「このまま寝かせてあげましょう」
尾骶骨町にウサミミ美女の何処へでもドアを使用して帰ってきた一同、3日間泊まった宿に再びやってきていた。
安全の為に先にドアを潜った彼女が最初にスマイル館に到着したので金貨10枚は彼女の物になるのかで一騒動あったのだが、その前に七志の方が限界に来ていたのだ。
それも仕方あるまい、一般人にも負けるようなステータスでカーズと死神将軍の連戦に勝ち抜いたのだ。
命が幾つあっても足りないとまで言えそうな中を生き抜いたのだからそうなるのは必然であった。
「私、もう少しここに居る」
そう言うリルにルリエッタは微笑みながら頷いて耳元で囁く・・・
「リルちゃん、私に遠慮せずにキスとかしちゃえ」
「っ!?」
耳まで真っ赤にしたリルは大慌てだが、その様子の彼女を放置して一同は部屋を出て行く。
だがリルもまた戦いに疲れていたのか、眠る七志の手を握ったままベットの横で椅子に座ったまま意識を失う。
そんな彼女はきっと良い夢を見ていたのだろう、終始微笑を欠く事無く眠り続けていたのだから・・・
「さて、ワイ等は建て直しの協力するでー!」
「「「「おーーー!!!!」」」」
ウサミミ美少女が残したドアで十二指町の門から尾骶骨町へは自由に行き来できるようになり、スケさん達は全員戻ってきていた。
意識を失う前に七志から伝えられた通り、スマイル館を建て直す方向で話は進んでおり、大工に混じって一同は協力して新しいスマイル館を建設し始めていた。
そして・・・
「お父さん・・・どうしたの?」
「あぁ・・・エリ・・・」
涙を流しながら目を覚ました最愛の娘との再会を果たすナポレ。
何度も何度も七志に感謝の言葉を送りながら親子は再会を喜んでいた。
この光景も嵐の手によって動画化されてかなりの高評価をゲットしていたのは言うまでもないだろう。
翌日、目を覚ました七志は困惑していた。
リルが手を握ったまま布団の上から抱きつくように七志にしがみ付いていたのだ。
起き上がるに起き上がれない状況、スヤスヤと眠る彼女の顔が直ぐ側にありドキがムネムネする・・・
柔らかそうな唇が僅か数センチの所に在るのだ。
「リ・・・リル・・・」
大きな声を上げて誰かが部屋に入って来れば大スクープ待ったなしである。
その為起こすのに大きな声を上げられないので僅かに体を揺らして名前を呼ぶのだが・・・
「ぅぅ・・・んっ・・・」
甘い吐息が顔に当たる。
ミスリル呼びするのも忘れて七志は完全にテンパッていた。
そして、お約束の時がやって来る・・・
「七志さん起きたかな?ってえっ?!」
キィッとドアが開く音が聞こえてルリエッタの声が聞こえた。
それは今の状況を見て驚いたのだろう、リルの顔が目の前に在って入り口が見えないのだが、驚愕するルリエッタの声で現場を見られたと焦る。
「ル、ルリエッタ違うんだ、目を覚ましたらこんな・・・こんな・・・」
「七志さん・・・私と言う者が居ながらリルちゃんに手を出すなんて・・・」
「いや違う待て・・・っていうかルリエッタと俺そんな関係じゃないだろ?!」
「・・・ぷっぷぷぷぷ・・・」
焦る七志、その様子に目の前のリルが我慢し切れなくて笑い出す。
それと共にルリエッタが七志の視界に入るように移動してくる、その手には布が持たれており・・・
『テッテレー!ドッキリ大成功!』
反対側をウサミミの彼女が摘んでおり、含み笑いをしながら立っていた。
唖然とする七志、そんな七志の上に乗っかってるリルが腕を組んで宣言する。
「これでお相子よ!」
それはきっと七志が死んだドッキリに対する仕返しなのだろう。
だがそれもまた良し、上から降りたリルは両手を後ろに回して前屈みで「エヘヘ~」と可愛く笑う。
仕方ないなと大きく溜め息を吐いて七志は起き上がるのであった・・・
「をを~凄いな一日でここまで出来上がってるとは・・・」
「土台は前のをそのまま使ってるんやし、そんなもんやろ」
少しして外へ出た七志は現在建て直し中のスマイル館へと来ていた。
驚く事に建築士が様々な魔法を駆使してスマイル館の面々と協力し、建築を進めていたのだが・・・
既に1階部分が殆ど完成していたのである。
「いや~やっぱり魔法が自由に使えるって凄い楽じゃわい、お前さんのお陰なんだってな」
「いえ、そんな・・・」
建築士の男性にそう言われ七志も気付いたのだが、死神将軍を倒したあの瞬間から闇の魔石が無くても誰もが意識を取り戻し、さらに誰もが自由に魔法が使える様になっていたのだ。
それが七志のお陰なのだと言うことは一部の者しかまだ知らないのだが、今後広まっていくのは間違いないだろう。
なんにしてもこの区は救われたのだ、それを目の当たりにして七志は笑顔で建築現場の様子を眺める。
「七志様!もう大丈夫なのですか?!」
後ろから突然声を掛けられ、振り返ればそこにはナポレが歩いてこっちへ来ていた。
その横には手を繋いだ少女が歩いている、直ぐに七志は彼女がナポレの娘のエリちゃんだと気付き微笑みを向ける。
「あの・・・貴方が七志お兄ちゃん?」
「うん、目が覚めたんだねエリちゃん」
「はいなのです。あの・・・あ、ありがとうございました」
そう言ってお辞儀をするエリちゃんに微笑みながら七志は頭を撫でて告げる。
「お父さんが頑張ったから君は助かったんだよ、俺は少し手助けしただけさ」
その言葉に突然顔を真っ赤にしてナポレに背後に隠れるエリちゃん。
ではまた後でと一言残してエリちゃんはナポレと生活用品を買いに出かけた。
その様子を見送り、七志は宿へ戻った時であった。
「七志さん、少しお話があるのですが・・・宜しいですか?」
ウサミミ美女の彼女が声を掛けてきたのだ。
二人っきりと言う事で見せた事の無い真剣な表情に少し驚きつつ、七志は頷き返し食堂の開いている席へ着く。
暫しの沈黙、何か覚悟を決めた様な彼女は突然頭を下げて大きく告げる。
「本当にありがとうございました!」
それはカーズから解放された事への感謝なのだろうが、七志にしてみれば彼女に対して親切にしたどころか結構酷い事をしたような気もしていた。
だから少し戸惑いながら「気にしなくても良いよ」と小さく答える。
それを聞いた彼女は再び頭を下げ、顔を上げて七志の目を見て続ける。
「それで、死神将軍すらも倒す七志さんの力を見込んでお願いがあるのですが・・・」
「お願い?」
「はい、私・・・あっ私ソフィって言いますが、私の故郷を救って欲しいのです!」
そう机に両手を付いて前屈みになって告げるウサミミソフィ、死神将軍が倒されたことで彼女も肉体を取り戻しており、胸の谷間がバッチリ意図的に見せられております。
だが七志は胸の谷間よりもソフィの故郷を救うと言う話に意識がいっていた。
そして告げられる衝撃の事実・・・
「私は・・・驚くかもしれませんが・・・エルフなんです!」
「・・・はぁああああああああああああああああ?!?!?!?!?!」
少し言葉の意味を理解するのに時間を要した七志は大声で驚く!
だってソフィは何処から観てもウサミミなのである、それをエルフと言われて驚かないわけが無い。
そして、七志の叫び声に驚いたルリエッタとリルがやって来た。
「七志どうしたの?!」
「ミスリル・・・聞いてくれ、ソフィが自分はエルフだと言うんだ」
「うん?昨日聞いたけど・・・それが?」
その返答に七志は驚く、七志の中のイメージするエルフとソフィは余りにも違いすぎたのだ。
そして、少し強い口調で告げる!
「どこがどうエルフなんだよ?!」
「だったら七志の言うエルフって?」
「まず耳が尖ってて、美形で、寿命が長くて・・・」
七志の言葉にソフィの方を見るリル・・・
「耳、尖ってるし・・・美人だし・・・ソフィ今何歳?」
「えっと・・・149歳です」
「アンタの言うエルフそのものじゃない・・・」
納得のいかない七志であるが、続けてリルから出た言葉に開いた口が塞がらなくなるのであった・・・
「それで行くの?彼女の故郷・・・『レズの都』に」
「・・・はっ?」
七志の思考はそこでフリーズするのであった。