異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第37話 カーズの前に辿り着くナナシ

時はほんの少しだけ巻き戻る。

 

水晶玉を両手で掴んで一人叫び声を上げる骸骨が居た。

死神3兄弟の長男カーズである。

 

「な・・・なんじゃそりゃーー?!」

 

叫ぶのも無理はない、スマイル館の住人を人質にここまで連れて来て七志を煽る。

そして十二指町までやって来た所で、自分の最強の配下である半精霊体の魔物クジンをけし掛け、七志達を攻撃する。

それで倒せれば良し、倒せなくても物理も魔法も効果の薄い半精霊体を倒すのに七志は奥の手を使うと予想していた。

全ては計画通りの筈であった。

だが七志はスマイル館の人間が連れ去られても何故か宿に3日も泊まると宣言してその通り実行した。

一応七志の不思議な奥の手も確認できて、対策を考えようとしていた所にこちらを目指さずに宿に泊まるとの宣言、1日くらい休んで体力を回復させるのであれば納得がいったが…七志は1週間泊まると言い出したのだ。

その可能性を潰す為に脅して宿代をかなりの高額にさせていたのにも関わらずにだ。

 

「だがしかし、これで時間は稼げるな・・・」

 

水晶玉で七志を見始めて分かった事が一つある、意味不明な行動を必ず宣言してから行なうという事である。

仲間である3人の理解を得る為にそうしているのだろうと思うが、カーズはその点に置いて七志を理解していた。

1週間泊まるというのであればここへは1週間後に攻めてくるに違いない、捕まえている者達には水しか与えてないので餓死する可能性もある。

だがそれは七志が選んだ選択だから…とカーズは気にしていなかった。

逆に七志が現実を知った時に絶望するのであれば良しと考えて居たのだ。

何より七志と直接対決を行なうには町ではなく城であることがカーズにとって非常に好ましかった。

その理由がカーズの能力である。

 

「あの謎の攻撃、あれさえ何とかすればヤツを完封するのは可能だろう・・・」

 

そう独り言を言い、カーズは水晶玉の映像を録画したクジンとの戦闘シーンに切り替えた。

何度も何度も様々な魔道具を使用しながら映像を確認し、3時間ほど掛けてその攻撃の正体を突き止めていた。

 

「強力すぎる自己再生系の回復魔法か・・・なるほど、回復に使うエネルギーを枯渇するまで急激に使用させて餓死させる魔法か・・・エグイな」

 

属性付きの攻撃魔法であれば防いだり吸収したりする方法は勿論ある、だが回復魔法に対抗する手段と言うのは非常に少ないのだ。

魔法を反射するか、状態変化を封じる、もしくは魔法そのものを無力化させるくらいしかないのだ。

 

「だが突破口は見つけた。これで俺の負けは無くなった!」

 

実はカーズ、三男の六郎が倒された後からずっと七志の事を水晶玉で観察し、映像を保存していたのだ。

それを用いて七志といずれ戦う事になった時に完封出来るようにする為に色々な対策を仕込んでいた。

人質もその一つだが、全員拉致したのにも勿論理由はある、その中に魔法による精神支配を仕掛けた者が混じっているのだ。

もしも救出されたとしてもそいつが裏切れば疑心暗鬼になり他の者も信頼できなくなる。

そして、七志の能力値も再確認し、負ける要因が完全に0と判断できた事でカーズは水晶玉の映像を消した。

 

「俺の・・・勝ちだ・・・」

 

山を登って七志達が攻めてきても途中にある様々なトラップが彼等を襲い到着に日数が掛かる。

道中で殺せるかもしれないし、無傷で城まで辿り着くのは不可能だろう。

だが万が一ここまで辿り着いたとしても七志を倒す方法は確立した。

最早勝利は揺るがない、それがカーズの出した結論であった。

だが!

 

「くくく・・・ヤツが後1週間は宿に泊まって迎えに来ない事を知らせたら捕まえている奴等はどんな顔を見せてくれるのだろうかな?」

 

そう口にしてケタケタと笑い出すカーズ、思いついたら即実行とばかりにカーズは牢屋の映像を水晶玉に映し出した。

専用の魔道具が無ければ開かない牢屋に全員を閉じ込めている、そこから逃げ出す事は先ず不可能。

そう確信していたカーズは笑う際に開いた口を開けたまま水晶玉の映像を見て固まった・・・

 

「い・・・居ない?!そんな馬鹿な!?」

 

そこには誰一人として牢屋の中には居なかったのだ。

慌てるカーズ、一体どうして何が起こっているのか理解できないカーズは城の中を順に水晶玉に映していく・・・

そして、見つけた。

 

「な・・・何故ヤツがここに・・・」

 

そこはカーズの居る部屋の手前、広間の中央に七志、ルリエッタ、リル、ナポレ、そして牢屋の中に居たはずのネネがそこに居たのだ。

そして、向こうからは見え無い筈の映像に向かって七志は中指を立ててファックサインをカーズに向けた。

ありえない、一体何が起こっているのか理解が出来ない。

だが分かる事もある、この僅か3時間の間に七志達は城までやって来て、スマイル館の面々を全員救出しそこに立っているという事だ。

 

「貴様ー!!!一体なにをやったんだぁああああ!!!」

 

部屋を飛び出し広間の扉を開くと共に待ち構える七志達に向かって叫ぶカーズ!

だが七志はニヤリと顔を歪ませてルリエッタと手を繋ぎながら伝える。

 

「全員救出させてもらった、後はお前にお返しをするだけだ!」

「あ”っ?!」

 

七志の言葉に手にしていた杖を向けてカーズは切れる。

だがそこでよくよく考え直せば状況は決して悪く無いのだ。

何故ならば対策は全て済ませてあるし、七志達と共に居るネネこそがカーズが魔道具で魔法の精神支配を仕掛けた者だったからだ。

それを理解して落ち着きを取り戻したカーズは杖に魔力を送りネネに指示を出す。

 

「一体どうやってこの短時間でここまで来てそいつ等を解放したのかは分からないが、やはり貴様は我々死神3兄弟と死神将軍様の明確な敵だという事だな!良いだろう、話すつもりが無いのであれば話しやすくしてや・・・」

「教えてやろうか?」

「へっ?」

 

七志の言葉にカーズは裏返った声を出す。

カーズは後から水晶玉を使ってどうやってここまで来たのか見れば良い、だから今の会話は単なる時間稼ぎのつもりだったのだが、律儀に七志は教えてくれると言うのだ。

それが真実なのかどうなのかは分からないが、映像だけでは分からない事もあるので七志の説明を聞く姿勢を見せた。

 

「簡単な話だよ、お前が連れ去った人達を運搬したのと同じ方法を使ったのさ」

「ば・・・馬鹿な!十二指町の隅に在る廃屋の隠し部屋に設置された城への直接転移装置は・・・」

「36桁の暗証番号と専用の魔道具による魔力チャージが必要・・・だろ?」

「なっ・・・?!」

「そして、牢屋の鍵にはお前の持つ専用の鍵が絶対に必要・・・だろ?」

「・・・貴様、一体どうしてそれを・・・そして一体どうやって・・・」

 

何故七志がそれを知っているのか分からない、だが水晶玉を見ればそれが本当なのかは確認できる。

だから今の会話もカーズにとっては単なる時間稼ぎでもあったのだ。

その証拠にネネはゆっくりと七志に背後から近付き両手を広げて・・・

後ろから七志に抱き付いた。

 

「・・・はぁっ?!」

「ありがとうネネさん、ごめんねこんな子芝居に付き合わせてしまって」

「良いんですよ、正直今でも信じられませんから・・・それに、私・・・本当に七志さんの事を・・・」

 

そう答えるネネは七志に抱きついたままである、それを見ているリルの視線が嫉妬に狂っているのは言うまでもない。

そして、精神支配が全く意味を成していない事に完全に混乱するカーズ。

左手はルリエッタと繋がり、後ろからネネに抱きつかれ、少し離れた所で嫉妬の目を向けるリル。

完全に空気がおかしい状況に思考が全く定まらないカーズは一歩下がる・・・

 

「な・・・何故だ・・・くそっ!」

 

それだけ言ってカーズは自室へ駆け込んで水晶玉に映像を映し出させる。

勿論入り口には専用の魔力鍵を掛けて七志達の侵入を拒んだ上で、だ。

 

「な・・・なんだと・・・」

 

その水晶玉に映し出された自分が見ていない間の映像にカーズは驚愕するのであった・・・

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