異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第29話 追いついてきた長兄

翌朝、日が昇り始めた時間帯に七志達は乗合馬車に乗り込む為に移動していた。

意識の無い少女エリは七志が背負い、半身が骨のナポレは何度も何度も七志に感謝の言葉を告げながら歩く。

片足が無いので杖が無ければ歩けないのだ。

 

「皆乗ったな?よし出発して下さい」

「あいよ!」

 

全員が乗り込んだのを確認し、七志の声で乗合馬車は町の外へ向けて走り出す。

目指すは尾骶骨町のスマイル館だ。

しかし、そう上手く行く筈がないのが現実である。

 

「そこの馬車停まれ!!」

 

町から少し走ったところで複数人の男が馬車の道を塞ぐ。

慌てて馬を止めた馬車から身を乗り出して舌打ちをする七志。

そう、七志はルリエッタと手を繋いで嵐と連絡を取り長兄の現在位置は把握していたのだが、その仲間までは行動が見れないのだ。

 

「おい裏切り者ナポレ!居るんだろ?それに七志とか言う小僧はお前だな?」

「人違いじゃないですか?僕の名前は匿名希望、旅人なのですよ」

「はっ!そんな嘘が通じるとでも思ってるのか?」

 

そうしている間に馬車を囲みだす男達。

やれやれと言った感じで七志は1人馬車を飛び降りた。

 

「はぁ・・・下らない喧嘩はしないようにしているんだけど、降りかかるキノコは振り払わないと駄目みたいだな」

「七志さん、キノコじゃなくて火の粉です」

「あっお前?!」

 

突っ込みを入れる為に顔を出したルリエッタ。

その顔を捕まえた時に見ていた男がルリエッタを指差して叫ぶ!

七志の作戦が台無しである。

 

「ちっやるしか無いか・・・」

 

そう言って腰を落として素手で構える七志。

馬車を囲む男の数は20人は居る、それぞれが武器を所持しているにも関わらず、素手で構えた七志に異様な恐怖を感じる男達。

圧倒的に不利な状況にも関わらず余裕を見せる七志の雰囲気に呑まれたのだ。

 

「一つだけ言っておく、俺のHPは滅茶苦茶低い」

「「「「はっ?」」」」

「お前達の攻撃で直ぐに死んでしまうのは間違いないだろう、だが・・・お前達が受けた指示は生きたまま捕らえろだろ?」

「あ・・・あぁ・・・」

「俺達はこのまま進む、もし止めようとして攻撃されたら一番に即死する自信が俺には在る!」

「・・・・・・」

 

一体コイツは何を言っているんだ?と誰もが唖然と七志の言葉を聞き続ける。

決して嘘では無いのだ。

七志の最大HPはこの場に居る誰よりも低く、武器攻撃をまともに受ければ即死は免れない。

七志が一体どうやって長兄の結界魔法を解除しているのか長兄には分からず、昨夜命令を出す時に「絶対に生け捕り」と指示していたのがルリエッタを通して嵐から教えられていたのだ。

長兄は町の住人を結界魔法で縛って脅迫と言う行為で立場を得ていた。

なので自分の魔法を消せる七志を警戒していたと言うのもあった。

だからこその指示だったのを七志は逆に利用したのだ。

 

「動くなよ・・・死ぬぞ・・・俺が死んじゃうぞ・・・」

 

そう言いながら両手を上に万歳のポーズで馬車の前を歩く七志。

自分を人質にするというとんでもない方法で包囲を突破した七志ではあるが、男達もそのまま逃がすわけにはいかない。

取り押さえて捕まえようとするのだがその足が止まる。

 

「追いかけて来るようでしたら、殺しちゃいますよ!」

 

なんと乗合馬車の運転手が七志に向けて鞭を振る!

その鞭は七志の直ぐ横を通過して地面をピシンッという音と共に叩く。

この鞭の一撃だけでも七志は即死するかもしれない。

そう一度考えてしまえば誰もが七志を捕らえようとも出来なくなっていた。

 

「それじゃ長兄に宜しく言っといて」

「ぐっ・・・」

 

そう言い残して七志は再び走り出した馬車の荷台に飛び乗った。

このまま男達を引き離して逃げようとしていたのだが・・・

 

「っ?!」

 

突然馬車の前の地面が破裂した!

ルリエッタと手を繋いでいた七志の二人だけは嵐から『追い付かれた』と告げられていたので落ち着いていたが、他の面々はパニックであった。

 

「おいおい、ワシの事置いていくなんて酷いやないか」

 

停まった馬車から嫌そうな表情を浮かべたまま七志が下りてきて声の主と向き合う。

そう、男が走って告げに行った男死神3兄弟の次男『長兄』がそこに立っていたのだ。

 

「さぁ今度こそきっちりと型に破目たるから覚悟せいや」

 

そう言うスーツを着た骸骨は内ポケットから葉巻を1本取り出して口に咥える。

骸骨が喫煙するのか?と唖然と見ていた七志は顔を振って馬車から飛び降りる。

 

「今日のところは営業時間前って事で見逃してもらえないかな?」

「あかん、お前はワシの顔に泥を塗った。ワシ等はな・・・舐められたらあかんのや!」

 

そう言って長兄が手を翳すと馬車の運転手が悲鳴を上げながら腰を屈めた。

いつもの結界魔法で拘束したのだ。

 

「仕方ないな、やるしかないんだな!ファイアーボール!」

「そうや、お前は調子に乗りすぎた。きっちり地獄みせたるわ!!!!」

 

臨戦態勢をとった七志の周囲に人魂が数個浮かぶ。

そして、長兄も七志に向かい合った。

 

「先に言っておいてヤルわ、お前じゃ絶対俺には勝てん!」

「それはやってみないと分からないだろ?」

 

そして二人の戦いが始まる・・・

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