異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第33話 破壊されたスマイル館

乗合馬車に揺られる最中、七志はスマイル館が襲撃を受けている事を話していた。

何故分かるのか、その疑問に答える事は出来ないので七志の魔法だと言う事にしたのだが・・・

 

「流石七志様、この区でそんな魔法まで・・・」

「はぁ・・・もうあんたの滅茶苦茶さは慣れたわよ・・・」

 

七志に陶酔しているナポレと、七志の詐欺魔法をまともに考える事を放棄したリルはすんなりとそれを受け入れていた。

その間も七志はルリエッタと手を触れ合わせ、口頭で嵐から現在の状況を受け取っていた。

 

『今のところ被害は建物だけだ、不思議な道具に両手を拘束されたスマイル館の面々は夢遊病患者の様に真っ直ぐに外へ出て行っている・・・』

 

死者は居ない、それが分かっただけで七志とルリエッタは一安心していた。

建物は壊されても七志の金を使えばどうとでもなる、怪我も七志の魔法で死んでなければなんとかなる。

なにより焦っても乗合馬車が早く到着する訳ではないのであった。

 

「襲撃の人数は・・・1人みたいだ」

「もしや杖を持っていたりしますか?」

「ん?あぁそうみたいだけど・・・ナポレ誰か思いつくの?」

 

嵐から伝えられた杖を持って不思議な現象を次々と引き起こしている骸骨、おおよその見当は付いているのだが・・・

 

「でしたら多分・・・死神3兄弟の長男カーズでしょうかね・・・」

「やっぱりそうだよね・・・」

 

死神3兄弟の最後の一人、そう考えればどんな異様な能力を持っているのか考えるだけで恐ろしい・・・

三男の六郎は制空剣と言う、自身から一定範囲に入った物を手にした剣で無意識下で切断する能力。

次男の長兄は結界魔法と言う、特殊な設置も出来る特殊な魔法能力。

そう考えれば長男であるカーズは一体どんな能力を持っているのか・・・

次々と嵐から伝えられる襲撃者が使う能力に一貫性が全く無いのが恐ろしい・・・

 

「はぁ・・・なんにしても戦うしかない・・・か」

『このままだとそうだろうな、それはそうと相棒なにか新しい魔法を覚えたみたいじゃないか』

「あっ?!」

 

突然声を上げた七志に視線が集まる、だがそんな事を気にする事も無く七志は嵐からの言葉に耳を傾けていた。

しかし、それは理解に苦しむ魔法であった。

 

「力学に作用するって・・・しかも使い道が・・・」

 

ナナシは1人呟く・・・

一体何をしているのか分からないが、今は声を掛けないほうが良いと判断したナポレとリルは外の景色に視線を向けるのであった・・・

 

 

 

 

 

 

「これは・・・酷いな・・・」

「一体どうやったら1人の手でこんな事が出来るのよ・・・」

 

尾骶骨町に戻り、スマイル館が在った場所に戻ってきた一行はそこで立ち止まっていた。

そこに在ったのは建物の残骸・・・ではなく建物自体が半壊の状態で逆さまに建っていたのだ。

そう、屋根が下になっているのだ。

 

「中にはもう誰も居ないみたいですね・・・」

「そんな事が分かる魔法も使えるのですか・・・」

 

探知魔法かとナポレは驚くが、実際はスマイル館の中を観る事が出来る嵐からの通信であるのは秘密である。

そして一行は入り口に彫られたメッセージに目を向ける・・・

 

『仲間を助けたかったら我が城までやってくるがいい  死神3兄弟カーズ』

 

グッと拳を握り締めた七志は踵を返して移動を始める。

それは誰の目にも七志が暴走しているのだと思わせた。

 

「まっ待ちなさいよ七志!」

 

慌ててリルがそれを止めようと走る。

1人で行かせるわけにはいかない、何より我を失って怒りに飲まれたままでは勝てる勝負も勝てなくなるからだ。

幾らここから丘の上の城まで距離が在るからと言っても、今すぐに行動を開始するのは愚作なのは間違いない。

あの城へ登る為の入り口がある町『十二指町』は死神将軍が支配する町である。

一度入れば二度と出る事が出来ないと言われているのは周囲の人々から既に聞いていた。

だが七志はリルの静止を振り切って真っ直ぐに進む。

そして、そこへ足を踏み入れた。

 

「すみません、1泊宜しくお願いします」

「はいよっ4名様で銀貨40枚です」

 

そこは宿屋であった。

唖然と立ち尽くす3人に向かってハッキリと告げる七志。

 

「まずは体を休めて作戦を練ろう」

 

意外と冷静だった事に驚きつつ、七志と共に部屋で打ち合わせを行なう一行。

特に七志は今朝長兄と戦った疲れがそのまま残っていたのである。

そのため、この日はここで1泊する事となったのであった・・・

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