異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第34話 十二指町に到着、そしてイキナリの戦闘

「七志・・・あんたどういうつもりなの?」

 

リルが手にしたパンを突きつけるように七志に問いかける。

すっかり夕日が沈み、外は暗くなっている時間である。

スープをゴクリと飲んだ七志は首をかしげて問い返す。

 

「何が?」

「何が?じゃないわよ!今日で3日目よ?!」

 

そう、戻ってきてスマイル館の変わり果てた姿を見てから1日目は体を休める為に宿に泊まった。

それはまだいい、長兄と戦った疲労の回復もあったのだろうから・・・

だがそのまま結局買い物をしたりするだけで何もせずの3日間、同じ宿に泊まっているのだ。

 

「まぁまぁ、エリちゃんも入院したままだからナポレさんは離れたくないだろうし」

 

七志の言葉に視線をナポレに向けるリル。

初日に宿を取って直ぐに意識の戻らないままのナポレの娘、エリは診療所に入院させていたのだ。

不思議な事に眠っている間は食事の必要が無いらしい、ある意味仮死状態なのかもしれない・・・

 

「ありがとうございます七志様、ですがリルさんの言うとおりそろそろ行動を起こされては?」

「いいんですか?」

「娘の事を気にかけて頂けてるのはありがたいですが、 連れ去られた方々の事を思うと・・・」

 

ナポレは昨日も似た様な会話をしていたが何も言わなかった。

今日一日で踏ん切りが付いたのだろう、もしも七志が負ければ娘と二度と会えないかもしれないのだ。

 

「わかった、明日の朝出発しよう」

 

七志のその宣言に3人は頷き返す。

死神3兄弟の長男カーズとの決戦の日は近い!

 

 

 

 

 

 

翌日出発した4人は馬車に揺られ、十二指町近くの洞窟まで来ていた。

 

「お前達本当にあっちに行くのか?」

「えぇ、ここまで乗せてもらってありがとうございました」

「まぁ貰う物は貰ったからこれ以上は何もいわねぇが・・・」

 

ヒゲの濃い小柄なおじさんは言い辛そうに七志にそう伝える。

十二指町は死神将軍の管理している町、中に入れば殆どの人間は外へ出る事が出来ない、誰もが知っている程有名な話である。

奴隷商人等の一部の者だけが出入りを許されているその町を見詰めながら七志は足を踏み出す。

 

「おじさんありがとうございました」

 

ルリエッタもお礼を告げ、七志の後を小走りで駆けていく・・・

リルとナポレも頭を下げ移動を開始した。

その後姿を見詰めながらおじさんは自分の仕事の為に洞窟の中へと発掘に入っていく・・・

 

 

 

 

 

 

「ここが十二指町・・・なんで門の中に門が在るんだ?」

「あれが出れないと言う所以ですよ」

 

七志の言葉にナポレが答える。

十二指町は山沿いの周囲を門で囲われた町である。

門の中に更に門が在り、外壁が2重になっているのがそれでよく分かった。

門番は居らず扉は押せば簡単に開く事が出来る・・・

そして中に入れば直ぐに出れない理由が分かった。

 

「こっち側からは開けられないという訳か・・・」

 

驚く程門はまっ平らな扉で掴んだり引っ掛けたりする部分が全く無い、なので押すことしか出来ないのである。

そして、反対側からは押すことが出来ず、2つの門が連動している為に中側の扉だけを開ける事は出来ない・・・

来る物は拒まず出ることは許さない、まるで食虫植物の様な扉の仕様に恐怖を感じながら町の中へ入った一行・・・

だが直ぐに目を背けたくなるような光景が広がっていた。

死体、死体、死体・・・

まるでここから逃げ出そうとした人々が何かに命だけ奪われたように、扉の方へ向かって倒れたまま死んでいたのだ。

その誰もが外傷らしい外傷が見当たらず、死んで間もない様子が見て取れた。

 

「これはこれは、お待ちしておりました七志様」

 

突然正面から聞こえた声に4人は構える。

そこにいつの間にかウサミミが生えた骸骨が立っていたのだ。

骨からウサミミが生えている・・・

全く意味の分からないその生物は七志の名を呼んだのだ。

 

「皆様をお連れするようにとカーズ様より承っております。どうぞこちらへ・・・」

 

そう告げられ案内をされると思った瞬間、そこに黄色いドアがあった。

先程までそんな物は無かった筈、より一層意味が分からない一行は警戒心を強めるが、気にした様子も無くウサミミ骸骨は・・・

 

「これは魔道具、何処へでもドアと言いましてこの町を守護するガーディアンと繋がっております。皆さんには今からそのガーディアンと戦って貰いましょう」

 

そう言って扉が開かれる。

それを見て誰もが目を疑った。

ドアの中は森だったのだ。

そしてゆっくりとそいつは姿を現した。

大型犬サイズの獣、だが異様なのは全身から黒い瘴気の様な物を放出している事だ。

 

「ほほほっ、この子はカーズ様の可愛いペットであるクジン、生き物の魂を喰らう魔物です。暫く餌を与えていなかったので腹を空かせていますよ~」

 

ウサミミ骸骨の台詞を聞いて誰もが絶句した。

特に実体があやふやなのか、全身が揺らいで見えるその姿にリルの全身から一気に汗が噴き出す。

一目見て物理攻撃が効かない上に魔法にも耐性が在る事が直感で分かったのだ。

 

「七志・・・あれ・・・ヤバイよ・・・」

 

チラリと周囲に倒れている死体を見て、魂が喰われた者の成れの果てと理解したリルは一歩下がる・・・

それに反応したクジンと呼ばれた魔物が飛び出した!

犬同様、逃げた者に襲い掛かる習性があったクジンはそのままリルの魂を喰おうとしたのだが・・・

 

「ファイアーボール・・・そしてヒール!」

 

七志がクジンの走る先にその魔法を置いた。

そして、クジンはそれに触れて・・・そのまま地面に崩れ転がる。

そのままクジンは動かなくなり絶命したのである。

 

「はっ?」

 

ウサミミ骸骨から裏返った声が出るのも無理は無いだろう。

たった1発の七志の魔法でクジンは絶命したのだ。

七志の魔法ヒール、それは自然治癒力を高めてカロリーを超消費して餓死させる魔法。

飢えていたのが死んだ一番の要因なのだが、七志の魔法が理解できないウサミミ骸骨は七志に恐怖する・・・

どう見ても魂を喰らう魔物の魂を逆に喰らった様にしか見えなかったから・・・

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