異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第43話 決着!死神将軍を打ち抜く右拳!

「さて、少し話でもどうだ?」

 

死神将軍は倒れたまま動かない七志から視線を外し、周囲に居る者へ語りかける。

今までどう見ても殺す気だったのにも関わらず、突然の態度の急変に困惑するナポレ。

 

「お前達の頼りにしていた人間は死んだ。しかし俺はアイツを評価しよう」

 

その声は新たに出現させた魔道具で町の方にまで届き、骨の両手を広げ、誰にとも無く話し始めた死神将軍の言葉に誰もが耳をやる。

七志が居なければこれ以上戦っても意味は無いのだ。

 

「ここまで俺を追い詰めたのが他の区を支配する者ではなくたった一人の人間だった。あの戦争でもここまで俺を追い詰めた者は居なかった」

 

その声は何処か安らぎを与えるかの様な効果を付与されているのか、ナポレ達の闘争心が薄れていった。

 

「だからお前達を許そう、元より区の住人を無駄に殺す気は無いのだ。だから捕らえたお前達は今生きている」

 

その言葉にスマイル館が襲われた時、七志が救出に来なかった数日間、誰一人殺されなかった事を誰もが思い出していた。

全員を魔道具で洗脳して連れては来たが、牢に入れてからはその洗脳も解除されていた。

最もそれは他の魔道具を使用する為に制限が在ったからであるのだが、そんな事は知らない全員はその言葉をそのまま受け止めた。

 

「少し時間をやろう、お前達がこの区の住人として日常を送れるように戻してやる。だが拒否するのであればそこの人間と同じ場所へ送ってやる」

 

そう言って死神将軍は七志に手を伸ばしたままのルリエッタに視線を戻した。

そして、ルリエッタの行動を観察する。

 

 

 

「おい・・・どうするよ・・・」

「七志さん・・・死んだんだぞ?」

「このまま帰してもらえるって事は私達解放されるって事なのよね?」

「それを拒否すれば殺される・・・」

 

離れた場所でスマイル館の面々は口々に騒ぎ出す。

だが騒いだところで答えなんて決まっている、逆らえば殺される、だが逆らわなければ助かるのだ。

最も彼等は連れて来られたので分かっていない、この十二指町から出れないと言う事は・・・

 

 

 

 

「ふざ・・・け・・・ないで・・・」

 

その言葉は想いが強く込められていた。

 

「まだ・・・私は・・・何も告げられていないのよ・・・」

 

涙が止め処なく流れながら搾り出すように出された声。

 

「本当に・・・好きだったんだから・・・」

 

近くに落ちていたナポレの短剣を手にしてリルが立ち上がった。

涙でぐしゃぐしゃになった顔を一気に上げて死神将軍を睨み付ける。

 

「私は許さない・・・あんただけは絶対に許さない!例え殺されると分かってても!!あの人・・・七志と同じ場所に行けるんだったら望むところよ!!!」

 

だがそんなリルの様子を楽しそうに死神将軍は笑いながら見る。

 

「そうかそうか、そうだったな。水晶玉でしっかりと見させて貰っていたよ。ならば大好きなあの人間の生首でもくれてやろうか?」

「ふざけるな!」

 

その言葉に怒りを露にしたリルは短剣を両手でしっかりと構えて突っ込む!

彼女は身体能力を限界まで駆使して走り出した!

到底適わないのは目に見えていた。

だが彼女はそんな事はどうでも良かったのだ。

あの時に想いを告げていれば良かった、そう後悔する気持ちがグルグルと渦巻いて何も考えられなくなっていたのだ。

しかし、現実は非常である。

 

「ぐあっ・・・は、離せ・・・」

 

死神将軍から3メートル程の場所でリルの体は結界によって固定されたのだ。

次男の長兄が得意としていた住人を結界の圧で四つん這いにさせるのを前後から挟み込むように使用したのだ。

 

「いやはや、中々楽しい見世物だったな。お陰で予定していた10分が無事に経過した」

「な・・・に・・・を・・・?」

「良い事を教えてやろう、この世には死者すらも蘇らせるラストエリクサーと呼ばれる霊薬が存在する」

 

その言葉にリルだけでなくルリエッタとネネも反応した。

だが・・・

 

「しかし、その霊薬ですら死者を蘇生させる事が出来るのは10分なのだ。つまり、死んで10分が経過したあの人間はもう生き返ることは無い!お前達に伝えた言葉は唯の時間稼ぎだ!」

 

その言葉は無常にも全員の耳に届き絶望を与えた。

言葉の通りであれば言った事は全て嘘なのだ。

それもその筈、七志を殺す為に用意した人質であった面々を見逃す理由など無いのだ。

唯でさえ自らの能力を知られてしまっているのだから口封じするのは当たり前であろう。

 

「さて、それでも全部嘘にするのも悪いから、優しい俺は恋する乙女にプレゼントでもくれてやろうじゃないか」

 

そう言って七志の方へ近寄っていく死神将軍、その前にルリエッタが両手を広げて立ちはだかる!

だが死神将軍は気にも止めずに倒れている七志に向かって手を伸ばす。

それを阻止しようとするのだが、不可視の結界がルリエッタの体を押して無理矢理避けさせられる。

 

「俺に感謝すると良い、こっちのお前はいつも手を繋いでいたな?ならば腕でもくれてやろうじゃないか!」

 

攻撃されたわけでもなく、見えない結界に押されて退かされたルリエッタは必死に抵抗をする。

だが戦闘能力が皆無な彼女では何もする事が出来ず、死神将軍が七志の胸元を掴んで持ち上げるのを見るだけであった。

 

「さて、死体を嬲るのは余り得意じゃないんでな。上手く首が千切れなかったら勘弁してくれよ」

 

そう言って七志の頭部に死神将軍の手が伸ばされた時であった!

結界を必死に叩きながら抗っていたルリエッタが口を開いた。

 

「息して・・・ない!」

(?)

 

その意味不明な事場に死神将軍の手が止まり、ルリエッタの方を視線をやった時であった。

七志の目が開いて胸倉を捕まれたまま、不安定な状況にも関わらず、握り締められた右拳が死神将軍に向かって放たれた!

 

「なっ?!お前生きて?!?!?!」

 

一瞬驚いた死神将軍であったが直ぐに落ち着く、制空剣による結界が自動発動し七志の拳を受け止めたのだ。

しかも地に足を付いている訳でもなく、勢いを付けている訳でもない拳である。

そんな物が1発放たれた所で・・・そう考えた瞬間であった。

 

バグォオオオオオオン!!!

 

結界が砕けたのではなく木っ端微塵に消し飛んだ音が周囲に響いた!

そしてそのまま七志の右拳が死神将軍の胴体に届いた!!!

 

「お前の・・・負けだぁあああああ!!!!!」

 

それはまるで調子近距離で爆裂魔法を放ったかの様な衝撃であった。

鞭が音速を超えた時に空気の壁を叩く音、それにも似た音が周囲に響き、地面が抉れ扇状に衝撃波が広がる!

砕けるのではなく塵になっていく死神将軍の身体。

あまりの衝撃に頭部と腕と足だけ残った死神将軍は固まっていた。

自らが死んだ事に気が付いていないかの様に、無くなった体に視線をやろうとするのと同時に残された部位が落下する。

 

「これが俺の詐欺魔法による水魔法、ウォーターの真の力だ!」

 

支えていた死神将軍の腕と共に七志も地面に倒れこみながら、届いているのか分からない言葉を死神将軍に告げるのであった。

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