナナシも立ち上がって振り返り彼女の名前を呼ぶ。

 

「あっやっと来たね、遅いよリル~」

 

そこにやって来たのは先程知り合ったばかりのリルであった。

緊張しているのか言葉が棒読みであるが気にせずにナナシは一方的に話し始めた。

 

「あのさ奴隷を4人ほど買うんだけど支払い頼むよ」

「えっ・・・?」

「全部で金貨288枚と銀貨60枚だってさ」

「き・・・金貨288枚と銀貨60枚?!そんな大金無いですよ?!」

 

声が裏返ったリルの態度にナナシとリルの左右へ護衛の男が移動した。

支払いが出来なければそのまま奴隷落ちさせる気なのだろう。

リルの態度からその可能性が濃厚だと判断した店主の指示であった。

だが事態はナナシの一言で一転するのであった。

 

「でもさ、この後領主に会うのに奴隷くらい連れてないのは恥ずかしいからなぁ~仕方ない俺が払っておくよ」

 

その言葉に硬直する店主。

それはそうであろう、ナナシはこの町に入る時にあの骸骨からこの町の税金の話を聞いていたのだ。

業種によって率は違うが、売り上げの何%を申告制で支払っているのだ。

しかし、その申告が虚偽であった場合かなりキツイ罰則が待っているのだ。

今回はナナシが賭け事で値段を4倍に上げているが、元々の値段が既に4倍の状態から始まっていた。

まずこれが領主の耳に入った場合に申告していた金額と違うと言う事で監査が入る可能性が高い。

更にナナシが賭け事で4倍にしたと言っても売り上げに対する税金を誤魔化す事は出来ないのだ。

 

「だ・・・大丈夫だ・・・今のこいつ等に金貨288枚なんて在るわけが・・・」

「それじゃあ俺のポケットマネーで支払わせてもらいますね」

 

そう言ってナナシがポケットから白金貨3枚を取り出した。

店主はそれを見て真っ青になる・・・

それを受け取り、今回の件を領主に話をされたら・・・と考えたら奴隷商は恐怖に震えていたのだ。

 

「じ・・・冗談ですよお客様~奴隷4人でサービスして金貨20枚で販売させてもらいますよ」

「え~そんな悪いですよ~」

「いえいえ、お気になさらずに。それでは白金貨1枚預かりましておつりの金貨80枚です」

 

そう一方的にナナシから白金貨を1枚受け取り、おつりを渡して奴隷4人の首輪の主登録を変更した。

まるで訓練された兵士の様に物凄くスムーズな流れで止まる事無く作業は進み、ナナシとリルは奴隷4人を連れて店から外へ出され、何故か店は本日閉店の立て札が置かれるのであった。

 

「えっと・・・たす・・・かったの?」

「ですね、それじゃあ皆さんも自由にお帰りになってもらって良いですよ」

 

その言葉と共に4人の首輪が外れ地面に落ちた。

ナナシは店主から待っている間に聞いていた奴隷解除の方法を実行していたのだ。

自分達に起こった事が信じられず泣き出す女と喜びに雄叫びを上げる男の奴隷2人。

そして・・・

 

「首輪は外れましてもこの身はお主人様に捧げさせていただきます。身はもう無いんですけどね!」

 

1人相変わらずの骸骨にナナシは手を差し伸べて・・・

 

「ほらっ助けてやったんだから金貨20枚払えよ」

「えっ・・・」

 

その言葉に硬直する骸骨であった。

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