異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第6話 賭場へ舞い戻るナナシ達

ひまつぶシティ最大のギャンブルドーム『1or8』

この区唯一の街だが、その中で特に目立つその建物に変化が今夜起こるなどと誰が予想できたであろうか・・・

 

「いらっしゃいま・・・」

「おう邪魔するぞ」

 

数時間前にドーム内でギャンブルドックの指摘で身包み剥がされ、店外へ放り出された七志を先頭に数名の人間がドーム内へ足を踏み入れた。

その姿を見た者達は誰もが驚きに息を止めてしまう・・・

それは入り口に立っていた黒服も例外では無かった。

 

「えっ・・・」

 

スロットタイプの魔動機で銀貨を投入していた男性が慌てて手にした銀貨を落とす。

それも仕方ないだろう、七志の後方を歩く数名の男の姿を目にしたのだから・・・

 

「あれは・・・」

「ガレフ・・・」

 

ドーム中央、そこは競馬ならぬ人が走る競人コーナー。

そこにガレフの姿は在った。

次のレースに出されるのだろう、首には奴隷を表す首輪が装着され、足首には重しを付けるリングが装着されていた。

それに気づいた七志は小さく声に出してしまったが、視線を反らしてそのまま奥へと歩を進める・・・

同時にソフィアも名を呼んだが意識を切り替え七志に付いて行った。

 

「おや、あなたはさっきの・・・それに後ろのあなた方は・・・」

「よぅ支配人、今日はちょっと儲け話に乗らせてもらってな、邪魔するぞ」

 

七志達の後方に付いてきていた男が支配人と呼ばれた男に挨拶をする。

その姿を見て支配人は一筋の汗を流した。

 

その男こそ、ひまつぶシティの帝王と呼ばれる金貸し『マン・ギンジョー』であった。

どんな相手であろうと金を貸し付け、完璧に金利込みで回収する鬼と呼ばれる男である。

この町の上に立つ者で彼の顔を知らない者は居ないであろう・・・

 

七志は数名の客が座るベット台の開いているイスに腰掛け、その横にルリエッタを誘った。

七志の後ろにはギンジョーとその部下が立ち、ソフィアはその肩を捕まれている・・・

 

「お客様、ルーレッタに参加されると言う事でよろしいでしょうか?」

「あぁ、先程のお礼をさせて貰いに来たんだ」

 

そう言って後ろに立つギンジョーに手を出して告げる・・・

 

「とりあえず、銀貨100枚と金貨200枚頼むわ」

「あぁ・・・忘れてもらっては困るが、金利は10%だ」

 

そう言って七志の手に銀貨と金貨が入った袋が2つ渡される。

その重さに椅子から転げ落ちそうになった七志であるが、ルリエッタの助けもあり下へ落とす事無くベット台の上にそれを置いた。

その額日本円で実に201万円、それを見て支配人は理解した。

 

(なるほど、後ろの女を担保に金を借りて勝負に来たのか・・・だが・・・)

「お客様、一応申し上げておきますが・・・当店では奴隷の売買は行っておりません」

「えっ・・・そんな!」

 

支配人の言葉にソフィアが驚きの声を上げる。

それはそうだろう、ガレフを助ける為にこの場に来たはずなのだから・・・

だが・・・

 

「言っただろ?俺はあんた達へお礼をさせて貰いに来たんだ。奴隷なんかどうでも良いんだよ」

「かしこまりました。それではゲームの説明をさせていただいても?」

「あぁ・・・」

 

そう言って支配人はゲームの説明を開始した。

ルールは簡単、回転する円形のボードに支配人が銀の球を1つ逆向きに転がし入れて、それが何処のポケットに入るか予測するゲームである。

ポケットには奇数が赤で偶数が黒の色が振り分けられており、0のみが緑で1~36までの数字が振られている。

当たった場合はベットマスに置いた額に応じた報酬が変換され、倍率は0が300倍、色を当てた場合は2倍、数字を当てた場合は35倍である。

ベットは銀玉が1周した時点で受付終了され、それ以降の変更は禁止されている。

勿論、魔法やスキルを使用すれば近くに居るギャンブルドックが反応し、黒服が瞬時に使用者を取り押さえるので不正は不可能。

そもそもギャンブルドックが反応した時点で身包み剥がされ、店外へ放り出されるのは言うまでも無いだろう・・・

 

「宜しかったですか?」

「あぁ、じゃあゲームを開始しようか!」

 

そう言って七志は銀貨の袋を開こうとするのだが・・・

 

「おっと、一応申し上げておきます。そちらの女性の方、その席に座られるのでしたら賭けに参加して頂くルールになっていますが?」

「えっ?」

 

支配人に告げられルリエッタは慌てて席を離れようとするのだが・・・

それを七志が制した。

 

「そういうルールならルリエッタ、これを使うと良い」

「でっでも七志さん・・・」

「君は俺の幸運の女神になってくれたら良いんだ、だから頼む」

 

そう言って銀貨の袋から七志は10枚取り出してルリエッタの前に積み上げた。

少し悩んだ後、ルリエッタは1回頷いて席に戻る・・・

 

「すまないな、待たせて・・・それじゃあゲームをスタートしようじゃないか!」

「かしこまりました。それではベットを開始して下さい!」

 

そう言って回転盤が回される。

そして、七志は銀貨の袋に手を入れて・・・

 

「えっ?!」

 

七志は1~36までの全ての数字の上に銀貨を1枚ずつ並べていった。

それを見て後ろで立っていたギンジョーが驚きの声を漏らす。

当たり前である、0以外の全てのマスに賭けて当たったとしても倍率は35倍、銀貨36枚を賭けて35枚返ってきても損をするだけなのだから。

その様子に驚いたのはルリエッタも同じであった。

 

「それでは入ります!」

 

支配人が銀玉を転がし入れた。

それを見てルリエッタに七志が声を掛ける。

 

「ルリエッタ、賭けないと!」

「あっは、はい!」

 

慌ててルリエッタは銀貨を2枚持ってベット台に置こうとするが、何処に置くか決めていなかった様子で手が止まる・・・

そうしている間に銀玉は半周を過ぎて慌てたルリエッタは唯一誰も賭けてない緑の0へ銀貨を2枚置いた。

 

「そこまで!」

 

支配人の声が響き、ベット台の上の金の移動が終了する。

他の者は黒と赤のベットに金を置いており、それを見た支配人は嬉しそうに転がる銀玉がポケットに入る瞬間を見詰める・・・

勿論不正の無いように黒服数名がベット台の上は見張っているので支配人が目を反らしても問題は無い。

回転盤が徐々に回転を弱め、銀玉が仕切りにぶつかり、何度か跳ねて一つのポケットに・・・入った。

 

「黒の18!」

 

その声が響き回転盤が止められ、最初の勝負が終了するのであった・・・

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