異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第25話 観測者の存在は反則であった

夜の肩甲骨町、その裏路地を手を繋いだまま駆け抜ける七志とルリエッタ。

 

『七志、その先左だ』

「OK相棒!」

 

ルリエッタと手を繋いでいる事で嵐から誘導され、七志は嵐の指示通りに動き回る。

入り組んだ裏通りだからこそ上手く追跡の手を逃れる為の罠も少しだけ仕掛けつつ動く七志。

翌朝になればその罠は直ぐに見つかって、誰にでも簡単に外されるようにしか行なっていないのは一般人が引っかからないようにしているからなのである。

簡単な骨で出来た路地に生えている草を結び、足が掛かるようにしたりするだけであるが、こういった細かな仕掛けは意外と有効なのである。

 

『七志、そこで待機だ』

 

嵐の指示で七志は建物の影に身を潜め、ルリエッタと共に様子を伺う・・・

そこへ夜でも目立つ白いスーツに夜なのにサングラスを装着した骸骨、死神3兄弟の次男『長兄』が配下を数名引き連れてやって来た。

それを影に身を隠したまま七志とルリエッタは動かない。

本来であれば相手の状況が分からないので覗く必要があるのだが・・・

 

『くっくっくっ・・・俺には丸見えだぜ』

 

そう、観測者として七志とその敵対する相手をリアルタイムの映像で観る事が出来る嵐が居るのだ。

その為、一度敵対して対峙すれば逃げても嵐は相手を補足し続ける事が出来る。

その結果、相手から見つからないように七志を声で誘導する事が可能となっていたのだ!

そして、嵐が今現在見ながら声で2人を誘導している光景はライブ配信でリアルタイムにユーデューバーにアップロードされていた。

 

 

:うぉぉぉおお!!まるであのゲームだ!

:こんなゲーム昔あったよな!

:志村後ろ!

 

ライブ配信されている動画サイト上ではリアルタイムに観覧者が増え続け、コメント欄が物凄い速度で流れ始めていた。

それをちら見しつつも嵐は的確な判断で七志を誘導していく・・・

途中でルリエッタを抱き締めろとかエッチな指示を出したら実行するかどうかと考えたりもしたが、後が怖いので控えた。

実行に移していたらコメント欄は更なる盛り上がりを見せたのは間違い無い。

 

『よし、ヤツは気付かずにお前達が泊まっていた宿に向かったぞ!』

「おっし、ルリエッタ行くぞ!」

「うん!」

 

互いに互いのスタート地点を目指して進む以上は何処かですれ違う必要があるのは必然。

となれば問題はどうやってすれ違いでバレ無い様にするかであったのだ!

 

「嵐、リルの居る場所は分かるか?」

『あぁ任せろ!しっかりと誘導するぜ!』

 

観測者である嵐は勿論リルの閉じ込められている場所をしっかりと見ていた。

逃げ出さないように定期的にその場所を長兄が訪れていたのが幸いし、嵐はリルの居場所と状況を完全に補足済みであった。

 

「このまま長兄の屋敷に突入するぜ!」

『オーキードーキー!俺のモニターできるのは今現在の長兄の周囲だけだからここからの敵の補足は不可能だ。見つからないように頑張れ!』

「あぁ、本当助かったよ」

 

そう言って七志は嵐との念話を切った。

そのままルリエッタと共に長兄の屋敷にまで到達し、入り口のドアを押し開ける!

 

ドガァチャン!

 

前に倒れたドアが大きな音を立てた。

七志、引き戸を無理矢理押し開けたのだ。

そのまま土足で屋敷の中へ踏み込み、嵐から聞いたその部屋を探し回る!

 

「何処だ?!そっちはどうだ?」

「違うみたい、赤いじゅうたんの部屋って言ってたよね?」

「あぁ、その部屋に檻が在って、そこに閉じ込められているって話だからな」

 

屋敷の中はもぬけの殻だった為にルリエッタと別れ無駄に広い屋敷内を2人で探し回った。

そして、ルリエッタが怪しい部屋を発見したのだが・・・

 

「えっ?あれっ?なんで・・・ドアが触れないの?」

 

手を伸ばしてもそこから先へ進めると何か不思議な力で押し戻される・・・

それは長兄が仕掛けた結界であった。

困惑するルリエッタは遠くに見えていた七志の姿を見つけ、大きく手を振って合図を送った。

ここまで誰とも在っていないのも不思議だが、声を上げるのだけは危険だと判断していたのだ。

そして、ルリエッタの行動に気付いた七志は駆け寄って来る・・・

 

「見つかったか?」

「この部屋がなにか変なの・・・」

 

そう言われ七志も手を伸ばすが、ドアノブに触れる直前で何か不思議な力にルリエッタ同様押し戻される。

それを見た七志は感覚で理解した。

そう、四つん這いのまま立ち上がれなくするあの結界と同じなのだ!

そして、それに気付いたのなら話は早かった。

 

「ファイアーボール!」

 

そう、長兄の結界は全て七志のファイアーボールに吸わせて消す事が出来るのだ。

そして、そのまま掴んだ火の玉をドアの方へ押し込むと何かが割れるような音と共に長兄の結界が崩壊した!

それに気付いたルリエッタは直ぐにドアノブに飛びついてドアを開ける!

そこは鉄の檻が部屋の中央に置かれているだけの非常に殺風景な部屋であった。

そして、その檻の中でリルが沈みながら座り込んでいた。

 

「ミスリル!助けに来たぞ!」

「リルちゃんもう大丈夫だよ!」

 

駆け寄った七志は牢の錠前をファイアーボールを押し付けて壊し、リルに近寄ろうとした時であった。

 

『待て七志!罠だ!』

 

嵐の叫ぶ声が響いた。

だがそれは既に遅かった。

七志が一歩近付いたと同時にリルは自らの喉を押さえつけて突然苦しみだした。

声も出せず悶え苦しむその姿にルリエッタは気が動転してあたふたとし始めるが、七志は違った。

 

「相棒、結界の箇所分かるか?」

『あぁ、良く聞けよ相棒。顔面の前と後頭部と喉だ』

それを聞いて七志は近くにまだ浮いていた火の玉を掴んでリルの顔へと近付ける。

それを見たリルは恐怖に震える、それはそうだろう、今さっき牢屋の錠前をファイアーボールを押し付ける事で壊したのを見ていたのだ。

 

「大丈夫!俺を信じて!」

「・・・・・・うんっ!」

 

そう答えてリルは笑顔を見せると共に両手を広げて七志の行動を見詰める。

自らキスをするほど認めた男に今、自分は助けられている・・・

そう考えてリルは目をそらさないようにと心に決めて七志が結界を解除していくのを見守っていた。

 

バーン!

 

一際大きな音を立ててリルにくっ付いていた結界を破壊した・・・

しかし、この音は流石に大きすぎたのか。

誰も居ないと思っていた屋敷内に複数名の気配を感じた。

 

「やっぱり居るよなぁ~」

 

七志のその言葉通り、部屋を出た3人を囲むように武器を構えた者達が集まってきた。

 

「ここを長兄様の屋敷としっての狼藉か?!」

「後ろの女!お前は牢に戻れ!」

「あっかんべー!!!」

 

リルの挑発であったがまるで興味が無いかのように屋敷を守るものは動揺せず、その中の一人が長兄を呼びに駆けて行くのが見えた・・・

それに気付いた七志は突破を試みるのであった。

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