異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第27話 ナナシvs執事

「半分だけ・・・骸骨?」

「珍しいでしょ?多分この区でも私だけですよ」

 

そう言って右手を振りぬかれた。

3人は全く反応できず、後ろから聞こえた音に振り返る。

そこには食事に使うものであろうナイフが突き刺さっていた。

 

「そのままそこで大人しくしていていただければ手荒な真似はしませんが」

「断るって言ったら?」

「骨の何本かは覚悟してもらいます」

 

ルリエッタとリルは小さく震えながら半分骸骨の執事を見詰める。

そんな中、七志は2人の手を握ってやってから一歩前へ踏み出した。

 

「2人には手を出さないと約束しろ」

「ほぅ、私とやる気ですか?」

「約束してくれるのならな」

 

七志の言葉に愉快そうに肩を揺らして執事は頷く。

 

「いいでしょう」

「よし、それじゃあ・・・ぐべっ?!」

 

そこまで言って七志は両手を前に突き出して執事の方へ魔法を使用しようとしたが、次の瞬間頬に衝撃を受けて後ろへ吹っ飛ぶ。

余りにも早すぎて七志は反応出来なかったのだ。

床を転がり今の一撃で脳を揺らされたのか、立ち上がる事が出来ない七志。

四つん這いの状態から立ち上がろうとするのだが、膝が笑って立ち上がる事が出来ないでいるのだ。

そんな七志に執事は七志が立っていた場所へ歩いていきそれを拾う。

 

「意識が残っていたのは驚きましたよ」

 

そう言って床から拾い上げたそれは自らの骨の左手であった。

手首から先だけの左手を腕につけ直して手を握り、手が動くのを確認して執事は七志に駆け寄る2人を見る。

肩を借りてなんとか立ち上がる事が出来た七志、その様子を見て戦闘続行は不可能であろうと執事は考えていたのだが、突然七志が含み笑いを始める。

 

「くくくく・・・」

「ふむ、当たり所が悪かったのですかね?」

「いんや、良いパンチだったよ。効いた~」

 

そう言って殴られた頬を撫でる七志であるが、その表情に違和感を覚える執事。

それはそうだろう、七志は執事の攻撃に相手は全く対処が出来ないのにも関わらず、随分と余裕を見せているのだ。

 

「随分と余裕を装っているように見えますが、貴方に勝ち目はありませんよ?」

「それはどうかな?お前は今、重大なミスを犯している事に気が付いていないんだよ」

「重大なミス?」

 

七志の言葉に首を傾げる執事。

 

「お前さっきした約束を早速破っちまったんだからな」

「へっ?一体何を言って・・・」

「2人には手を出さないと約束するって」

「・・・言いましたが」

「つまりお前は約束を破って手を出したわけだ。文字通りな!」

 

そう七志に指摘されて頭に『?』が浮かぶ執事であるが、一歩前に出たリルを見て固まる・・・

 

「ま・・・まさか・・・貴様」

「そうさ、俺は2人って言っただけで、誰と誰とは言ってなかっただろ?俺とルリエッタの事なんだよ」

 

その指摘に執事は唖然と固まるが、肩を揺らして再び笑い出した。

 

「ははははっ!何を言い出すのかと思ったら、貴方は馬鹿なのですか?」

「そうなのかもな」

「約束を破った。えぇ貴方の理屈でしたらそうでしょうとも、ですが私の目的は達成できそうなので問題ないでしょう」

「はははっ約束一つ守れねぇのかよ」

「敗者の戯言に付き合う暇は無いのですよ」

 

執事はそう言ってまた一歩七志へ近付く。

七志は肩を貸してくれていた二人を後方へ押し、執事の前へ再び立ちはだかる。

その七志の腹部に執事の拳が叩き込まれた!

 

「ぐはぁっ?!」

 

体をくの字に曲げて腹部を押さえながら床を転がる七志。

今の一撃、魔法でもなんでもない単なる拳の一撃で、七志は完全に戦闘不能の状態に叩き込まれてしまったのだ。

だがそれでも七志は愉快そうに執事を床から見上げる。

 

「その・・・目を止めろぉ!!!」

 

床に倒れている七志目掛けて執事の革靴が蹴り下ろされる!

だが・・・

 

「もらったぁ!」

 

七志の叫び声、それに驚いた執事。

それはそうだろう、どう見ても満身創痍の状態で剣を本当に振れるのか分からない状態の七志が一体何をするというのか。

そんな執事の予想を完全に裏切って七志は振り下ろされていた足を掴んだ!

いや、正確には手の中に在ったソレを当てたのだ!

その瞬間執事の足が付け根から弾け飛んだ!

 

「なぁ?!」

 

驚き倒れた片足の執事に飛び掛る七志!

慌てて迎撃を行なおうと拳を振るのだが、そこに七志の手が在った。

執事の攻撃速度は速すぎて眼で追えないが、来る場所が予測できたからこそ七志は行動する事が出来たのだ。

 

パァッン!

 

破裂音と共に執事の片腕も吹き飛び、七志も衝撃で後ろへ転がる。

だが執事の方のダメージは深刻で、片腕片足が無くなった状態では立ち上がる事すら困難であった。

 

「勝負・・・ありだな」

 

ヨロヨロっと立ち上がった七志、七志の方のダメージも深刻なようでかなり辛そうであるが、動けるだけ有利な状況である。

そして、七志は小さくブツブツと口にしてそれを手の中に出現させる。

そう、七志の詐欺魔法『ファイアーボール』である。

 

「私の・・・負けですか・・・」

 

全身の力を抜いて倒れこむ半分骸骨の執事。

七志は手の中に出現させたファイアーボールを握り潰して告げる。

 

「俺達の勝利だ」

 

そう言ってオロオロと七志と執事を見詰めるルリエッタとリルに、七志はウィンクをするのであった。

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