異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第9話 ギンジョーとの出会い

時は少しだけ巻き戻る。

パンツ1枚のままガレフの家から案内され、七志達はハンニバル商会の建物前へ来ていた。

 

「たのもう!」

 

威勢よくドアを開ければ視線が七志に集中する、勿論パンツ1枚の姿でアウトである。

だがそんな事を気にも止めずに七志はカウンターの方へ歩いていった。

目の前には金髪の受付嬢、勿論顔が引きつっているのは言うまでもないだろう・・・

 

「お、お客様?」

「悪いんだけど、俺に金を貸してくれない?」

「えっ?えっと・・・」

 

突然やって来たパンツ1枚の男が金を貸して欲しい・・・

それは当然受け入れられる話では無い、担保どころか肌着一枚すらも身に着けていないのだから・・・

だが相手もプロ、こういう相手には決まった対応があるのだ。

 

「お客様には当方ではお貸しする事は出来ませんが、どうしてもお金が必要と言う事でしたらご案内させていただきます・・・」

 

そう伝えられ、七志は1枚の用紙を手渡された。

そこへ行けと言う事なのだろう・・・

それを受け取った七志は入り口の方へ声を掛ける。

 

「ルリエッタ持ってきて」

「はーい」

 

七志の呼びかけで入り口のドアが再び開かれ、押し車を押したルリエッタとソフィア、そしてガレフの近所の面々4名が中へ入ってきたのだ。

大きな布がかけられた押し車は荷重でタイヤがギシギシと軋む音を立てている。

入り口のドアが広かったのでそのまま入ってきたのだが、どう考えても非常識そのものであった。

 

「お、お客様?!」

 

受付が裏返った声を上げるが、七志は押し車の横にくっ付けてあった紙を数枚引き剥がして受付へ告げる。

 

「この分の借金を返済したいから清算宜しく!」

 

そう言って布を引きはがした!

そこにあったのは・・・

山盛りとなった銀貨の山であった。

その枚数実に6万枚!

日本円にして約600万円分の銀貨がそこに在ったのだ。

 

「あわ・・・あわわわわわ・・・、し、少々お待ちくださいぃ~!」

 

受付嬢は慌てた様子で上司を呼びに行ったのだろう、七志はソフィアとガレフ宅近所の面々に、はがした布を体に巻きながらニッコリと微笑み・・・

 

「それじゃ後宜しく、残った差額は手間賃って事で4人で分けて下さい」

「「「「うぉぉぉぉぉおおおおお!!!!」」」」

 

大いに盛り上がる一同、それも仕方ないだろう。

ガレフの借金だけで利息込み金貨180枚、銀貨に換算すれば1万8000枚である。

その他の面々の借金も合算すれば金貨500枚以上になるのである、それを4人で割れば一人金貨30枚にもならないのだ。

それでも借金が完済出来て、金貨まで貰えるのだから喜ばない筈はないのである。

 

「おーおーなんか騒がしいこっちゃのぉ」

 

低い声が周囲に響き、奥の部屋から数名の男がやって来た。

その中で一人気配の違う男が居た・・・

強面の顔付きに幾つも修羅場を潜り抜けていた様な気配、騒がしかった場を一声で沈める声質・・・

 

「お前さんか?金を借りたいって言ってるのは?」

「あっ、もしかしてこの?」

 

七志は先程受付嬢から手渡された用紙を見せながら訪ねる。

まるで『勝訴!』という感じで提示するのはネタが相手に通じていない様子ではあるが、この光景も嵐によってユーデューブに上げられているので七志は貫き通した。

 

「くくっ・・・中々面白い兄ちゃんやな、そや、ワシが『マン・ギンジョー』や」

 

用紙に書かれていた名前を名乗られて嬉しそうに七志は頭を下げる。

 

「すみません、この後お伺いさせて貰おうと思ってました」

「えぇてえぇて、こっちはこっちの用事でここに来とっただけやからな。それでワシに用事って事は金を借りたいんやろ?」

 

そう言ってギンジョーは視線を荷台の方へ向ける。

全て銀貨の様で、大まかな枚数は6万枚~6万5千枚ぐらいだろうと予測を立て、ギンジョーは七志に向き直る。

 

「俺は貸した金は必ず返して貰う、例えそれがお前の体を切り刻んだとしてもや・・・その覚悟が在るんやったら金利10%で貸してやるで」

「ちょっ、ちょっと待って下さいよ!」

「あぁん?」

 

ギンジョーの言葉にすぐ後ろを歩いていた小太りな男が声を挟んできた。

先程から青ざめた表情を浮かべながら、ギンジョーに媚びを売っている様子だった男である。

七志達は知らないが、この男こそが受付嬢が呼びに行ったここハンニバル商会の会長『ハンニバル』その人である。

 

「ハンニバルはん、あんさんとの話は付いているやろ?火事で権利書が灰になったんやったら買い取るのは不可能やと言ったはずやで?」

「だ・・・だが、燃えカスとはいえ、ここに・・・」

「だから、それをどうやって証明するん?もう一回権利書を買ってくるしかないやろうから金を貸すって言ってるじゃないですか?」

「し、しかし・・・2兆デールの金利が40%って・・・」

 

2兆デール、それは日本円に直して約200億円にも登る大金である。

幾らハンニバル商会が優良企業で借金返済が滞りなく行われる企業だとしても、そんな額をホイホイ貸し与える事が出来るギンジョーの保有資産に七志は驚きを隠せなかった。

そして、その話を聞いて七志は笑みを浮かべてギンジョー達に声を掛ける・・・

 

「ギンジョーさんっでよろしかったですね?一つ大きな儲け話が在るのですが・・・」

「ほぅ・・・」

 

七志の言葉にギンジョーの目がギラリと光る。

目の前で繰り広げられた兆という桁の話を聞いた上で『儲け話』と言う言葉を発した七志に興味を持ったのだ。

金利だけで800億デール、日本円に換算しても8億と言う儲け話の後に『大きな儲け話』と言う言葉を持ち出した七志の言動に、通常なら信憑性など全く皆無であろう。

ただでさえパンツ1枚で、どこかのビーナスの様に体を布で巻いただけの七志の言葉・・・

だが、ギンジョーは金貸しとして多くの人をその目で見て来た。

どんな企業であろうがTOPに立つ人間が最も必要とする技能、人や勝機を見抜く力がギンジョーにも備わっていた。

それが七志の発言に信憑性を持たせたのだ。

だが・・・

 

「き、貴様黙ってろ!今俺が話しているんだぞ!」

 

その七志の言葉をさえぎって会話を無理やり続けようとするハンニバル、それだけで七志もハンニバルが大した事の無い男だと感じ取るには十分であった。

だから七志はハンニバルに構うことなくギンジョーとの会話を続けた・・・

 

「っでだ、話の続きだが・・・あんさんが俺から金を借りるとしてだ・・・こっちも商売なんでね、担保を取らせてもらいたいわけよ」

「担保・・・ですか・・・」

 

七志はその言葉を聞いて、チラリとハンニバルに初めて視線を送った。

いや、正確にはハンニバルが持つ2兆デールの価値が在るという燃えカスに・・・である。

 

「俺の魔法をあなたの元で使ってお仕事のお手伝いをするというのはどうでしょうか?」

「あぁ・・・?」

 

七志の言葉に首を傾げるギンジョー、それはそうであろう、この区では魔法は希少金属を使用しなければ使用できない特別な能力である。

似たような物にスキルが在るが、そちらは高い技術を再現できる、この二つは似て非なるモノである。

だが、魔法とは言えギンジョーの知るモノは火を起こしたり氷や水を出現させたり、特殊な物に至っては魔力を込めて強化させる事が出来るくらいのモノである。

それが一体なんの手伝いになるのだと言うのか、ギンジョーには想像が及ばなかったのだ。

 

「俺の魔法は特殊でしてね、例えばその燃えカスを直したり出来る・・・って言えばその利用価値はお分かりですよね?」

 

その言葉にギンジョーは凶悪な笑みを浮かべてハンニバルの肩に腕を回した。

嘘か真実か分からない、だが七志の言葉に嘘は無いと直感で判断したのだ。

極稀にこういう希少な特殊魔法を使える者は存在し、可能であれば手元に置いておきたいと考えるのは当たり前で有ろう。

 

「えぇやろ、ちょっと奥で話そうか?」

 

ハンニバルの肩に腕を回したままギンジョーはチラリと広場の方へ視線をやる。

必死にハンニバルの部下達が七志の持ち込んだ銀貨を数えている様子、その銀貨を七志が魔法を用いて用意したのだとしたら・・・

正確には七志はユーデューブで嵐が稼いだ金を報酬として一部貰い、それを出現させただけなのだが、ギンジョーがそんな事を知る筈もない。

だが、実際にハンニバル商会から金を借りていた者が数名、七志の手によって救われたという事実を目の当たりにしているのである。

七志が自分を騙そうとしているのだとしても、自分が損をしないように立ちまわる自信のあるギンジョーだからこそその提案に乗ったと言っても良いだろう・・・

例えそれが、ギンジョー以外の者全てが地獄に落ちる事となる方法だとしても・・・

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