「そ、そんなバカな…」
ウサミミ骸骨が変化の無い表情で驚愕の声を上げる。
それはそうだろう、クジンは半精霊体の魔物である。
物理的な攻撃はあまり効果もなく、魔法を使った攻撃には体から放たれる瘴気が阻害をする。
しかもこの区では闇属性の魔法以外は本来使用できない筈なのだ。
無敵とは言わないが、それに近い魔物だった筈なのにこれ程容易く対処されるなんて思いもしなかったのだから仕方ないだろう。
「まっ!お待ち下さい!私はまだ…まだぁー!!」
突然叫び声を上げだしたウサミミ骸骨、しかしその足元に広がった魔方陣の効果なのだろうか、瞬時にその姿は消え去った。
「なっ何がどうなってるの?」
『見させて貰ったぞ強き者よ』
リルが呟いた言葉に答えるように何処からか声がした。
いつの間にか黄色い何処へでもドアは消え去っており、次々と起こる現象に四人は目を疑った。
今さっきまで門を潜った所に居た筈なのに今、目の前には山道が続いていたのだ。
「集団強制転移ですか…」
ナポレが自分達に起こった現象に驚きながら周囲を見回す。
山の上には死神将軍が居るとされる城が見えており、後ろには十二指町の建物が見えている。
それを確認し進むべきか七志の意見を聞こうと視線を向けるが…
七志は町へ向かってルリエッタの手を引いて歩いていたのだ。
「ちょっ!七志何処へ行くのよ?!」
「ミスリル、よく考えろよ。どう考えても罠だろ?それに俺は疲れたから宿を取って寝る!」
「「………」」
ミスリルと言われた事に突っ込みを入れる事も忘れ、ナポレと顔を見合わせる。
だが自分達だけで向かった所でどうにもならないのは目に見えている。
「はぁ…アイツと居ると真面目に考えているのが馬鹿馬鹿しくなるわね」
「そうですね、それでもあの方の行動には必ず意味があるはずです」
ナポレの言葉にリルも少し考えて追い掛けるように付いていく…
そうして四人は謎の声を無視して十二指町の宿へ向かうのであった。
一方その頃、死神城の一室に鎮座するカーズは水晶玉に映し出される光景に怒りをぶつけていた。
「なっなんなんだこいつは?!」
それはそうであろう、スマイル館を襲撃し全員連れ去ったその日、七志はスマイル館に戻って状況を確認しメッセージも見た。
にも関わらず出発したのはその三日後、そしてようやくこの町までやって来て、自分達の秘密兵器とも言える魔物をけし掛けた。
だが予想外に七志の魔法によって瞬殺された。
だが全てはカーズの計画通りであった。
七志は異常な力を持っている筈、そうでなければ二人の弟が倒される筈はないと考えていたからだ。
そして、魔物への対処法を確認することで七志の手の内を暴きその対策も完璧に行った…のにこちらへ向かわずにUターンされたのだ。
「だ、だがここへ来るのも時間の問題…な筈だ!」
そう言って水晶玉に映る映像を見た…
『四名様で一泊金貨40枚です』
閉鎖された十二指町では全ての物が異常な値上げをされていたのだ。
金貨40枚、実に日本円で400万円が宿の一泊の値段なのだ。
にんまりと金がなくて困り城を目指すと考えたカーズであったが…
『とりあえず一週間お願いします』
そう言って迷う事無く、何処からか出した大量の金貨を積み上げる七志の姿に骨の開いた口が塞がらないままカーズは固まるのであった。