「美味しいねミスリル」
「・・・」
宿の食事を4人で食べている七志一行。
カーズの待つ死神城の麓にある十二指町までやって来て、いよいよ最終決戦か!
と思った直後に踵を返して宿に泊まる事になったのはまだ分かる・・・
だが法外な料金を提示されたのにも関わらず、七志は1週間分の宿代を前払いしたのだ。
宿側は勿論代金さえ支払ってもらえるのであれば問題なく快く承諾してくれたのはまだ良い・・・
泊まる人間なんて殆ど居ないのだから当たり前である。
だが・・・
「ねぇ七志、本当に1週間ここに泊まるの?」
「どうしたんだいミスリル?そんな真剣な顔をして。俺に惚れた?」
「なっ?!ば・・・馬鹿言わないで!それよりもその手は何なのよ?!」
リルが突っ込みを入れるのも仕方ない、七志の左手はずっと横に座るルリエッタの膝の上なのだ。
どう見てもセクハラです、本当にありがとうございました。である。
「ルリエッタも何か言ったらどうなの?」
「いや・・・私は別に・・・」
そう言うルリエッタは頬を赤く染めつつも何処か嬉しそうな感じである。
その表情に込み上げてくる感情、リルは自分で理解をしていた。
唯でさえ七志には心を奪われているのだが、窮地を救われた事で完全にデレていたのだ。
だがルリエッタと手をつなぎ続けている七志に嫉妬して本心は決して見せていなかった。
「とりあえずミスリル、今日は疲れたからゆっくりと休もうぜ」
「・・・はぁ、分かったわよ」
食事中というのもあり、リルはそれ以上の突込みを止めた。
何を言っても無駄だろうと考えたのもあるが、七志の行動にはきっと理由があると考えたからだ。
それでも心のどこかでは七志とルリエッタは既に出来ていて、離れたくないからああしていると言う考えが離れない。
七志は自分が惚れる程の人間なのだ、ルリエッタも惚れても全然不思議では無い。
だが今の様子を見る限り二人は間違い無く・・・
「もぅ、イライラする!」
個室に戻ったリルはベットに寝転がりながら怒りを枕にぶつけていた。
そして、自分が七志と結ばれるのにはルリエッタと一緒にでないと無理ではないか・・・と結論へ至りつつあった・・・
「そうよね・・・ウジウジ悩むなんて私らしくないわ!」
そう独り言を決意表明の様に言い放ち、リルは覚悟を決めた。
今夜、七志の部屋へ行こう・・・と。
宿の中が静かになった深夜、リルは新しい下着に着替えてから自室を出ていた。
目指すは七志の部屋である。
ドキドキする鼓動が周囲に聞こえているのではないか?と考えるほど彼女は自分の行動に混乱をしていた。
そう、これは夜這いである。
自覚をすればするほどリルの顔は赤く染まり、一歩ずつ静かに歩く足が震えていく・・・
だがルリエッタに七志を取られて諦めると言う選択肢は彼女には無かった。
妾でも良い、愛人でも良い、彼と共に居たい!
それがリルの決意であった。
リルの部屋から順にナポレ、ルリエッタ、七志の泊まる部屋が並んでおり、廊下を静かに歩くリル・・・
そこで気付いた。
ルリエッタの部屋のドアが少しだけ開いていたのだ。
チラリと中を通りすがりに覗けば、誰も居ない・・・
「えっ・・・まっまさか・・・」
部屋に居ないルリエッタ、そのまま七志の部屋の前まで来てドアに耳を当てれば・・・
「いくよルリエッタ」
「うん・・・」
遅かった、そう考えたリルはいつの間にか涙を流していた。
だが、二番目でも良いと覚悟を決めたじゃないか!と歯を食いしばって涙を腕で拭く。
そして、ドアを開いた。
「七志、突然ごめんだけど聞いて欲しいの!私、あんたの事が好・・・えっ?」
ドアを開けて叫ぶように告げたリル、だが彼女は部屋の中を見て固まった・・・
そこには黒装束の様な服装に着替えた七志と、紺のローブを纏ったルリエッタが外へ出ようとドアの前に立っていたのだから・・・
「あっえっ・・・あれ?」
「ミスリル、お前寝惚けているのか?まぁいいや、これから呼びに行こうかと思ってたところだ」
「えっ?呼びに?えっ?」
「ルリエッタ、ナポレさんに声を掛けてきてくれ。ミスリルその格好は目立つから着替えてくれ、今からスマイル館の皆を救出しに出るぞ!」
「っ?!」