異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第44話 詐欺魔法、ウォーターの正体!

「七志!!!?」

 

倒れた七志に結界から解放されたリルが駆け寄った。

上手く七志の拳による衝撃波から反れたリル、目の前で起こった光景よりも七志の方を気にした。

唯でさえボロボロになっていた状態から一度は死んだ筈、にも関わらず生きていた、生きていてくれた。

それだけで彼女にとっては十分だったのだ。

 

「いき・・・てる・・・本当・・・に・・・いき・・・て・・・うわぁああああああん」

「ちょっ、ミスリル・・・抱き付くのは恥ずかしいよ・・・」

「うるさいうるさいうるさい!ばかばかばかー!!!」

 

泣きながら七志を強く抱き締めるリル、その様子をルリエッタは暖かい目で見ていた。

そこへナポレが近寄ってくる。

 

「どうやら終わったみたいですね、それじゃあルリエッタさん・・・これを持ってもらいますか?」

「ナポレさん?それは・・・あぁ、そう言うことですか」

 

泣きながら七志を抱き締めるリルの後ろで、ナポレは今朝七志から渡されていた布を広げて端をルリエッタに持たせた。

そして二人が離れた事で布は広げられ、そこに描かれた文字がデカデカと現れる。

七志はそれを見てリルの肩を叩いて抱きついているその体を離させる。

 

「リル、ゆっくりと後ろを振り返ってごらん」

「うぐ・・・な・・・な”によ”・・・」

 

ゆっくりと振り返ったリルの目に映りこんだその文字。

ネネも七志が生きていた事で喜んでいたのだがその文字を見て噴出す。

 

『テッテレー!ドッキリ大成功!』

 

それを見て固まるリル・・・

勿論この後、嵐の手によってあのテッテレーの効果音が付与されるのは間違い無いのだが、意味が理解できないリル・・・

ゆっくりと七志の方を涙目のまま振り返るリル・・・

 

「いや、ほら・・・俺死んでませんでしたードッキリ?みたいな?」

「・・・」

 

みるみる顔が赤く染まっていくリル・・・

つい先程みんなの前で七志が好きだと大暴露したのを思い出したのだろう。

七志が生きていて嬉しい、だけどナポレもルリエッタも七志が生きている事を知っていた・・・

それを理解し、顔を隠して走り出す・・・

 

「もういやぁああああああああああああああああああ!!!!」

 

顔が赤く染まった事で怒り狂うかと警戒していた七志、リルの行動に呆気に取られるが実は危機一髪であった。

現在の七志のHPは極限まで減っており、リルのパンチ一発で死んでいた可能性があるからである。

 

「はぁ・・・それで、説明してもらえるんですよね?」

 

歩いて近寄ってきたネネが七志に説明を求めた。

死神将軍との決戦だと言うのにも関わらず、こんなドッキリを仕込んだ理由を聞きたいのだろう。

 

「うん、俺の詐欺魔法・・・ウォーターの正体はね・・・死を偽装する魔法なんだ」

 

七志の説明は予想の斜め上を突き抜けていた。

人体の約60%は水分で出来ている、七志のウォーターはこの水分の動きを極限まで抑えて死を偽装する魔法なのだ。

その効果は他者のキーワードで発動する、今回の場合はルリエッタの口にした『息してない』である。

そして、その死を偽装している時間と死を信じた者の人数分だけ次の攻撃力が増すというとんでもない効果であった。

今回の場合であれば、死神将軍、リル、ネネ、そして奴隷商からスマイル館に住む事になった80名と町の住人35名。

死神将軍が七志の死を確定させる為に時間稼ぎをした時間とルリエッタが解除するまでが12分・・・

単純計算で約5000倍の攻撃力が七志の右拳に込められていたのだ。

当然死神将軍の結界を木っ端微塵にして、ついでにその体も粉砕するのに十分すぎる威力があったのは言うまでもないだろう。

 

「そして、このウォーターで作用する1撃だけの攻撃力増強に関わる力学の事を・・・『死んだふ力学』と言う!」

 

ドーン!と言う効果音が聞こえそうな七志の発言に唖然とする面々・・・

最早常識で理解が出来ない程の理不尽の塊、まさしく詐欺そのものな魔法の効果に開いた口が塞がらないのだ。

だからこそ・・・叫ぶだろう・・・

 

「ふ、ふざけるなー!!!!そんな、そんな無茶苦茶な魔法が想像出切る訳ないだろうがぁああああ!!!!」

 

その声に視線が一斉に集まった。

そして、驚愕と絶望の表情が再び浮かぶ。

そこには半壊した2つの頭蓋骨と1つだけ砕けなかったカーズの顔と手足がくっ付いた2頭身の骸骨が居たのだ。

そう、七志の一撃でも破壊し切れなかった体を集めて生き残った頭部がくっつき、その体を形成していたのである。

誰もが忘れていたのだ、かつてナポレの半身を骨で組み上げていた長兄の結界を使った方法を・・・

 

「ぐっ・・・がぁ・・・」

 

そんな状態にも関わらず、死神将軍は結界を出現させその場に居た全員を強制的に四つん這いにさせた。

こうなってしまえばナポレもネネもまともに戦う事も出来ない。

唯一離れた場所に居たリルが気付いて駆け出すが距離的に間に合わないのは目に見えていた。

七志のHPは既にギリギリまで減っており、魔法を使う事も出来ず、四つん這いにさせられたのでは抵抗も出来ない。

 

「形成逆転だな・・・この詐欺魔道士め、最後の最後にとんでもない事をしてくれたもんだ」

 

死神将軍は頭部の横から生えた腕の骨を振り上げに向かって飛ぶ!

そのまま殴れば七志が絶命するのは目に見えていた。

まさしく勝利を確信した死神将軍だったが、七志の口元がニヤリと歪んだのに気付いた。

 

「お前の言葉をそっくりそのまま返させて貰うとするよ死神将軍・・・」

 

四つん這いの状態から左手を背中の方へ動かす・・・

すると七志を押さえつけていた結界がその姿を消す。

むくっと立ち上がりながら七志は左手をアンダースローの形で飛び上がっている死神将軍目掛けてパスをするように投げた。

ずっと握り締め続けていたその手の中には最後のファイアーボールが握りこまれて居たのだ。

 

「戦いと言うのは始める前の事前準備で全てが決まるのだ!」

「ここに来てそんな物!結界で弾いてしまえば・・・」

 

ふわりと飛ぶファイアーボール、七志の体勢的にも体力的にも投げつけるのは無理だったので手首のスナップだけで放ったそれ。

投げつけられたのであればどうしようも無いが、軽く放られただけであれば結界の圧で反らす事が可能。

死神将軍は目の前に斜めに幾層もの結界を出現させ、反らすように圧を加える効果を付与した。

過去に兄弟を倒した威力を確認している死神将軍はそれを反らし、七志に一撃を加えて勝利するイメージが浮かんでいた。

だが、七志の最後の一言で空中で身動きが取れない死神将軍の顔は絶望に染まる。

 

「言った筈だろ?俺のファイアーボールは火属性ではなく物理攻撃なんだよ!!」

 

全てがスローになって死神将軍の視界に映る・・・

結界の圧を全く気にせずに、結界そのものも在った事すらも分からないくらい簡単に貫いた。

脳裏に浮かぶのは七志の言葉だ・・・

 

『このウォーターで作用する1撃だけの攻撃力増強に関わる力学の事を・・・『死んだふ力学』と言う!』

 

1撃、それは右拳で放たれた1撃だった筈・・・

しかし、それは間違いであった。

七志のウォーターによる死んだふ力学の効果は七志の攻撃力を5000倍にしていたのだ。

その時、右手に握り込まれていたファイアーボールは魔法を意識的に取り込む事が出来る魔法である。

つまり、右拳の一撃を加えて付与が解除されるその瞬間にウォーターの効果を取り込んだのである!

即ち、空中で身動きが取れない死神将軍目掛けてパスされたファイアーボールは通常の5000倍の威力の物理攻撃なのである。

 

「チッちくしょーーー!!!!!!!!!!」

 

それが死神将軍にヒットすると共にその身体ごと弾けた!

最後の最後に七志は実験に成功していたのだ。

1つのファイアーボールの中にウォーターと結界の2つの魔法を取り込むことに・・・

それはファイアーボールが死神将軍にぶつかった瞬間に内部から外へと圧を掛けて破裂させる!

死神将軍の骨の欠片一つ残す事無くこの世から完全に・・・

 

ドヴァアアアアアアン!!!!

 

七志完全勝利の瞬間であった。

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