異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第13話 ナナシのファイアーボール

次々と出された食事を食べ終え、一同はマッタリしていた。

そんな中、七志は1人立ち上がりネネの背後に近付いて耳打ちする・・・

 

「それじゃあ約束通り言う事を聞いてもらうよ、とりあえず隣の部屋に行こうか」

「・・・はぁ、分かったわよ」

 

七志の言葉に小さく返事を返すネネ。

正直言うと、妹がこんなに笑顔になるのは本当に久しぶりであった。

自分達を助けてくれてこんなに親切にしてくれた七志にお返しをしたいと思う反面、先程のマジックみたいな物を使って賭けを行なったりする一面に不信感を抱いたりもしていた。

でも妹の事を七志なら悪いようにはしないだろう、お金も沢山持っているみたいだし、最悪自分がこの体を捧げて・・・

そんな事を内心考えていたりもするので大人しく七志に付いて行く。

 

「ちょっとお姉ちゃん借りるよ」

「えーお姉ちゃんだけですか?」

「まだナナちゃんには早いからね」

 

その言葉にルリエッタとリルはエッチな事を想像して頬を赤く染める。

リルはともかく、ルリエッタは奴隷から解放してくれた七志が望むのであれば体を捧げる覚悟をしている。

そんな事を知りもしない七志はちょっと行って来る~っと店員に一声掛けて隣の部屋に行く・・・

 

「それで、ここで何をさせようと言うの?」

 

そこは奥まった部屋で、机1つに椅子が2つしかない小部屋であった。

七志に進められ、椅子に腰を下ろしたネネはこれからどんな要求をされるのか、それを想像して自身を強く抱き締めているのだが・・・

 

「単刀直入に言う、あの六郎ってヤツに妹が連れ去られようとした時にやろうとしていた事を俺にも教えてくれ」

「えっ・・・」

 

それは全く予想もしていなかった言葉であった。

先程までのケラケラ笑っていた能天気な表情とは一変して、真っ直ぐ真剣な眼差しでネネを見詰めるナナシ。

その真っ直ぐな目にネネの心はドクンっと跳ねるのだが、それに気付かれないように言葉を選んで返す。

 

「何を言っているのか分からないわ」

「心配しなくても他の人には何も言わないさ、ネネって呼ぶよ?ネネは世界がこんなになる前は魔法使いだったんでしょ?」

「っ?!」

 

まるで全てを見透かしたような七志の言葉にネネは目を見開いて驚く。

世界が混ざった時に殆どの人間は意識を失い倒れた。

起こすにはその区の魔石を埋め込む事しか出来ない、だが埋め込むと成長は出来るがその区でしか生きられない体となる。

しかし、目の前のネネは体に魔石を移植していない。

にも関わらずあの時にやろうとしていたそれは間違い無く魔力を練って魔法を使おうとしていたのだ。

 

「俺も元々魔法使いでね、世界がこんなになってからもどうやら魔力が練れるようなんだ」

「それにしても・・・でたらめよ」

 

ネネがそう言うのも無理は無い、魔力が練れるという事と他者が魔力を練っているのを知れるというのは大きな差である。

それこそ空気中の魔素の流れを視認出来なければ出来ない芸当なのだ。

 

「まぁ、約束だから別に良いけど・・・貴方にも使えるかどうかは分からないわよ」

「あぁそれで構わないさ」

 

ネネはそう言うが、七志は教えれれば間違い無く使えるという確信があった。

それは七志の言葉が真実なのであれば魔力を目で確認しながら練れるからである。

ネネの七志を見る目つきも先程までの様子と変わり、まさに魔法使いの目つきになっていた。

 

「まず最初にこれは魔法ではなく魔術と言う事を理解して。元々魔法を使うためには自身の体内で練成された魔力を用いて魔法を発動させる必要があるのだけど、これは大気中の魔力を一時的に自身が操作して魔法を発現させる方法」

 

その言葉に頷きで返す七志、その顔は話の内容を理解していると言う顔であった。

空気中の魔素を酸素の様に呼吸で体内へ吸収し、それを自由に魔法として使う為に利力へと変換する。

それこそが魔法を使うときに必要となるMPの正体であった。

そして区が変わるとその体内へ魔素を吸収する事が出来なくなる、それこそがその区で魔法が使えないという理由そのものであったのだ。

その変換の為に体内へ魔石を移植する必要があるという事なのであった。

 

「なるほど、魔力を取り込まずに魔法へと変換するって訳か・・・」

「1を聞いて10を知るって言葉もあるけど・・・あんた凄いわね」

 

七志は仮説の段階ではあるが、既にこの世界の秘密へと迫りつつあった。

そして、ネネは自身の右手の中へ空気中の魔素を集める・・・

 

「こうやって魔素を集めてそこへ利力を注ぎ込むの」

「なるほど、魔力を変換させずに使う為に自身の利力を使って強制的に発現させるわけか・・・」

「あんた本当は私の説明要らないんじゃない?」

 

白い目で七志を見始めたネネであったが、七志が既にお試しで魔法を発現しようとしていた。

それを観て慌てるネネ、それはそうだろうこんな室内で魔法を暴発させれば大惨事になるのは目に見えていた。

だが七志は気にせずに手の中へ集めた魔素へ利力を注ぎこみ始める。

利力の注ぎ込み、それは自身の存在力を魔素へ混めると言うこと、つまり今七志はMPではなくHPを消費して魔法を発動させようとしていたのだ。

そして、それを1回簡単にサラッと説明しただけで実現させようとしている七志に困惑し始めるネネ。

七志は魔素へ込めた利力を通じてその魔素の状態を変化させ頭に浮かんだ魔法を発現させる!

 

「よしいっけー!ファイアーボール!!!」

「ばっばかっ!?室内でそんな魔法使うなんて・・・」

 

ネネが七志の唱えた魔法名を聞いて慌てて止めようとするが、既に手遅れで七志の魔法が発現してしまう!

それは七志の手の中から現れてゆっくりと手から離れる・・・

そして、燃える球体が浮かび上がり浮遊し始める・・・

 

「えっ・・・なにこれ・・・」

 

ネネが唖然とするのも無理は無い、七志が使用した魔法『ファイアーボール』は炎の球体を前方へ放つ魔法だからである。

しかし、七志から発せられたそれは自由気ままに七志の周囲を飛び回る・・・

どこからどう見てもそれは・・・

人魂にしか見えないのであった・・・

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