異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第23話 敗走、そして勝利への相談

「なんだと?!」

 

七志の投げつけたファイアーボールが空中で静止してそのまま消滅した。

明らかに異様な様子に硬直した七志、その隙を長兄は見逃さない。

 

「まずは跪け!」

「ぐぁっ?!」

 

その瞬間両足に痛みを感じ、背中が急に重くなった。

長兄とは10メートルほど距離が離れているにも関わらず不可視の攻撃が七志を襲ったのだ。

 

「ぐぁぁ・・・」

 

そのまま重さに耐え切れず七志は四つん這いになる。

すると背中に掛かっていた重さが消えた。

両膝もズキズキと痛むが、一体何をされたのか理解できない七志は冷や汗が流れるのを感じた。

 

「なん・・・だこれ・・・?」

 

再び立ち上がろうとすると背中に重圧が襲い掛かり、上手く立ち上がる事が出来なかったのだ。

その様子を見て長兄は七志を指差して大笑いする。

 

「ヒガッハッハッハッハッハッ!見事な土下座だな、お前はとりあえず俺を見上げてるんだな!」

 

そう言って長兄はリルとルリエッタの方へ歩を進める。

視線を反らした長兄に七志は四つん這いの姿勢のまま近くを飛び回っている火の玉を掴んでアンダースローで投げつける!

だが火の玉は長兄の直前で空中で停止してそのまま消え去る。

しかし、七志はそれを見逃さなかった。

 

「結界?いや、バリアか?」

「ほぅ・・・ご名答だ。初見で見抜くとは中々やるやないかお前」

 

一瞬、本当に一瞬だが火の玉を受け止めるように透明のバリアが出現し、火の玉を包み込むようにして消化したのが見えたのだ。

そして、四つん這いのまま自分の背後に何かが在るのを理解した。

周囲を飛んでいる火の玉がその空間に重なる時だけ水中にあるかのように揺らいだのだ。

 

「どないするんや?その姿勢のまま俺とやりあう気か?」

「そんな気は無いな!」

 

そう言ってナナシは火の玉を掴んで背中の何かに押し付けながら横へ転がった。

そうする事で七志は自らの胸くらいの高さに固定されていたバリアから抜け出したのだ。

 

「見事見事!」

「散々町中で四つん這いのまま生活している奴等を見たからな、多分そいつが張り付いて取れなくなっているんだろ?」

「そこまでこの短い間に見抜いたのか?!素晴らしい、ますますお前を仲間に欲しくなったぞ!」

「はっ言ってろ!」

 

そう言って七志は両手で残っていた火の玉を掴んだ!

そして、右手の火の玉を長兄に向かって投げつけ、直ぐに左手の火の玉も投げつける!

2つの火の玉は全く同じ軌道で長兄に向かって飛んでいき、前の火の玉が空中で静止する。

続いてその火の玉に追い付いた2個目の火の玉が1個目にぶつかって弾ける!

 

「ぐっ?!小賢しいマネを?!」

 

七志の狙いは目隠しであった。

長兄の視界を奪って七志はリルとルリエッタの手を取って逃げ出した。

このまま敵対していれば確実に負けると理解していたのだ。

だが・・・

 

「きゃあっ?!」

 

突然走っていたリルの悲鳴が上がった!

七志が振り返るとリルの下半身が固定されていたのだ!

 

「何処へ行くつもりだ?」

「くそっ!」

「七志!アンタはルリエッタを連れて今は逃げるんだ!」

「ミスリル・・・」

「こんな時にまで、まぁいい!私はアンタを信じてる、だから・・・必ず助けに来て頂戴よ!」

 

そう言ってリルは掴んでいた七志の腕を引き寄せてその頬にキスをした。

七志からしても年下の女の子を一人残して逃げろと言われて素直に頷くわけには行かない、だが右手をルリエッタと繋いでいる為に嵐の声が聞こえたのだ。

 

『逃げろ七志!このままじゃ3人ともやられるぞ!』

「くそっ!相棒なにか手段は無いのか?!」

『そんな余裕も無いだろ!今のままじゃ長兄には勝てない!さっさと・・・』

「いけぇー!!!」

 

そう言ってリルは七志とルリエッタを突き飛ばした!

そして、長兄の方を振り向いて懐から短剣を取り出して投げつける!

 

「無駄だ!」

 

長兄がそう言うと短剣は空中で何かに弾かれるように軌道を変え、回転しながら地面に落ちた。

しかし・・・

 

「ぐっ?!な・・・なんだこれは?!」

 

突然苦しみを訴えだす長兄、それは投げられた短剣についていた液体の効果であった。

聖水、それはギルドで販売していたアンデットにダメージを与える事が出来るアンデット避けのアイテム。

リルは七志が受付と話している間にそれを購入し、先程短剣を濡らしていたのだ。

 

「今の内に!」

「くっ・・・必ず助けに行くからな!」

「うん・・・待ってるよ・・・」

 

そう言って七志はルリエッタの手を引いて肩甲骨町を駆け抜ける!

そのまま町から門を通過して外へ出て更に走り続ける!

まさに砂漠の様な景色が続く中、七志は後ろで息の上がったルリエッタに気付いて足を止めた。

 

「な・・・七志さん・・・」

「ルリエッタごめん・・・くそっ」

 

そう言ってしゃがみ込んだまま地面を殴りつける七志。

町の人間の様子を見た感じ、四つん這いになるバリアを貼り付けられた者も殺される事なく生かされている。

その事から自分に執着しているリルを殺す事はないと考えていた七志であるが・・・

 

「そんな保障どこにもないだろ!」

 

再び拳を地面に叩きつける。

バフッと砂漠の砂が巻きあがり風に飛ばされていく・・・

敗北、それも全く手も足も出ずに逃げ去ったのだ。

そうなるのも仕方ないとルリエッタは考えていた。

だが七志は直ぐに気持ちを切り替えて思考を巡らせていた。

 

 

 

一方その頃、残されたリルは長兄に捕まって自らの後ろを歩かされていた。

足に貼り付けられたバリアは緩くされ、普通に歩く分には問題が無いようにされ、両手は罪人の様に前で固定されていた。

恐るべきはリルの口周りに固定されたバリアであろう。

長兄から一定以上の距離を離れるとバリアが口周りを囲って呼吸が出来なくなるのだ。

 

「お前は殺さへん、アイツ・・・七志って言うん?君が生きている限り彼はまた来てくれるやろ?」

「どうかな?アイツは私に出来ない事をきっとやってくれるからね!」

「まぁえぇ、俺は今はこの町から出れないからな。とりあえず七志を殺すまでは屋敷で飼ってやるよ」

 

そう言って長兄は自らの屋敷へリルを連れ帰った。

幸いだったのはアンデットである長兄にとってリルの体に対して性的欲求を持っていなかった事であろう。

何度もバリアを使って抵抗をしなくなるまでダメージは負わない形で苦しめられ続けていたのだ。

その結果、今のリルは疲れもあって抵抗を一切せず俯きながら長兄の後を付いて屋敷に辿り着いていた。

11歳とは言え冒険者として動いていた為なのか、大人びているリルは自分の体に何かされるかもしれないと身構えていたのだ。

 

「お前はこの部屋の中なら好きにするといいが・・・魔法だけは禁止だ。もし使えば・・・」

 

そう言って不可視のバリアをリルの顔面を包むように出現させる。

一瞬めまいを感じ恐怖に顔面が真っ青になる。

バリアに包まれたその瞬間呼吸は一切出来なくなり、視界は見えなくなったのだ。

直ぐにそれが解かれた事で直ぐに介抱されたのだが、その恐怖はリルに植え付けられた。

 

「七志・・・」

 

与えられた部屋のベットに横になり、リルは一人自らの唇に触れながら七志の事を思う・・・

頬とは言え初めてのキスを七志に捧げたのだ。

普段はシモネタもドンと来いなリルであるが、自分に関してだけは初心であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうするの?七志さん?」

「リルを助けに行かないとな・・・だけど今のままじゃ勝てない・・・」

 

どちらにしても砂漠の真ん中で悩める時間はそれほど長くは無い、砂漠は日が暮れると気温が一気に下がってしまうからだ。

それを理解している七志はこっそりと肩甲骨町へ戻る事を決めた。

出来るだけ今は長兄に会わずに町に入り、体を休めて万全の状態で戦いを挑みたいと考えていたのだ。

しかし、長兄に勝てる方法が一切思いつかない七志はもし長兄に見つかったら確実に殺されるのを自覚していた。

だからこそ見つからないように静かに肩甲骨長へ戻った。

 

「とりあえず今日はここに泊まるか・・・」

 

表通りを避け、裏通りをメインに進んだ先に在った古びた旅の宿、そこにルリエッタと共に入った七志は開いている部屋を借りて入った。

ルリエッタと2人で1部屋で、布団を2枚敷いたらスペースがなくなるくらい狭い部屋、そこでルリエッタは座り込み七志の目を見て自らの太股をポンポンッと叩く。

それが何を意味しているのか理解している七志は渋々横になり、ルリエッタの膝枕をしてもらいながら嵐と念話を開始するのであった。

 

「相棒、どうだ?何か良い方法はあるか?」

『うーんとりあえずあのバリアを何とかしないとな、ちょっと俺の方でも色々調べてみるわ』

「あぁ、それとちょっと考えた事があるんだが・・・調べてくれるか?」

『おぉっ別にそれは良いんだが・・・一体何を?』

「実はな・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 

「ってのはどうだろう?」

『・・・ありだな、むしろそれ使えるかも知れないぞ』

「どういう事?」

『さっきの戦闘を動画で確認したから気付いた事なんだが・・・・・・」

 

 

「なるほど、ならば今は決着をつける為にどうするかを考えないとな」

『とりあえず言葉だけで伝わったか?』

「おうバッチリだ、後は出来るだけ要練習だな」

 

そう言って七志はリルエッタに膝枕されたまま疲れからか目を閉じるのであった。

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