異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第39話 認知されなくても運命は少しずつ変化する

「し…シズク…本当に…」

 

ゴンザレス太郎に謝っていたシズクに突然フーカが抱き付く。

理由は分からないがシズクは死ななかった。

かつて親友として仲良くしていた、だけどどうやっても死の結末に到達していた。

絶望の果てに諦めていたシズクが生きているのだ。

 

「えっ?えっ?えっ?フーカちゃん?えっ?」

 

抱き付かれたシズクは意味が分からない、元々そんなに仲が良い訳でもなく話したことも数回しかない、しかもゴンザレス太郎の件でむしろ苦手意識があったクラスメイトが突然抱き付いてきたのだ。

 

「えっと…なにこれ?」

 

ゴンザレス太郎はもっと意味が分からなかった。

 

 

 

その後、教師が来て解散となり、学校が終わった昼から3人で集まって話し合う事となった。

 

「まずはゴン太君、ごめんなさい!勝手に部屋から持っていった魔物のぬいぐるみを昨日泥棒に盗まれました」

 

シズクが謝罪をする。

その言葉を聞いて初めて部屋からぬいぐるみが無くなってる事に気付いたゴンザレス太郎。

 

「ぬいぐるみ?盗まれたのはおばさんのネックレスじゃなくてタツヤのぬいぐるみなの?!」

「タツヤ?」

 

フーカ、二人っきりの時以外は呼ばないようにしていたゴンザレス太郎の名前を呼んでしまう。

そんな中、部屋のぬいぐるみと聞いて何かが頭に引っ掛かっていたのだが…

 

「あっ!」

 

そこでゴンザレス太郎、ぬいぐるみの口の中に白金貨を入れたのを初めて思い出した。

 

「あのぬいぐるみ去年部屋に行った時に大切にしてたでしょ、本当にごめんなさい」

「あーうん、えっと…」

 

ゴンザレス太郎、フーカと仲良くなってからシズクと関わることが余り無かったので忘れていたが、やっぱりシズクが可愛いのだ。

口ごもってるゴンザレス太郎は置いておいて、シズクは話を変える。

 

「それでフーカさんはなんで突然抱きついてきたの?」

「あーうん、えっと…」

 

ゴンザレス太郎と全く同じ事を言って口ごもってるフーカにシズクは我慢できなくなり吹き出す。

 

「プッアハハハハなんなのよもー二人して息合いすぎだよもー」

 

結局詳しい事は全員が理解しきれずそのままお開きとなった。

でもこれで良かったのかもしれない、どうあれシズクの家族は全員無事だし、あなた本当は昨日死んでたとか言っても脅かすだけだし。

そう考えフーカは納得した。

そう、大切なのは自分がどれだけ足掻いても変わらなかった運命、それがゴンザレス太郎のお陰で変わったと言うことだ。

フーカはゴンザレス太郎なら自分も救える、救ってくれると信じるのであった。

 

 

 

 

 

一方その頃…

 

「な…なにかの間違いだ!ちゃんと調べてくれ!」

「そうは言っても、支払いにこんな薄汚いぬいぐるみを渡されて何をどう納得しろと言うんだ?」

 

薄暗い路地裏で屈強な大男二人を連れた商人風の男はゴンザレス太郎のぬいぐるみを手にしていた。

あれから二人は幾つかの店を巡ってぬいぐるみを売ろうとした、だがどの店もゴミとしか見てくれなかつた。

確かに自分達から見ても何処にでもある安物の古いぬいぐるみ、だがスキルがその価値を証明している…

なので仕方無くそのまま商人の所へ持ってきたのだ。

それもその筈、鑑定と言うスキルではその物の価値を見ることはできても、その中に入っているものまでは分からない。

だがこの男のユニークスキル『トレジャーサーチ』は箱の中であろうと壁の向こうであろうと射程圏内なら方向と価値を知ることが出来る、その為こんな食い違いが発生していたのだ。

 

「も…もう一度調べてくれ!」

「うるさい、連れていけ」

「ちゃんと調べてくれー!」

 

 

「ふんっこんなぬいぐるみが金貨100枚の価値のがある訳がないでしょ」

 

そう言って商人の男はぬいぐるみを捨てるのだった。

 

 

 

 

 

「あっ熊さんのぬいぐるみだ…」

 

それは路地裏に住む両親に捨てられた少女であった。

犬のような魔物なのだが、熊も魔物も見たこと無い少女にはそれが熊だった。

 

「落ちてるけど要らないのかな?」

 

そっと拾う少女。

 

「あなたも行く宛が無いの?私もなの…私サリアって言うの、ねぇ一緒に行こ?」

 

ぬいぐるみに話し掛け少女はそれを抱き締めて寝床にしている橋の下へ戻るのだった。


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