「お父さん見て!お空が!」
「をををを・・・」
その日、この区で異変が起こった。
今までずっと薄暗かった空が青空に変わったのだ。
「ん・・・ここは?」
「あれ?私・・・寝てたの?」
「っ?!神父様!寝ていた子供達が!!」
魔石中毒になって意識を失っていた人々は目を覚まし、次々と起き上がっていく・・・
それと共に、この区で意識を失ったままだった者達も次々と目覚める・・・
七志が死神将軍を倒したその瞬間から波紋が広がるようにそれは連鎖的に広がっていった。
そして・・・
「キャアッ?!」
「オーナー?!」
「なんじゃこりゃー!?」
骸骨だったスケさんの体に内臓が生まれ、肉が生まれ、血管や神経が出現し皮膚が広がっていく。
とてもとてもグロテスクなその光景にスケさんの周囲からスマイル館の面々は一斉に距離を取る。
そして、そこには全裸の男が出現した。
「ってなんで髪の毛ないねん?!」
「いやそっちじゃねーよ?!」
彼だけではなかった、この区に居た骨だけの者は全て肉体が生まれ、人間に変化していった。
それはまさしく奇跡!
あちこちで全裸の人間が出現する異常事態が発生したが、誰もが不思議と感じ取っていたのだ。
この区を支配していた死神将軍がこの世から消え去ったのだと・・・
「ワアアアアアアアアアアア!!!!」
十二指町では歓声が沸き上がっていた。
スマイル館の面々だけではない、町の住人達も七志と死神将軍の戦いを見ていたのだ。
彼が死神将軍を倒したその瞬間に起こった出来事、それが死神将軍の死を表していると誰もが確信していた。
空が晴れ渡り、骸骨だった者が人間へと変わる。
まるで世界が書き換えられていくその光景に彼らもまた救われたのだと理解したのだ。
しかし、そこに七志達の姿は無かった。
「ちょっとなんでこんなにコソコソ逃げないと駄目なのよ?!」
「七志様と居ると本当に退屈しませんね」
「リルちゃん嬉しそう・・・フフッ」
彼等は沸き上がる歓声からもスマイル館の面々からも姿を消して町を脱出しようとしていた。
十二指町の路地を人に見つからないように隠れて走る彼等・・・
彼等は間違い無くこの区の英雄と称えられてもおかしく無いのだが、何故か逃げるように走っていたのだ。
その理由は・・・
『追跡者から逃げ切ってスマイル館まで戻れたら1人金貨10枚な!』
嵐の提案であった。
死神将軍と戦った面々に嵐が提案として出したのは、御存知『追跡者』であった。
この町で騒ぎになっている中に巻き込まれれば帰るのも遅くなる、なによりこの区の異変に付いて嵐の方でも色々調べる時間稼ぎでもあった。
特に、死神将軍との決戦動画を上げた後、視聴者が減るのを恐れた七志と嵐による自作自演とも言えるのだが、彼等の表情は晴れやかであった。
「でもあの門どうするんですか?」
ナポレの言葉にネネも頷く。
この十二指町は死神将軍の手によって外へは出られない様に門が二重に設置され、中からは開けられないのだ。
つまりこの町から出られないのであればスマイル館に帰れないのは明白、一体どうするのかと七志の方を見るが・・・
グッ!
何故か良い顔をしてサムズアップするだけの七志、HPが減りすぎてまともに走れもしないくせに何処か余裕である。
全く意味が分からない中、後方で一緒に移動するリルはルリエッタに尋ねていた。
「ごめんねルリエッタ、私・・・アンタと七志の事を分かっていながら目の前で告白なんかして・・・」
「ううん、リルちゃんが七志さんの事好きなのは分かってたから・・・それに、私は七志さんとそういう関係じゃないし・・・」
「えっと、そうよね・・・でもアンタも好きなんでしょ?」
そう言われルリエッタは猫背になって移動する七志の方をチラリと見て、頬を染めるが寂しそうな目をして・・・
「でも、私と七志さんは・・・違うから・・・」
「違う?」
どこか苦しそうな表情になったルリエッタにこれ以上聞くのは悪いと言う感じを受け取った。
そこへネネが混ざってくる。
「フフフッ恋話だったらお姉さんも混ぜなさい」
「っていうかアンタもキャラ変わりすぎでしょ」
「ネネさん猫被ってたの?」
「まぁね、ナナを守らなきゃならなかったから仕方なかったのよ・・・って、あっ?!」
そこまで話して思い出したのだ。
死神将軍に一緒に連れて行かれた妹がスマイル館の面々と共に町に残っているのを。
だが・・・
「まっあの子もスケさんと仲良くなっているみたいだし勝手に帰ってくるか」
「えっ?やっぱりそうなの?!」
「どこか距離が近い気はしてたけど・・・あの二人がねぇ~」
彼女達は知らない、今まさにスケさんはナナに全裸を見られて修羅場っている事など・・・
そして、それが『見せられないよ』で隠された動画にされて別の世界で公開されている事など・・・
更にスマイル館の面々が町の住人に詰め寄られ、七志の事を聞かれ捲くっている事を・・・
「さて、それではどうしましょうか七志様」
「うん、どうしようねナポレ」
門まで辿り着いた面々は中からは開けれない門の前で立ち止まる。
ここまで来てやはりどうしようもない状況だというのを再認識したのだ。
七志がクジンを倒した事で誰かが解放しているかもしれないと考えて居たのが非常に甘かったのである。
その時であった。
「あ・・・あの・・・」
突然声を掛けられて一同は振り返る。
そこには女が居た。
大きな葉っぱを何枚も繋ぎ合せて皮膚を隠した白い髪の美女。
服とはとても言えない姿の彼女は恥ずかしそうにしながらも七志達へ声を掛けてきたのだ。
白い髪から生えた2つのウサミミ・・・それが彼女が誰なのかを予想させた。
「貴方は・・・まさか?!」
「私・・・です・・・」
そう言う彼女は横にドアを出現させる。
それを見て彼女が誰なのかを理解した面々は口を大きく開けて固まる。
その黄色いドアには勿論見覚えが在り、それが彼女が誰かと言う証明でもあった。
「皆さんのお陰で元の姿に戻れました」
そうニコッと微笑んで七志に潤んだ瞳を向ける彼女。
この町に入った時に戦ったウサミミ骸骨なのだと理解するのに少し時間が掛かったのは仕方あるまい・・・
「お前女だったのかよ?!」