翌日、スケ母の作った朝食を美味しく頂いた4人は仕事に出たスケ母を見送って、この後どうするか相談していた。
「とりあえず家でゴロゴロするのもあれだから、町を案内するのはどうかな?」
「それええな!ほな今日はこの尾骶骨町を案内させてもらうわ!」
リルの言葉に妙案だとスケさんが反応を返し、今日は4人で町を探索する事となったのだが・・・
スケさん仕事をしていないのか?と七志の視線が痛かったのは秘密である・・・
「ここがワシが暴走族チーム『牛歩』のリーダーやった頃集会に使っていた広場や!」
スケ宅から徒歩1分で到着した広場で骨だけど胸を張って説明するスケさん・・・
暴走族が果たして何で暴走するのか・・・馬か?馬なのか?それとも鹿か?合わせて馬鹿なのか?
しかも名前が牛歩って事は牛なのか?暴走暴れ牛なのか?
突っ込みどころしか無いスケさんの道案内は続き・・・
「ここがワシが初恋の彼女に猛アタックして撃沈して朝まで寝ていたベンチや!」
「ここがワシが七五三の時に写真を取ってもらった出店があった空き地や!」
「ここがワシが贔屓にしているエロ本が立ち読みできる本屋や!」
スケさんの道案内は続くのだが、どれもこれも全く役に立たない道案内で遂に七志も無駄だと判断し、そろそろ断ろうとした時であった。
「お願いです!妹を!妹を許して下さい!」
道の真ん中で骸骨に手首を捕まれ持ち上げられている少女が居た。
その傍らにそれを許してもらおうと頭を下げる姉と思われる女性・・・
そんな女性の声を無視して持ち上げた少女の顔を骸骨は無い瞳で覗き見る・・・
「ひっ」
「おめぇ俺の前を無断で横切るとは良い度胸だな!」
骸骨の格好が武者の様な鎧を装着していた事から、それなりの者だろうと言うのは直ぐに分かった。
それを見たスケさんが小声で伝えてくる・・・
「関わるなよ、アレがこの区を支配する死神将軍の配下の死神3兄弟の3男『六郎』だ」
突っ込みが必要なのか、謎過ぎる名前に唖然としている3人であったが、周囲の人間達が視線を反らしている事からスケさんの言っている事が嘘ではないと判断した3人。
だが離れていても六郎とナナシ達の間には圧倒的な力の差があるのは直ぐに分かった。
今手を出せば確実に負ける、だが・・・
「おいお前!この骸骨野郎!!偉そうに女の子になにやってるんだ!!!」
七志は大声で口にした。
誰もがその言葉に一斉に七志を見る。
六郎もまさか自分にそんな事を言う者が居るなんて思わなかったので、一瞬驚いて少女の手を離してしまった。
「あぁん?おい今何て言った?」
ゆっくりと顔をこちらへ向ける六郎の目の部分に真っ赤な怒りに包まれた眼球が浮かび上がる。
その目は七志を凝視したのだが・・・
「な・・・自分何言って・・・」
「黙れこの変態!この女の子は俺が守る!」
スケさんの方を向いてルリエッタを背後に回した七志が大声で叫んでいた!
その光景に自分が言われたのでは無いと理解した六郎であったが、その時には既にあの姉妹は何処かへ逃げ去っていた。
「ちっ」
六郎は七志とスケさんの芝居掛かった立会いに興味を無くし、そのまま何処かへ歩いて進んでいく・・・
それを横目で見送り七志はスケさんに手を差し出した。
スケさんも内心、心臓が無いのにその部分がバクバク言ってたのだが、無事に七志の機転が上手くいったのを理解し大きな溜め息を吐いていた。
「ホンマ自分度胸ありすぎやろ・・・」
「戦って勝てないのなら戦わずに目的を果たせば良いのさ」
そう口にした事で、周囲の見物人も今までのやり取りが六郎に捕まっていた姉妹を助ける為の演技だったと理解した。
一気に盛り上がる現場で拍手と歓声が響く、その光景から六郎が町の人間に嫌われているのを理解した七志。
「いや~どうもどうも」
そう口にしながら3人は再び町の探索に戻る・・・
そして、曲がり角を曲がった所でそこで待っていたリルと合流する。
「お疲れさん、いや~良い仕事したね!流石ミスリル!」
「ミス言うな!」
そのリルの横にはあの姉妹が居た。
七志の機転で叫んだ時に回りこんだリルが姉妹を上手く誘導し、あの場から連れ去っていたのだ。
怖がりながらも助かった事に喜びを感じながら震える2人。
その2人を見て七志はスケさんの方を見て尋ねた。
「なぁちょっと茶でもしばかへん?」
「それワイの言葉やから」
そんな2人のやり取りにキョトンとしながらもリルが・・・
「一緒に少し休も?」
「えっ・・・あっはい・・・」
そう返事してスケさんの道案内で小さな定食屋の様な店に足を運ぶ6人・・・
入り口で姉妹は自分達の手持ちが少ない事をリルに伝えていたが・・・
「あぁ~へーきへーき、女の子をお茶に誘うんだから代金はコイツ持ちだから」
「はぁ・・・リルそう言う事は俺の口から言わせてくれよ」
仲良く笑いあうリルと七志、その後ろに七志の服の端を摘むようにして付いてきているルリエッタ。
3人の関係がちょっと気になった少女であったが、一緒に居る骸骨のスケさんの方を見る・・・
「まぁそう言うわけやからコイツの奢りって事で好きなもん頼んだらええよ!」
やはり無い胸を張って伝えるスケさんに七志はすかさず伝える・・・
「あっお前は男だから自腹な」
「えっ・・・マジっ?」
そんなやり取りに姉妹はクスクスと笑い出し、店内へ入り空いている席に着いた時であった。
男性店員が注文を取ろうとやって来て・・・
「あぁ?!兄さん!!兄さんじゃないですか!?」
「んっ?あれっ?えっ君は確か・・・」
そこに居た店員の顔を見て七志達は驚く。
そう、彼は七志がルリエッタと共に奴隷商で買い取り解放した男性の奴隷であったのだ。
「そ、その節は大変お世話になりました」
「あぁ、そう言うの良いって。悪いんだけどこの可愛い姉妹に何か美味しいものでも出してやってくれないか?」
「畏まりました!少々お待ち下さいませ!」
そう言葉を返し裏に戻った店員の背を見て視線が再び七志に集まる・・・
七志は見詰めるその視線を受けて気付いた。
「あっ・・・姉妹の分しか注文してなかったわ」
「って違うやろっ!」
まるで夫婦漫才の様に七志に見事に突っ込みを入れるスケさんであった。