異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第32話 不発の水魔法と相棒との通信

「とりあえず、この格好はなんとかしないと不味いですよね・・・」

 

通路を出て屋敷を歩く七志とナポレ。

ナポレは半身が縦に半分半裸である、腰に布を巻いているので大事な部分は隠れているが・・・

長兄の結界を使った特殊な方法で半身だけ骨にされても生きていたナポレ、長兄に言われた通りくっ付けたら元に戻ったのだが、その際に執事服も体内に取り込まれてしまっていたのだ。

 

「私の執事室に着替えが残ってるかもしれませんから、寄っても宜しいですか?」

「もちろん」

 

建物の入り口に待つ美少女二人に半裸の姿を見せるのはナポレも気にするので、二人は執事室へ向かう・・・

そこは金目の物は一通り奪われた強盗にでも在ったような状態であったが、数着だけ執事服が残されていた。

 

「すみません、ちょっと着替えるのでお待ち頂けますか?」

「ごゆっくり~」

 

そう言って執事室の前で待つ七志、その間に自身が先程インストールした水魔法を軽く使用しようとしてみる・・・

 

「黒の魔法、水の力よ我が手より生命の源となる水の奇跡を!ウォーター!」

 

だが手の平に魔力が通う感覚はあるのだが、何も起こらずガッカリする・・・

そもそも七志はこの区に入ってから普通に魔法が使用できなかった、それを解消する為にファイアーボールの中に魔法を込めて使用する方法を編み出していたのだが・・・

 

「火の中に水を入れるのはちょっとな・・・」

 

ナナシはそう言い溜め息を吐く・・・

それは仕方ないだろう、水を出すために火の中に水を込めれば火が消えるか水が蒸発するだけである。

下手をすれば水蒸気爆発と言う事もありえるのでその方法を普通に考えれば使う事は出来ないのである。

そしてなにより・・・

 

「なんかまた違うんだろうな・・・」

 

詠唱を行なった時に流れた魔力の動きが何かを出現させるような感覚ではなく、押し留めるような感覚だったのが気になっていた。

ウォーターの詠唱に関してはインストールした際に頭の中に浮かぶようになっていたので間違いではない筈なのだが・・・

ファイアーが火を起こす魔法ではなく、時間を焼却する魔法だった。

ヒールが回復魔法ではなく、自然治癒力を高めてカロリーを超消費して餓死させる魔法だった。

となればウォーターは一体どんな魔法なのか・・・

そんな思考を巡らせている間にナポレは着替え終わったようで部屋から出てきた。

 

「お待たせしました」

 

初めて対峙した時と同じ姿のナポレの姿に苦笑いを浮かべる七志。

色々在ったがこうして無事に長兄も倒せ、死神3兄弟は残すところ長男のカーズだけである。

だがその後ろに居る謎のこの区のボス『死神将軍』が居る事から七志は無理して関わるつもりは無かった。

スマイル館に戻って今後の事を相談し、金で見逃してもらえるのであればその方向で話を持っていくつもりだったのだ。

カーズに関しては兄弟を倒された復讐を考えられるかもしれないが、少なくとも七志の方から手を出す気は全く無かった。

そう、この時までは・・・

 

 

 

 

「おっ!無事に戻れたみたいですね!」

「流石七志さんです」

 

建物から出た七志とナポレにルリエッタとリルが駆け寄って来る。

特に問題も無く、屋敷を漁っていた人々と軽く雑談なんかして暇を潰していたのだ。

チラリと七志が視線をやるとペコリと頭を下げる者が数名、どうやら七志が長兄を倒してこの町を救った事を知っているか、結界を解除されて助けられた人の知人であろう。

長兄が倒れた事で結界魔法の効果は徐々に弱まっている事が雑談の中で判明し、それを伝えられた七志とナポレは顔を見合わせる。

そう、半身の回収が間に合わなければナポレは死んでいた可能性があるのだ。

いや、七志が腐った半身を戻せなければ、どちらにしてもナポレに待つのは死だけであったのだ。

 

「七志様、本当に・・・ありがとうございます」

 

涙声になりながらナポレは感謝の言葉を発する、それは自身の命を救ってもらった事に加え、娘を悲しませずに済むと言う事も込められていた。

七志はそんなナポレの背中をポンッと叩き1度頷く、その軽さに再び涙を流しながら感謝するナポレ。

 

「あっそだルリエッタ、ちょっと手借りて良い?」

「あっはい」

 

七志の言葉にルリエッタは左手を差し出す。

嵐との交信を理解したルリエッタは七志が握り返した手を繋ぎながら歩き出す。

 

「むぅ・・・やっぱり仲良すぎない?」

「そんな事ないよぉ~」

 

手を繋ぐのには理由がある、だがリルにも七志はまだ嵐の事を伝えていなかった。

別にバレる事に問題は無いのだが、出来れば知っている人間は最小限に留めておきたかっただけである。

そして、七志は嵐に自分のステータスを見てもらおうと考えていた。

水魔法ウォーターが使えるようになった事でその魔法の詳細が知れるはずだからだ。

だが繋がった通信から聞こえた言葉に七志とルリエッタは驚くのであった・・・

 

『大変だぞナナシ!スマイル館が襲撃を受けている!相手は・・・変な杖を持った骸骨1人だ!』

 

その容姿を聞いて想像が付くのは1人しか居なかった。

死神3兄弟の最後の一人、カーズである。

 

「急いで戻ろう!」

「うん!」

 

七志とルリエッタが走り出したのに慌てて追いかけ始めるナポレとリル。

 

「ちょっと一体どういう事よ?!」

 

一行は乗合馬車へと走るのであった・・・

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