異世界ツクール   作:昆布 海胆

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日付間違えてたorz


第42話 敗北とナナシの死

突き飛ばされたルリエッタの表情が驚愕に染まる。

目の前で自分を押した七志の左腕が木っ端微塵に吹き飛んだのだ!

七志の体もその衝撃で吹き飛ばされ地面を転がる・・・

 

「七志!!!?」

 

リルの叫びが響き、見ていたネネも口元を両手で押さえて驚く。

この場に居る誰もが七志のステータスを理解しているからだ。

確かに詐欺魔法の理不尽とも言える異常な力は理解しているが、本人自体は一般人よりもか弱い存在なのだ。

下手をすれば今の一撃で即死していてもおかしくない、だが虚ろな瞳で逆に折れ曲がった右腕をゆっくりと動かしながら七志は口にした。

 

「ファイ・・・ア・・・ボ・・・ル・・・」

 

瀕死、だがまだ息がある!

誰もがそれに気付き最悪は回避されたのだと理解した。

生きてさえ居れば七志には詐欺魔法のアレが在る!

 

「ん?」

 

その七志を眺めていた死神将軍は気付いた。

吹き飛ばされた七志の様子に安堵しているナポレの姿に。

そう、動けない振りをしてその隙を窺っていたのだ。

そして再び死に掛けの七志が口を動かしながら右手を自身に当てた。

浮かんでいた火の玉の一つを掴んていたのだ。

 

「ファイ・・ア・・・」

 

それは時間を焼却し巻き戻す詐欺魔法。

自身の体を燃やして怪我をする前の状態に七志は戻ったのだ。

その様子を指輪の一つを変化させた魔道具で楽しそうに見続ける死神将軍。

四角いボードの様な物を通して見る事で対象の状態等を確認できる魔道具である。

七志が元に戻った左腕で体を支え、ゆっくりと立ち上がる光景に笑い出しながら死神将軍は告げる。

 

「今の一撃で死に掛けるとか本当に人間というのは脆いな・・・くくくく、しかも怪我を治したみたいだが体力は回復できない様子・・・その状態で一体何が出来ると言うのだ!くははははは!!!!」

 

見た目は完治している七志であるが、状態を戻しただけで体力や精神力は消耗したままなのだ。

これが詐欺魔法ファイアーの欠点でも在った。

目に見えない疲労などは戻す事が出来無いのだ。

それでも失った左腕が戻ったというのは大きかった、出血が一瞬で止まった上に失った血までも戻ったからだ。

 

「これでも・・・視聴者の皆さんが応援してくれている身でね・・・」

 

かろうじで口に出来た言葉は勿論死神将軍には伝わらない。

だが余裕に見せてはいるが満身創痍なのは変わらず、死神将軍は体の骨を一本掴んでゆっくりと歩いて近寄っていく。

 

「それで、その状況から俺にどう対処する?お前に何が出来る?この魔道具でお前の状態は確認しているが既に死に掛けではないか?危機的状況から1発逆転なんてものはこの世には存在しないんだよ!お前は何も出来ずにこのままここで死ぬ!それが現実だ!」

「それは・・・違う・・・」

「何が違うというのだ?この状況を引っ繰り返す方法がお前にあると?戦いと言うのは始める前の事前準備で全てが決まるのだ!お前の負けは変わらん!」

「ふふふ・・・死神将軍、お前言ったよな・・・奥の手ってのは最後の最後まで隠しておくものだって」

 

七志のその言葉に死神将軍の足が止まった。

七志の周囲にはまだ2つの火の玉が浮かんでいる。

それが今の七志に出せる最後のファイアーボールなのは状態を逐一見ている死神将軍も理解していた。

残りHPからファイアーボールを出現させるのに必要な分が足りないのだ。

 

「これが俺の奥の手だ・・・お前を滅ぼす・・・最終兵器だ!」

 

そう言って両手にそれぞれ浮かぶファイアーボールを掴んで七志は駆け出した!

真っ直ぐに死神将軍に向かっているその背中にルリエッタが叫ぶ!

 

「七志さん!頑張ってー!!!!」

 

自らを助けた事でボロボロになった七志の背中に向かって叫ぶ!

だがしかし現実とは無常、七志が突き出した右拳は死神将軍の手前で止まる。

三男の六郎が使う『制空剣』一定の範囲に入ったモノを自動的に攻撃するスキル。

次男の長兄が使う『結界』目に見えない一定方向に押す力を持つ空間を作り出すスキル。

この二つが合わさった自動防御にその拳が受け止められたのだ。

 

「それで、ここから何を見せてくれるのかな?」

「その余裕が命取りだ!黒の魔法、水の力よ我が手より生命の源となる水の奇跡を!ウォーター!」

 

七志の突き出した右拳に力が入る!

だが魔法が発動しないのか、七志はそのままの状態で死神将軍を睨みつけていた。

 

「これを!くらえ!!!」

 

七志の叫び、それは握っていた右拳を開いたと同時であった。

死神将軍もそれには一瞬驚いた。

七志の開かれた右手から銅貨が飛び出したからである!

これが七志の持つ死神将軍も知らない、口座から自由に好きな金を出し入れ出来る能力であった!

その銅貨は手の平の少し先へ飛び出し、結界の向こう側へ落ちる。

七志の狙いは止められた結界の向こう側へそれを送り込むことだったのだ!!!

だがその出た数枚の銅貨も直ぐにもう一つの結界が受け止めて塞ぐ。

死神将軍までは残り数ミリのところであった。

 

「く・・・くそっ・・・」

「くはは・・・くはははははははは!!!!」

 

その状態で死神将軍は高笑いをし始める。

それはそうだろう、金を送り込む能力には驚いたがそれを防いだ事で勝ちを確信したからだ。

 

「一体何をやろうとしたのかは分からないが、お前に良い事を教えてやろう・・・お前の奥の手だと言う水魔法な、あの魔道書をアソコに置いたのは俺なんだよ!」

「っ?!」

「良い顔だ、その顔が見たかった。お前の狙いを全て防いだ上でその顔が見れたのなら満足だよ・・・」

 

睨み付ける七志に死神将軍は嬉しそうに続ける。

 

「最初から分かっていたのだよ、言っただろ?戦いとは始まった時点で勝敗が決しているのだ!初めからずっとお前の隠していた能力は理解していた。見ていたからな、その水魔法が力学とやらに関与するんだろ?」

「くっ・・・」

「最初からお前の負けは決まっていたのだよ、火の魔法だけでなく、水魔法も最初から無効化させてもらっていた。そしてお前の水魔法がどういう効果か分からないが、力学に関与すると言うのなら物理の可能性も考慮していた。だがそれもこの結界を突破は出来ない!」

「ちく・・・しょ・・・」

「完封、あぁ俺は何て強いんだ・・・ダメージを受けなければ負ける事は無い、それが真理!お前は絶対に俺には勝て無いのだよ!なぁ・・・そこの人間」

 

そう続けた死神将軍は首がクルリと回転して真後ろを見た。

そこには短剣を手にしたナポレが立っていた。

 

「死んだ振りして最後の最後に不意打ちか・・・くだらんよ」

「ぐあっ・・・」

 

ナポレに見えない結界が飛ばされ吹き飛ばされる。

ナポレに続こうとしていたネネとリルも足を止めた。

七志が目で止めさせていたのだ。

 

「さて、幕引きだ。ここまで俺を追い詰めたのだ。誇って・・・死ね!!」

「いや、死ぬのは・・・お前だ!!!」

 

七志の叫び!それと共に一気に結界の向こうに銅貨が大量に出現して死神将軍の結界を破裂させる!

結界の中に無理矢理金を出現させる事で外側からではなく、中側から破壊したのだ!

バーンッと言う破裂音に一瞬誰もが驚いた!

死神将軍も後ろに体を引きながら結界を突破した七志が近付いてくるのを理解した。

 

「くらえ・・・これが俺の奥の手!!!」

 

突き出したままの右手が再び握られて死神将軍へ向かう!

だが・・・

 

「甘いと言った、筈だ!」

 

それは死神将軍の拳であった!

その拳に結界を合わせ、飛び散る銅貨ごと七志へ向かって放たれた!

そして、二人の拳が空中でぶつかり合う!!

拳対拳、それが齎す結果は一目瞭然であった。

七志の右腕は衝撃に弾かれて歪な形に変形する。

一瞬で右腕の骨が複雑骨折したのだ。

そして遅れてその全身を死神将軍の結界に押された銅貨が襲う!

まるでショットガンの様な衝撃に七志の体が後方へ吹き飛んだ。

 

「う・・・そ・・・」

 

リルの口から言葉が漏れる・・・

七志の体が地面にバウンドし、ルリエッタの近くに落ちた・・・

辺りに散らばる砕けた銅貨、拳を突き出したままの死神将軍、身動きが取れなかったナポレとネネ・・・

そして、慌てて近付いたルリエッタがピクリとも動かない七志の頬に触れた・・・

その様子がおかしいのは直ぐに分かった。

肌に触れて口元に耳をやって・・・

 

「息・・・して・・・ない・・・」

 

その言葉は静まり返ったその場の全員に届いた。

七志の死をルリエッタが告げたのだ。

だが心の何処かで誰もが信じていた。

七志は詐欺魔法の使い手なのだ、きっとこれはフェイクだ。

だがそれを否定する魔道具で七志の状態を覗いた死神将軍の声が届いた。

 

「くははははは!!!!脈が止まっておるわ!!!死んだか!あの一撃で死んだのか!!!!何が奥の手だ!何が甘いだ!!!結局私の勝ちは変わらなかったのだ!!!!」

 

高らかな宣言、七志の脈が止まっている。

心肺停止、それは正真正銘七志の死を意味していた。

 

「そん・・・な・・・」

 

その場に膝を着くリル・・・

絶望に染まったその顔が遠くで覗いていたスマイル館の面々にも伝わった。

七志の敗北と死。

誰もが現実に絶望した瞬間であった・・・

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