異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第7話 ナナシの作戦はローリスクハイリターン

「こちら、配当金となります」

 

支配人の横に立つ黒服が集計を行い、支払われる報酬を各々の前へ配っていく・・・

その間に別の黒服がベット台の上の金銭を全て回収し、それの仕分けに入っていた・・・

七志の前に置かれたのは勿論銀貨35枚である。

 

「それでは次のゲームに参りたいと思います。よろしいですか?」

「あぁ、よろしく頼む」

 

支配人は七志の返事を聞いてから、周囲に座る人達にも視線で許可を得てルーレット台の上の銀玉を回収した。

そのまま右手に銀玉を握ったまま腕を広げて告げる・・・

 

「それでは、ベットを開始して下さい!」

 

七志はその宣言を聞いてから手元に在った銀貨35枚に手を伸ばし・・・

 

「えっ?」

「なんだ?」

「どういう事なんだ?」

 

周囲の参加者がナナシの配り方に興味を示した。

それはそうだろう、ナナシは最初銀貨36枚を全て1枚ずつ1~36の数字の上に置いていた。

それで回収できた35枚を今度は1枚ずつ、先程ポケットに入った18番以外の番号の上に置いていったのだ。

 

「な・・・七志さん?」

「ルリエッタ、心配しなくてもいい。俺は勝つから」

 

心配そうに七志を見詰め呼びかけるルリエッタ、それに優しい声で答える七志にルリエッタは頷き再び銀貨を2枚手に取った。

 

「じゃあ私はこれで・・・」

 

そう言ってルリエッタが置いたのは先程と同じ緑の0に銀貨2枚であった。

それをチラリと薄目で支配人は確認する・・・

顔は笑顔だが、その目は確実に何かを見透かそうと暗躍している様子である。

伊達にこの賭場の支配人を務めている訳ではないのだろう・・・

 

「皆様、宜しかったでしょうか?それでは入ります!」

 

支配人の確認の言葉が告げられルーレットが回される。

全員の視線が集まる中、支配人が銀玉を転がし入れた・・・

今度は席に着いて居る全員が既にベットを終了しており、銀玉が1周した時点で支配人の言葉がスムーズに告げられる。

 

「そこまで!」

 

ルール説明の通り、銀玉が丁度1周した時にベットの変更を終了する宣言が行われる。

全員の視線が回転するルーレット盤の上に集まり、その動きを誰もが息を飲んで見詰める・・・

滑らかに転がる銀玉は音を立てながら逆回転する盤上を何周もし、ポケット間の仕切りに当たって何度か跳ねた後一つのポケットに収まった・・・

 

「赤の23!」

 

先程と同じように支配人がポケットの数字を読み上げ勝負が終了した。

七志とルリエッタ以外の数名は適当に数字に乗せていたり、黒と赤の色のマスに賭けていたのだが、歓喜や落胆の声はあまり聞こえなかった・・・

それもその筈、誰もが七志の賭け方に興味を持っていたのだから・・・

 

「こちら配当金になります」

 

そう言って黒服が今回のゲームの配当金を配りだす。

勿論七志の前には銀貨が35枚戻ってきた。

2ゲームを終えて、七志の成果は銀貨1枚のマイナスである。

そうこうしている間に別の黒服が盤上の金銭を回収し、先程と同じように仕分けを開始する。

支配人も銀玉を回収し、同じように両手を広げて告げた。

 

「それでは次のゲームに参りましょう、皆様ベットを開始して下さい!」

 

その言葉を聞いて七志は手元に在る銀貨35枚を横へズラし、金貨の入った袋に手を突っ込んだ。

それを見て席に座っていた数名が見に回ろうと立ち上がる。

席に座るのがゲーム参加の意思表明であるのでそれは直ぐに分かった。

だが七志達の後ろに居るギンジョー達を怖がり、一定距離を保ったままの状態ではあるが・・・

 

「じゃあ今回はこれで!」

 

そう宣言した七志は先程入った黒の18と、赤の23を除いた34マスに金貨を1枚ずつ並べていったのである。

金貨は日本円に直すと1枚約1万円、実に盤上に34万円が置かれた計算になるのである。

 

「をを・・・」

「マジか・・・」

「勝負に出たなアイツ・・・」

 

周囲の人間が七志の賭け方に興味を持ちザワザワと騒がしくなる・・・

その声を聞きつけ、他の者もこのゲームを覗き始め人が増えていく・・・

 

「じ・・・じゃあ私は・・・」

 

そう言ってルリエッタは銀貨を2枚、再び0のマスに置いた。

その動きを見て誰もが目を光らせ興奮していた。

そう、七志が行っているのはくじ引きスタイルなのである。

ポケットに入った数字を除外してそれ以外に賭ければ高確率で当たる、何故なら同じポケットに銀玉が入る確率は約2パーセント。

先程ポケットに入った2マスと0以外に入る確率は実に81%にも登るのだ。

つまり、この高確率の状態にした上で賭け金を上げればローリスクハイリターンが成り立つという戦法なのである!

 

(とでも思っているのでしょうが、そんな甘い世界じゃないんですよ・・・)

「それでは、入ります!」

 

ニヤリと小さく口元を誰にも気づかれないように歪めた支配人は宣言し銀玉を回転する盤へ転がし入れる・・・

誰もが固唾を飲んで見守る中、転がる銀玉が1周した時点で声が上げられる!

 

「そこまで!」

 

ベット台上の金銭移動が終了し、結果を誰もが見守る・・・

七志が当たれば銀貨1枚の負けから一気に金貨1枚の勝ち、日本円にして100円のマイナスから9900円のプラスに転じるのである!

そして、転がった銀玉は仕切りに何度もぶつかって跳ねる・・・跳ねる・・・跳ねて・・・

 

「えっ・・・」

「う・・・」

「うそだろ・・・」

「なんてことだ・・・」

 

銀玉がポケットに入った瞬間七志の声が漏れ、続いて数名の観客の声が漏れた・・・

それは仕方ないだろう・・・

 

「赤の23!」

 

先程と同じポケットに2回続けて入り、七志は金貨34枚の損失を出したのだから・・・

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