異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第14話 突然の襲撃、そして詐欺魔法の復活!

部屋の中に3つ浮かぶ人魂・・・

七志の手から放たれたファイアーボールなのだが・・・

 

「ファイアーボールはファイアーボールだけど・・・色んな意味で違う・・・」

「うーん・・・どうやら効果も意味不明みたいだね・・・」

 

浮かぶ火の玉を手で触ろうとするが、そこには何も無いように手が通過してしまった。

まさしく心霊現象そのものである、ネネも一応触ってみようとしたが、触れる事無くそれは手を通過する・・・

フヨフヨと漂うように飛び続ける人魂、使い方も糞も触れ無いのだ。

考え得る使い道といったらお化け屋敷のスタッフぐらいしか思いつかないのである。

 

「あっ・・・」

 

ネネの声と共に浮かんでいた人魂はフッとその場から消え去った。

消化されたとかではなくそのまま消えたといった感じである。

 

「でもまぁ、一応魔法は使えたから報酬は頂いたって事で」

「なんか納得いかないんだけど・・・」

 

ネネ、実は七志にエッチな要求をされると覚悟していただけに肩透かしを食らった気持ちであった。

それでも七志が自分と同じ元魔法使いで、魔石を埋め込まず目覚めた人間と言う事で親近感を持っていた。

魔石が埋め込まれていないのでお互いにレベルは1のまま、だからこそ互いに助け合う事が必要だとナナとネネは常日頃考えていたのもあった。

 

「さて、それじゃあお腹も膨れたしそろそろ・・・」

 

七志がそう言った時であった。

隣から食器などが割れる音が響き、悲鳴が響き渡った!

 

「キャー!!!!」

「おねーちゃーん!!!!」

 

慌てて個室を飛び出した七志とネネは男達に入り口から連れ出されるナナとルリエッタの姿が目に入った!

追いかけようとするが、直ぐ横に傷を負って倒れているスケさんとリルの姿が見えて七志は状況確認の為にそちらへ向かう。

その間にネネが店から飛び出した!

 

「七志・・・ごめんなさい・・・」

「リル何があったんだ?!」

「分からないの・・・変な男達が店に入ってきたと思ったら突然攻撃を受けて・・・」

「あいつら・・・無茶苦茶しおるでほんま・・・」

 

倒れている白骨死体、いやスケさんがカタカタと顎を揺らしながら声を発する。

先程の人魂と合わせて心霊現象の完成である。

 

「多分あいつら・・・奴隷商や・・・人を無理矢理奴隷に落とす気なのやろうけど・・・こんな人目の付く所で・・・」

「奴隷商・・・」

 

七志の脳裏にルリエッタを買い取った奴隷商が浮かぶ。

その時であった。

 

「ギャー!!!!」

 

店の外から男の悲鳴が聞こえ、七志はリルに肩を貸して店から出る。

そこは惨劇が広がっていた。

 

「く・・・くそっ・・・聞いてねぇぞ!六郎が襲ってくるなんて!」

 

そう、そこにはあの鎧を着た死神3兄弟の3男である六郎が刀を抜いて立っていた。

近くには数名の男が血塗れで倒れており、近くの建物の壁に背を預けてガタガタ震えるルリエッタとナナの姿が在った。

2人の方を見て六郎はゆっくりと刀を振り上げたまま近付こうとした。

それを隙と見たのか、男が地面に落ちていた石を持って襲い掛かった!

 

「戯けが!我が制空剣に死角は存在せぬわ!」

 

一瞬であった。

石を振り上げた男はその場で全身から血を吹き出して崩れ落ちる。

六郎が手にした刀で切ったのだ。真後ろに居た男を目にも止まらぬ速さで・・・

 

「さて、お前は先程某が切り損ねた女だな・・・嬉しいぞ!刀も喜んでおるわ!」

 

六郎はナナに向かって刀を振り上げる。

その時であった。

 

「ダークミスト!」

 

建物の影から飛び出したネネが魔法を発動させたのだ!

その瞬間周囲に黒い霧が漂い、視界を完全に閉ざす。

その隙に飛び出して2人の手を取って逃げようとするのだが・・・

 

「無駄だ、某に闇属性の魔法は効果を発揮しない!そして、我が制空剣は見えていなくても射程に入ったモノを斬る!」

 

ズバッと黒い霧の中で振り下ろされる刀、そこから吹き出る血!

ドサッと誰かが倒れる音と共に黒い霧が一気に晴れた!

 

「おね・・・え・・・ちゃん・・・?」

 

ナナの目の前で背中をザックリと斬られて倒れているネネの姿がそこに在った。

呆然と動かないネネを見詰めるナナの横ではルリエッタがガタガタと震えながら腰が抜けたのか座り込んでいた。

 

「くはっはっは!某の刀の成長に役立ってくれたのだからお前も共に逝くと良い」

 

再び振り上げられる六郎の刀。

誰もが殺されるであろう二人から目を反らした。

七志以外は!

 

「ファイアーボール!!!」

 

叫びながら飛び出した七志は六郎に向かって走り出す!

その周りには先程と同じ人魂が出現し浮かぶ!

その声に反応したのか六郎が振り返った!

 

「なにっ?!火属性の魔法だと?!」

 

そう、この区では闇属性の魔石しか流通しておらず、それでしか人は生きられないのだ。

そして、その闇属性の魔石を移植すれば闇属性の魔法だけが使える。

その闇属性の魔法は死神3兄弟全員がどんな魔法であっても吸収&無効化できるのだ。

だからこそ、それ以外の属性魔法に対して六郎は反応を示した。

特に火属性はアンデット系である骸骨系の生き物の弱点でもあるからだ。

 

「き、貴様?!さっきの!?おのれ!」

 

六郎は七志の周囲に浮かぶ火の玉に骨の顔を歪める。

本来であれば遠距離からの闇属性魔法は無効化でき、近付けば制空剣で対処すると言う無敵のスタイルを得意とする六郎であるが、他属性の魔法を使われるというのは彼の唯一の弱点でもあったのだ。

そして、駆け寄る七志の周囲を飛ぶ人魂が不規則に浮かぶのを見て、予期せぬタイミングで自分目掛けて飛んでくるのを予測したのだろう、その場から飛びのき七志と距離を取る。

そんな六郎を無視して七志は背中から血が流れ続けているネネの元へ駆け寄った。

傷が深く血が流れすぎて顔色が青くなったネネに駆け寄ったナナシであるが、近付いた所で何かが出来るわけでも無い、周囲を浮かぶ触る事の出来ない人魂は倒れるネネの体を素通りして浮かび続けるのを見て六郎がニタリと骨だけの顔を歪める。

 

「なんだ?ハッタリか?心配するな、そいつはもう助からんしお前達も全員皆殺しだ」

 

六郎の口調が変わっているのは驚かされた怒りからなのか、刀を握り締めたまま六郎は一歩ずつ近付いていく・・・

 

「七志さん・・・おねえちゃんが・・・おねえちゃんが・・・」

「どうする・・・どうする・・・どうしたらいい・・・嵐・・・答えてくれ・・・俺は・・・どうすれば・・・」

 

考えるが都合よく良い案が浮かぶわけもなく、その間もネネの出血は続いていく・・・

薄っすらと開いた目で妹のナナを見たネネは震える手を少しだけ浮かせてナナの方へ近づける・・・

その手を慌てて握るナナの顔は涙でグショグショになっていた。

 

「素晴らしい姉妹愛ってか?もういいよお前等全員あの世で仲良くすると良いさ」

 

そう言って六郎が刀を振り上げる。

まさに偶然であった。

ただただ偶然七志の周囲を飛び回っていた人魂が六郎の制空剣を反応させたのだ。

七志の直ぐ真横を通過する六郎の刀、だが人魂は触る事が出来ず六郎の刀は素通りする。

 

「あぁん!?なんだこりゃ?!」

 

だが2,3回斬った所で触れないのが分かったのか、六郎は人魂は無視する事にした。

そして、刀が七志の背中に振り下ろされようとした時であった。

 

ガキンッ!

 

咄嗟の偶然であった。

七志はネネの傷を治療しようと手に魔力を集めていた、その手で六郎の刀を受け止めたのだ。

ただの素手で刀を受け止める、そんな事が出来る筈が無いのが普通だが、奇跡的な偶然が重なったのだ。

七志が手で刀を押さえようとした時に偶然人魂が手と刀の間に入ったのだ。

そして、奇跡は起こった。

人魂が六郎の刀を弾き返したのである!

 

七志が斬られそうになったのを見て飛び出そうとしたリルは動けない体のまま手を伸ばした状態でそれを見て固まる。

七志は六郎の刀を受け止めた人魂をそのまま握り締めて斬られたネネの背中に押し付けたのだ!

そしてナナシは呪文を唱える!

 

「黒の魔法 火の力よ我が手より全てを照らす火の奇跡を!ファイアー!」

 

すると驚く事が起こった。

まるで巻き戻しの映像を見るようにネネの背中の傷が逆に塞がっていったのだ・・・

 

「ケホッ・・・ケホッ・・・」

 

今まで完全に瀕死だった筈のネネが咳き込み、息を吹き返したのを見てその場の誰もが驚きに目を疑う。

だが七志は落ち着いた感じで立ち上がり、六郎の方を向いて手を伸ばして浮かぶ人魂を魔力を集めた手で掴む。

 

「き、貴様一体なにをした?!回復魔法か?!」

「いや・・・どうやら俺の詐欺魔法『ファイアー』を無事に使えたみたいだわ」

「はっ?ファイアー?はいっ?えっ?」

 

混乱する六郎。

立ち上がった七志は最後の人魂を握ったまま六郎の方を向く。

そう、七志の詐欺魔法『ファイアー』の効果は『時間焼却』つまり流れた時間を燃やし尽くして物体を過去の状態へ戻すのである。

そして、握った人魂を振り被って六郎に投げつける!!!

 

「舐めるなっこの人間が・・・はぁっ?!」

 

自分の顔面へ向かって飛んできた人魂、六郎は先程それが当たっても通過するのを見ていたので無視してそのまま七志を斬りつけようとしていた。

だがそれが顔面に当たると同時に首の部分が後ろへ異様な形で折れ、そのまま全身ごと後ろへ吹き飛ぶ!

その威力は凄まじく、一撃で六郎の首の骨をへし折り頭の兜を粉砕し、六郎はそのまま後ろへ吹き飛んで仰向けに地面に落ちるのであった・・・

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