「ほらっ二度目は無いぞ」
「七志さん!」
「七志!」
まるでごみを投げ捨てる様に七志の体が宙に舞う。
黒服に強烈な一撃を喰らい、意識を無くした七志はパンツ1枚の状態でドームから放り出されたのだ。
それを追いかけるルリエッタとソフィア、幸いな事に二人にはお咎めは無しである。
「ルリエッタ、そっちお願い」
「は、はい・・・」
意識の無い七志の両腕を肩に回し、二人は半裸の七志を連れてその場を後にする。
勿論、ガレフは借金の肩に奴隷落ちが確定し、そのままドーム内に残されたままである。
「一度ガレフの家に戻るわよ」
「・・・はぃ・・・」
消沈し放心状態のルリエッタの様子を見たソフィアは七志を何とかしようと行動を促す・・・
だがソフィアが想像しているのとは違い、ルリエッタは怒っていた・・・
その理由は・・・
『ブハッブハハハハハッ!!!!ヒィハァアアアアアア!!!やべぇぇ!!!ギャハハハハハハ!!!』
『ちょっと笑い過ぎじゃないですか!!!』
『だっだってよ・・・うぷぷっ・・・ぎゃはっギャハハハハハ!!!』
そう、七志に触れている事で今、ルリエッタは動画で現在の状況を閲覧している嵐と繋がっていたのである。
七志の意識が無いという状況ではあるが、命に別状はないという事は嵐の様子から理解しており落ち着いていたのである。
だが、それでも自らが信頼し親愛している七志の状況を爆笑する嵐に怒りが沸かない訳もないのは仕方ないだろう。
『いやぁ~悪いルリエッタちゃん、でも今回のは本当バズるぜ!』
『バズ・・・る?』
『あぁ、まぁ簡単に言うとこの状況すらも一儲け出来る理由になるって訳だ』
『ぅぅ・・・なんだか納得いきませんが・・・』
嵐は七志の異世界生活を動画化しユーデューブに掲載し、それを閲覧された回数で報酬が支払われる。
そこから七志に分配が配られるのである、その部分はいまいちルリエッタは理解していない、だが七志の行動で何故か金銭が発生しているという事は理解していた。
それでも七志が痛い目を見るのは納得がいかない、ルリエッタの優しい性格がまた動画の中で彼女の人気を高めているのだが本人は勿論知る由も無い。
『まぁ、相棒の事は心配しなくてもいいさ。俺の方でも作戦は既に練ってある』
『その点は心配してなんですけど・・・』
チラリと意識の無い七志の横顔を見て深いため息を一つ吐くルリエッタ、だが同時に嵐の言う作戦に期待しているのも事実であった。
そうこうしている間にガレフの家に到着し、適当に七志を床に横に寝かせた。
戻ってくる際に何人か近所の者と目が合ったので家に突撃されることは無かったが、七志の現状を見て視線を外されたのは言うまでもないだろう。
きっとギャンブルで一文無しになって逃げかえったと思われた。そうソフィアは考えていた。
「それで、どうしよう・・・ガレフ奴隷になっちゃったよ・・・」
そう寝ている七志を見詰めながら呟くソフィアにルリエッタは告げる・・・
「大丈夫ですよ、七志さんがこれで諦めるわけないじゃないですか!」
「る、ルリエッタ?あんた・・・」
先程まで自分が考えていたルリエッタの心境と全く違う様子の彼女にソフィアは困惑する。
だがそれも仕方ないだろう、彼女にはルリエッタと嵐の会話は聞こえないのだから。
「ぅ・・・ぅぅ・・・」
「あっ!七志さん、大丈夫ですか?」
「こ・・・ここは・・・」
ゆっくりと呻きながら目を開いた七志、周囲の様子を確認しながら念話で嵐から状況を聞いていた。
少しの間虚ろな様子で話を聞き終えた七志は一度目を閉じて深く呼吸をしてゆっくりと起き上がる・・・
「ぐっ・・・いてて・・・」
「無理しないで、意識を失う程の攻撃受けたんだから」
ソフィアが心配してナナシの背に手をやるが、七志はそれを手で制する。
そして、七志の目を見て彼女は言葉を失った。
「やられたらやり返さないと!」
先程痛い目を見た男の目ではない、まさしく獲物を狩る強者の目付きだったのだ。
そして、その視線が落ちている1枚の紙に移動する・・・
「ルリエッタ、近所のガレフに金を貸しているって人を誰か一人呼んできてくれ」
「う・・・うん、分かった」
ルリエッタが出ていくのを見送った七志はゆっくりと立ち上がる、だが自分がパンツ1枚の姿に今頃気付き目の前に立っていたソフィアと目が合って・・・
「えっ・・・」
「えっ?」
「エッチィイイイ!!!」
「えぇぇぇぇぇ?!?!?!」
七志の大声に驚くソフィア、そして隣人を一人連れてきたルリエッタは家の前で隣人と共に固まっているのであった・・・