異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第48話 ルリエッタの秘密と女神召喚

ルリエッタの後を追いながら町を出た七志。

砂と骨で彩られた景色は死神将軍の消滅と共に一変し、緑溢れる世界へと変貌していた。

町の直ぐ近くに在る少し高い丘の上まで移動したルリエッタと七志は草の上に腰掛けた。

 

「綺麗な景色ですね」

「あぁ・・・」

「これを齎したのは紛れもない七志さんなのですよ」

 

ソッと七志の肩に手を置くルリエッタ。

その手をチラリと見て七志は聞くかどうするか悩んでいた疑問を口にする事にした。

全く理解の出来ないあの現象は紛れもなくルリエッタが何かをしたのだと理解していたからだ。

 

「それはそうと、ルリエッタ・・・君のあの力は一体なんなんだい?」

「・・・知りたいですか?」

 

首を傾けて覗き込むような感じで問い返すルリエッタ、七志はその顔を見て自分の勘違いではないと確信した。

死神将軍との戦いが終わった後、ルリエッタは間違い無く数年分成長していたのだ。

 

「あぁ、俺の右手を治した事と君の容姿が変化したのは理由があるんだろ?」

「やっぱり七志さんは凄いですね、多分半年位しか使ってないはずなんですけどね」

「半年?使う?」

 

七志がずっと疑問に思っていた現象、それは死神将軍との決戦の最中。

死んだ振り力学を利用したウォーターを発動させた直後、死神将軍の結界を銅貨で粉砕した時に右腕が粉砕骨折した筈なのだ。

だが最後の最後に反撃に出た時には七志の右腕は完治していた。

七志の詐欺魔法『ウォーター』は死んだ振りをしている間、周囲の者が七志を死んだと誤認している人数と時間だけ次の攻撃力を増す魔法。

そこに怪我を治したりする効果は無いのだ。

 

「七志さん、私・・・七志さんの事が好きです」

 

それは突然の告白、だが・・・

 

「でも私は貴方と一緒に人生を歩む事は出来ません・・・」

「それが君の能力と関係しているのか・・・」

「はい」

 

明るく話すルリエッタであるが、何処か寂しそうな瞳で七志を見詰める。

彼女が居た奴隷商でも異常種と呼ばれていた彼女の正体を知る者は殆ど居ないのだ。

それもその筈、彼女たちの種族がずっとそうして来たからなのである。

 

「私は召喚族のルリエッタ。自らの寿命と引き換えに力を使う事が出来る希少種なのです」

「そうか・・・」

 

その言葉で七志は全てを理解した。

あの時、死んだ振りをしている自分に近付いたルリエッタが何かをして七志の右腕を治した事実。

治療でもなく、時間を戻したわけでもなく不思議な現象・・・

まるで腕そのものを入れ替えたような感覚だったのを思い出した。

 

「俺の腕を召喚したんだな」

「はい」

 

召喚魔法、それは自らが知る物を魔法で呼び出す魔法。

だが何かを呼び出した時にその場所に在った物はそれと入れ替えられる。

何もない空間だとしても、そこに在った筈の空気や塵なんかは強制的に入れ替えられるのだ。

 

「ずっと七志さんの右手握っていましたから」

「だから俺の右手を召喚魔法で入れ替えたって訳なのか・・・」

「肘から先だけでしたので私の寿命半年で済みました」

 

そう笑顔で答えるルリエッタであるが、七志は深く溜め息を一つ吐く。

自分を犠牲にして行動されるのを極端に七志は嫌うのだ。

自らは命懸けで色々するくせに自分勝手である。

 

「なぁルリエッタ・・・今後は自分を犠牲にはしないでくれないか」

「・・・やっぱり私なんか迷惑ですよね・・・」

「違う、そんな事を言ってるんじゃない!」

 

強い口調で語る七志。

それは当然であろう、片腕を入れ替えるだけで寿命半年である。

もしも七志の全身を入れ替えたりすれば、1度の召喚で一体何年分の寿命を消費するのか分からないからだ。

告白はされたが共に歩めないと告げられた。

その理由がその魔法だというのであれば七志は使わせない方向で考え始めていた。

 

「俺は君を失いたくない」

 

それは嵐との連絡手段が無くなると言う理由もあるが、なにより自分を好いてくれた女性が居なくなるのを恐怖したのが理由であった。

世界がこうなる前に七志に好意を抱いてくれた女性アデル、生きているのかも分からないが死んでいる確率の方が高いのは間違いない。

魔育園の皆も何処かで生きてくれているか分からないのだ。

親しくなった人を失いたくないと考えるのは当然の事であろう。

 

「ありがとうございます。でも私は・・・私の種族はこれしか出来ないですから・・・」

『そんな事は無いぞー!』

「「えっ?!」」

 

突然聞こえたその声に驚きを隠せない二人。

お互いに手を触れ合っていないにも関わらず嵐の声が聞こえたのだ。

 

「相棒?なんで?」

『いやぁ~なんか分からんが多分死神将軍を倒したからじゃないかな?』

「そ、そうなのか?それで・・・そんな事は無いって一体どういう事だ?」

『いやぁ~どうにもお前等のステータスがこっちで一緒に確認できるみたいでな、それで面白い事が分かったんだ』

「面白い事・・・ですか?」

『七志、お前の所持金をルリエッタちゃんに白金貨1枚ほど送金しようと意識してみてくれ』

「なんか良く分からないけどやってみよう」

 

そう言って七志はいつもの口座からお金を出現させる感覚で、ルリエッタに送金するイメージを行なった。

嵐から入金される時の感覚を逆転させたような感じで行なえば嵐の言った通り簡単に実行する事が出来、七志の口座の残高が減少した。

 

「出来たみたい・・・かな?」

『よし、それじゃあルリエッタちゃん試しに寿命ではなく、自分の中に貯金箱が在るイメージを意識してそこからお金を取り出すのを意識してみて』

「えっと・・・こう・・・かな?・・・えっ?これって・・・まさか!」

 

それは七志の右腕をルリエッタが召喚したからこそ出来たバイパスであった。

そこを経由して送金されたお金を出現させる事は勿論ルリエッタには出来ない。

だが彼女は自分の体に宿ったその感覚に驚いたのだ。

 

『そう、どうやらルリエッタちゃんは寿命を使わなくても七志にお金を振り込んで貰っておいて、それを使えば召喚魔法が寿命を減らさずに使えるみたいだよ』

「すごい・・・そんな・・・」

 

それは彼女達一族にとってみれば奇跡とも呼べる所業であった。

平均寿命が能力のせいで15年にも満たない為に絶滅危惧種とも言われている召喚族、それが寿命を消費せずに召喚魔法が使えると言うのだ。

 

『試しに何か呼び出してみたら?』

「で・・・でもこの異常な魔力量じゃ・・・」

『大丈夫大丈夫、それ全部七志のお金だから使い切っても寿命は減らないし』

「七志さん・・・」

「あぁ別に構わないから使ってみな」

 

そう言われルリエッタは目を閉じて今使える魔力を全て使って呼び出せる存在を意識した。

それは彼女達一族にとっては命懸けですら呼び出せない高位の存在を呼び出す事となる・・・

両手を伸ばしたルリエッタ、その前に光が集まり空間が歪んでそれは突如出現した。

 

長い前髪で目が隠れた美女がそこに出現したのだ。

白い羽衣を来たその存在は目を開いて周囲を見渡す。

そして七志とルリエッタをそのオッドアイが見詰めた。

 

『我を召喚した存在はお前か?』

 

怒っている感じでは無いのだが、何処か威圧感を感じる言葉にルリエッタは言葉が出なかった。

それに気付いた七志が口を開く。

 

「ごめんなさい僕の魔法が・・・」

 

七志にとっても神々しすぎたその存在の威圧に押されて、俺ではなく僕などと言っていた。

だが普段を知らないその存在はジッと七志を見詰めて口を開く。

 

『それで我に・・・』

「ごめんなさい、誤作動なんです!用は別に無いんです!」

『えっ・・・?』

 

その言葉に固まる女神・・・

だが何処か楽しそうに口元を歪め七志を見詰めて口を開く。

 

『お前とは何か縁を感じる・・・七志か、そっちはルリエッタだな』

「どうして・・・僕等の名を・・・」

『名乗るのが遅れたな、我が名は女神『フーカ』だ。またお前達とは会えそうだから名乗らせて貰うよ』

 

そう言ってフーカと名乗ったオッドアイの女神はその姿を消した。

女神を召喚魔法で呼び出したと言う事実にルリエッタは驚き固まっていたのだが・・・

 

(やべぇ、また会うとか言ってたけどこの短時間で白金貨1枚消費するとかどこの風俗店だよ?!)

 

1人ショックを受けている七志なのであった。

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