異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第39話 カーズとナナシの決戦前問答

『オイ!七志起きろオイ!』

「うぅ・・んん・・・後5分・・・」

『ルリエッタ、さっき教えた方法で起こしてあげなさい』

「はーい」

 

モゾモゾ・・・

モゾモゾ・・・

 

「・・・ふがっ?!あぁー!!!」

 

目を覚ました七志はそのまま飛び起きた!

ルリエッタが七志の左手を掴みながら嵐に教えられた方法、それはまつ毛を触るという方法であった。

嵐がネットで調べた『起きない人を一発で起こす方法』をルリエッタに伝授したのだ。

 

「うゎ~それは確かに起きるわぁ~」

「ルリエッタさん、中々大胆ですね・・・」

 

ベットの側には飛び起きた七志を白い目で見つめるナポレとリルの姿・・・

 

「お、おはよう・・・」

「うん、おはよう」

「おはようございます七志様」

 

何処と無く気まずい感じを見せる七志であったが、耳に飛び込んできた嵐の言葉に意識を持っていかれる。

 

『不味いぞ相棒、予想よりもかなり早くカーズが降りてきてる!』

「分かった、直ぐに準備するぞ!」

 

と威勢よく口にした七志であるが、ルリエッタもリルもナポレも既に準備万端、慌てて準備するのは七志だけであった。

 

 

 

 

 

宿を出てスマイル館の皆は離れた場所に退避させ、七志達は昨日カーズに転移させられた場所まで移動していた。

数分前まで緊張感の欠片も無かった面々であるが、これからカーズとの決戦だと七志に告げられて気合を入れなおしていた。

メンバーは七志、ルリエッタ、リル、ナポレ、ネネの5人である。

 

「ナポレさん、使わないかもしれませんがこれを・・・」

「こ・・・これは?!」

「一応預かっておいてください」

 

七志はつい先程慌てて作った何かが描かれた布をナポレに預ける・・・

それを見たナポレは奇妙な顔をしながらリルの方をチラリと見るが、強く頷いてその布を折りたたんで抱えた。

その時であった。

砂煙と共に山道を猛烈なスピードで駆け下りてくる何かの姿が在った。

砂埃から見えるそれはバギーの様な車型の魔道具、重力を利用して坂道を下る事に特化したそれに乗り込んでいるのは杖を持つ骸骨・・・

そのまま坂道を下り終えて横に降り立ったその姿・・・

 

「もう逃がさんぞ!この腐れ人間が!」

「何言ってんだ?奥の部屋に逃げたのはお前じゃないか、そうだろ?カーズさんよ!」

 

骸骨の歯がギリギリと歯軋りをしながら七志に怒りを向ける。

眼球が無いので分からないが、七志を睨みつけているのだろう。

 

「まぁいい、それよりも聞かせろ。貴様、どうやって暗証番号や死神城の中の構造を知った?!」

「あれ~?お得意の自分の部屋でしか見れない水晶玉で見てきたんじゃないんですか~?」

「なっ?!」

 

その言葉に絶句するのも仕方あるまい、七志だけでなくカーズの部屋に入った者は兄弟ですら居ないのだ。

その反応に嬉しそうに肩を揺らす七志、そしてゆっくりと歩き出しルリエッタの方へ近寄っていく・・・

 

「お前の敗因は2つ、一つはスマイル館を襲撃した事、そしてもう一つは・・・独り言が多過ぎる事だ!」

 

『お前に言われたくないわ!』と七志に言いたいカーズであるが、七志の言葉をそのまま受け止めるとするならば・・・

 

「なるほど、何か監視系のスキルか魔道具があの建物にセットされてて、この俺を追尾していたって訳か・・・」

「まぁそんな所だな」

「くっこの覗き魔め!」

「お前に言われたくないわ!!」

 

ハッキリと言おうと思った言葉を言い返されたカーズは手にした杖を天へかざす。

すると乗ってきたバギーの様な乗り物が光の粒子に変わりカーズの杖の中へ入っていった。

その光景にナポレとリルとネネは絶句するが、ルリエッタと七志は気にした様子も無い。

そして、カーズの杖から光が放たれてそれがカーズの指にはまる・・・

 

「ここまで俺をコケにしてくれたんだ。真の絶望ってやつをこれから味合わせてやろう・・・」

「その指輪の効果・・・でか?」

「ふんっ知っていた所でどうにもならん!この話をする前に一斉攻撃を仕掛けなかったのがお前たちの敗因だ!」

 

そう言ってカーズが動き出そうとした瞬間それは放たれた!

 

「ファイアーボール!」

 

ネネである、七志に伝授したオリジナルの魔法ファイアーボール。

勿論この区では闇属性以外の魔法は本来使えない、それをHPを消費する事で使える様にした火の攻撃魔法である!

七志の魔法よりも一回り大きい火の塊が真っ直ぐにカーズにぶつかり周囲に爆風を起こす!

だが・・・

 

「へぇ~本当に火属性無効の魔道具なんだ~」

「くくく・・・その通りだ。お前の魔法よりも数段強かったみたいだが、この俺には全く意味を成さないのはこれで分かったかな?」

「そうみたいだな、って事はあれも対策済みってわけか・・・」

「くくく・・・試してみるか?」

 

アレ、即ち七志が昨日使用したクジンを倒した魔法ヒール。

超回復を強制的に起こしてカロリーを消費させ、そのまま餓死させる魔法である。

 

「いや、止めとくよあれ結構キツイからさ」

 

自分の攻撃手段が全て防がれた筈なのに何処か余裕を見せる七志。

これがカーズの得意の戦法なのであった。

相手の攻撃手段を完封し絶望の中でジワジワと苦しめて殺す、それがカーズが行なう戦いと言うものなのである。

 

「では教えてもらおうか、どうやって暗証番号や俺の能力に付いて知った?返答次第では楽に殺してやろう・・・でなければ後悔し続ける事に・・・」

「あっ教えてやるよ、俺の相棒の『嵐』ってヤツがお前の事ずっと見てくれていたんだ」

「「「嵐?」」」

 

カーズだけでなく、リルとナポレも七志の言葉に首を傾げる。

七志と名前が似てはいるが聞いた事の無いその名前に違和感しか無いのだ。

 

「ふむ、ではその者が俺の動向をずっと見ていたと?」

「いや、正確に言うとだな・・・ネットのユーデューブにサブアカ作ってそこにお前の動画をUPしていたってわけさ」

「・・・・・・はっ?」

 

七志の言葉にカーズは意味が分からないと困惑する。

それはそうである、七志が口にしている言葉の意味が分かる筈が無いのだ。

ネットと言う単語すら理解できないカーズは言葉がでない・・・

しかし、自分の動向が見張られていたと言う事実は納得するしかなかった。

それならば七志が死神城の構造を知っていた事も、暗証番号を知っていた事も、精神支配の魔法を使用したのを知っている事も理屈が通るのだ。

更に・・・

 

「そしてな、お前の動画で言動を見聞きした人達がお前の能力の推理をしっかりやってくれてね」

「・・・」

「お前の言ってた言葉も合わせて30万人以上の人が予測を立ててコメント欄で大盛り上がりでさぁ~、まとめサイトが出来るほどだったんだぜ」

「・・・意味が分からんのだが・・・」

「要するにだな・・・俺達を覗き見していたお前、それを実はこっち30万人以上で覗き返していたってわけなんだよ」

「・・・はぁ?!」

 

七志の言っている意味が全く理解できないカーズ、しかし七志から告げられた言葉に絶句する事となった。

 

「結論から言わせて貰うと・・・カーズの能力は97%の確率で『危害を与えるのを目的とした物以外の想像した魔道具を具現化する能力』だろ?」

「・・・きっきさま・・・何故・・・」

「そして、同時に具現化できるのは3つまでで、1つは常に『その場に固定する事で魔道具を対価と引き換えに作成出来る魔道具』に使っている・・・だろ?」

 

七志の言葉にカーズは何も言わなくなった。

図星、まさしくそれなのである。

元々は4つ具現化できるのであるが、1つは『何処へでもドア』を奇跡的に具現化する事が出来た為に3つに減ってしまったのだ。

その時の対価が『自らは使用できない』と言うモノであった事は七志も知らないのだが・・・

 

「それが・・・それがどうした?!それでもお前が俺に勝つ方法は無い!ここでお前を殺して口を封じてしまえば何も問題はなくなるのだ!」

「そうだな・・・それが出来るんだったらな」

 

そう言って七志はルリエッタに小さく告げる。

 

「もしもの時は・・・『アレ』使うから」

 

その言葉に強く頷くルリエッタ。

ルリエッタに七志は微笑を見せ、カーズの方へゆっくりと歩きながら告げる。

 

「全くスマイル館を先に襲撃してくれて助かったよ、誰一人死人が出て無い事も分かったし、なによりお前の性格が分かったのが本当に助かったよ」

「つまり・・・あの3日間も全て計算通りだったというわけか・・・」

 

ユーデューバーの視聴者には様々な人間が居る、その中でも心理学に詳しい人物のコメントで、嵐が質問をしてカーズを出し抜く作戦を立てていたのだ。

七志がスマイル館の襲撃を受けたのにも関わらず人質を取られているのに3日も宿に泊まっていたのは、七志はそう言う人間なのだとカーズに誤認させるため。

十二指町に来てからもいきなり宿を1週間大金を支払って借りて居るのを見たカーズは、必ず水晶玉を見張り続けるのを途中で止めると読んでいたのだ。

全て七志達の手の平の上で踊らされていたと言う事なのである。

 

「それじゃあ、決着をつけるか・・・行くぞカーズ!ファイアーボール!!」

「くくく・・・それでもお前の負けは確実だ!」

 

七志の周囲に浮かぶ火の玉。

それを見てほくそ笑むカーズ、七志は知らなかったのだ。

死神3兄弟の次男の屋敷で手に入れた水魔法ウォーターの魔道書。

あれも実はカーズが用意した物だったのだ。

つまり、今カーズが装着している能力で生み出した3つの指輪の効果は・・・

 

『腹減らずの指輪』『炎属性無効化の指輪』『水属性無効化の指輪』

 

だったのだ。

身体能力が極めて低い七志は勿論肉弾戦は苦手である。

それこそカーズの魔道具を用いていない攻撃1発で大ダメージを受けるのは間違いない。

ならば遠距離戦になるのだが、七志の攻撃手段は全て封じられているのだ。

まさしく完封、唯一気をつけなければならないのはナポレ達の介入であろう。

チラリとナポレが後ろに下がって居るのを確認し、カーズはゆっくりと七志の方へ歩いていく・・・

互いの距離が3メートルの位置に到達した時にお互いが止まり向かい合ったまま構える!

 

「教えてやろう、戦いとはどれだけ下準備がしっかりしているかで決まるという事を!」

「黙れ覗き魔骸骨、スマイル館のお礼をしっかりさせて貰うからな!覚悟しろ!」

 

今、決戦の火蓋は切られる!

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