異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第12話 定食屋での姉妹とのやりとり

人は他人に対して無償で何かを行なう事は無い。

偽善とされる一方的な親切ですら自己満足という報酬を本人が得る為に行なうのだ。

行動には常に理由が付きまとう、それが人間である。

そう理解している姉妹の姉は会話に笑いながらも目の前の七志の事を気に掛けていた。

 

「えっと、まずは自己紹介しようか。俺は七志でこっちが・・・」

「何が目的ですか?」

「ちょっちょっとお姉ちゃん・・・」

 

落ち着いたところで突如表情を硬くして七志に問い返した姉。

それに対して慌てた様子の妹であるが、姉の表情は変わらない。

真っ直ぐに七志を見詰めるその視線に七志は向き合った。

 

「目的か・・・そうだな、君達を使って金儲けしようと思ってる・・・って言ったらどうする?」

 

七志の言葉に周囲の目が集まる。

特に姉の目が一掃鋭くなった。

七志はその目を真っ直ぐに見つめてテーブルの上に1枚の金貨を取り出した。

 

「ここに金貨が1枚在る、この金貨を妹さんが3枚に増やす事が出来たら何でも言う事を聞くって言うゲームはどうだい?」

「はぁ?」

 

告げられた内容に姉は思考が混乱する、ゲームをして金貨を減らす事が出来れば言う事を聞かされるというのであれば分かるのだが・・・

増やせたら言う事を聞くとは一体どういうことなのだろうか?

チラリと視線を泳がすと、七志の言葉に連れのスケさんもリルもルリエッタも楽しそうな表情で七志を見詰めていた。

期待、それは七志が一体何をするのかと言う期待の視線。

だがそんな事は知らない姉は不気味な恐怖を感じ妹に視線を向ける。

 

「えっと・・・私が増やせたら・・・えぇっと???」

 

混乱した感じの妹の手に姉は手を重ねて落ち着かせる。

 

「落ち着いてナナ、言う事を聞くってのは私だけって事よね?」

「もちろん!」

 

会話の中で妹の名前がナナだと知った七志、自分と名前が被っているのに呼ぶ時に困るなと小さく笑うのだがそれが姉の癪に障った。

手を出して七志の置いた金貨を手に取りじっくりと確認する。

 

「どこにでもある金貨みたいね・・・」

「あぁ、そうそう。ゲームをそっちが勝ったらそれは進呈するよ」

「はぁ・・・それでここの代金を払えってわけね、ご馳走するとか言ったのはそう言うことか・・・」

 

七志は笑みを強めて姉の方を見続ける。

4人に囲まれて逃げ場が無いと理解したのか、姉は頷いて詳細を七志に聞こうとするが・・・

 

「まずは自己紹介な、俺は七志、そしてこっちがリル、ルリエッタ、骨」

「ちょっオマッ?!」

「私はネネ、こっちは妹のナナよ」

「うし、それじゃあ早速ゲームを始めるからナナちゃんこっちに来てくれるかな?」

 

そう言って七志はナナと2人で離れた場所に移動して何かをコソコソと話す。

その間にルリエッタとリルは店員が持ってきた果実水を配って一息ついていた。

 

「そうそう、上手だよ!そしてこれをこうやって・・・ほらっ!」

「本当に大丈夫なのかな?」

「大丈夫だって、ネネさんを驚かせてやりなよ」

 

そんな会話が聞こえ、全員が視線を向けると七志とナナが嬉しそうに近寄ってきた。

ナナの手には先程の金貨が1枚、それを再びテーブルの上に置いてネネの向かいに座った。

 

「それじゃあゲーム開始だ。ネネさん、妹のナナちゃんが今からこの金貨を3枚にする。それが出来たら何でも言う事を聞くって事で良いよね?」

「はぁ・・・どうせ拒否権ないんでしょ?良いわよやってやるわよ!」

 

元々ナナが六郎にあのままだと殺されていたか連れ去られていたのだ。

それを助けてくれたこいつにだったら私の体でもなんでもくれてやる!

そう1人暴走しているネネの前に座ったナナが金貨を1枚手に取った。

 

「それじゃあお姉ちゃん・・・見ててね!」

 

ナナはその金貨を右手の親指と人差し指の間に挟むように持った。

表面をネネの方へ向けて摘むようにしたそれを左手で覆うように微調整を行なう。

そして、左手を広げてネネの前で表裏と何も無いことをしっかりと見せて大きく息を吐く。

 

「ハイッ!」

 

その左手で金貨を摘んだ指先を包み込むように覆い右手を離して開く、勿論そこには既に金貨は無い。

そして包み込んだ左手をテーブルの上に置いて開けると・・・

 

ちゃりん・・・

 

1枚だけでは決して聞こえる筈の無い音が聞こえ、ナナが左手を避けると・・・

そこに3枚の金貨が置かれていた。

それを目を見開いて驚き立ち上がって手にするネネ!

 

「嘘っ・・・ありえない・・・一体どういう事?!」

 

勿論姉であるネネはナナが収納魔法の類を使えないことも、アイテムボックスの様な物を持っていない事も知っている。

だからこそ目の前で起こった事実に目を疑っていたのだ。

 

「えへへ・・・お姉ちゃん驚いた?」

「え・・・えぇ・・・驚いたわ・・・」

「さて、それじゃあ無事に1枚の金貨が3枚に増えたんだから約束を守ってもらおうか」

 

七志のその言葉に頬を赤らめて一体どんな事を告げられるのか恐怖するネネ。

妹が不思議な力を与えられたのか、疑問に思いながらもいつのまにか七志と仲良くなっている事がネネに引っかかっていた。

そして、一つの回答が告げられる・・・

 

「そうか・・・分かったわ!貴方、幻覚魔法を使ったのね!」

「はっ?」

「そうよ、だからこの金貨も最初から3枚ここにあったんだわ、そしてネネも魔法で誘惑して・・・なんて酷い男!」

 

意味不明な事を告げられた七志であったが、横に居たスケさんが口にする・・・

 

「いや、こいつレベル1やし、ただの人間やから魔法なんて使えへんで?」

 

その言葉に訳が分からないと言った感じのネネにナナは楽しそうに告げる。

 

「お姉ちゃん、驚いたでしょ?これね、マジックって言うんだって七志さんに教えてもらったんだ~」

「マジック・・・?」

「そうだよ、さぁナナもう一度今度は分かりやすく横向いてやってあげるといいよ」

「うんッ!お姉ちゃん見ててね!」

 

そう言ってナナは金貨1枚を右手に金貨2枚を左手に持つ。

先程と同じ様に右手の親指と人差し指で1枚の金貨を摘むように表を前にして持つ。

そして、左手に持っていた金貨を右手の金貨を微調整するように触った際に、金貨の後ろに2枚縦にして挟むように持った。

右手の指2本で1枚を正面向けて、2枚を縦にその後ろに隠すように持ったのだ。

こうする事で正面からは1枚の金貨しか見えず、左右には縦になっている金貨は見えない、上下からも指があるから見えないという寸法であった。

基本的に金貨に限らず、硬貨は地球の様に完全な球体やサイズをしている物が無いので微妙に大きさが違う。

だからこそ重ねてもずれて複数枚見えるのが普通と言う常識を逆手に取ったマジックだったのだ。

 

「それで、この挟んだ金貨を何も無いですよって見せた左手で包み込んでテーブルに置けば・・・はいマジック成功♪」

「「イエーイ!!」」

 

ナナと七志がハイタッチを交わし、呆気に取られるネネはそれを呆然と見詰める・・・

周囲では先程の男性店員も加わりその場に偶然居合わせた客も立ち上がって拍手を送っていた。

そんな中、七志がネネの肩に手を置いて告げる。

 

「それじゃあ約束通り何でも言う事を聞くって事で・・・をよ・ろ・し・く」

「はぁっ?!」

 

耳元で囁かれたその内容に驚き七志に向かって声を上げるネネ。

その声に場は一瞬静まり返る。

そんな一同のテーブルに待ってましたとばかりに次々と料理が運ばれてくるのであった・・・

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