異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第38話 そして誰も死ななくなった

時は昨夜まで巻き戻る。

日が暮れ、街灯などが無い外が真っ暗になった頃、二人の男がシズクの家の前に立っていた。

 

「ここだ。」

「本当にこんな民家に金貨5枚以上の価値のあるものがあるのか?」

「あぁ、俺のユニークスキル『トレジャーサーチ』は財宝の方向と金額をサーチするスキルだからな」

 

10日以上前にこの家に金貨8枚の価値のある物が在ると分かった時から、この二人はタイミングを見計らっていた。

元々は冒険者だったこの二人は悪徳商人から詐欺に遇い、金貨5枚の借金をしていた。

金貨5枚を支払わないと二人とも奴隷に落とされると言うので切羽詰まって強盗を計画したのだ。

それも仕方あるまい、金貨5枚と言えば日本円換算で約50万円。

払えない額ではないが直ぐには無理と言う金額である。

 

しかし、中々チャンスは巡ってこず支払日の前日になっていた。

それもその筈、その金貨8枚の価値のある物とはシズクの母親が首から常に下げているネックレスの宝石なのだから。

 

「いざと言う時は俺のユニークスキル『影縫い』で動けなくして始末すればいい」

 

まるで強盗をするために揃ったような二人は音を立てないようにコッソリと玄関から侵入したのだが…

 

「おいまて!」

「どうした?」

「今、場所を調べようとスキル発動したら金貨100枚の価値のある何かが反応したぞ!」

「金貨100枚?!」

「バッバカ!声がでかい」

 

シズクの家は二階建てで現在一階に家族が集まって夕飯を食べている。

そして、そのスキル反応は二階からしていた。

 

「行くか!」

「あぁ、金貨100枚もあれば返しても豪遊出来るもんな」

 

二人は予定を変更して二階に上がってシズクの部屋に入った。

 

「えっ?これか?」

「あぁ、これみたいだ」

 

二人の前にあるのはシズクがゴンザレス太郎の部屋から持ってきていた犬のような魔物のぬいぐるみであった。

そう、本人すらも忘れているのだが、このぬいぐるみの口の中にはアレが入っているのである!

その時であった!

 

「ヤバイ、誰か来る!」

 

階段を上がる音が聞こえ、自分達の顔を見られるわけにはいかない二人は半信半疑ながらもスキルを信じ、そのぬいぐるみを掴んで窓から飛び降りた!

ちょうどシズクが部屋に戻った時に影が窓から出ていくのが見え、慌てて窓まで近寄ったが既に二人は何処かに逃走していた。

気のせいかと思ってシズクは振り返りそれに気付いた。

 

「あれ?…ゴン太君のぬいぐるみが…無い…」

 

そして、家の中に残された靴の跡から泥棒が入った事が発覚したのであった。

だが大人達は皆不思議に思っていた。

盗まれたのが娘が友人から借りた犬のぬいぐるみだけだったからだ。

誰も知るわけがない、予想もしないだろう…

そのぬいぐるみの中に白金貨が1枚入っているなど…


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