異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第16話 異世界恒例の冒険者ギルドの洗礼

ギンジョーに1or8で別れを告げた七志達一行、ギンジョーから聞いた情報を確かめようとこの町の冒険者ギルドにやって来ていた。

同行しているガレフがブツブツと『レズの都に冒険者を案内しているという情報があり得ない』と独り言を言っているので、その真相を確かめる為にソフィアと共に行動をしていた。

だが七志とルリエッタは別の目的がある、それは勿論・・・

 

「よぉよぉ~女連れで僕ちゃんがこんな所に何の用だい~?」

 

冒険者ギルドに入った瞬間、七志達は異世界の恒例となった先輩冒険者に囲まれる洗礼を受けていた。

勿論動画の方では大盛り上がりなのだが、実際に囲まれる側にとっては迷惑極まりない。

本来であればそうなのだが・・・

 

「どいてくれる?」

 

七志から告げられたのは冷ややかな一言・・・

呆気にとられた冒険者達は固まってしまう、それはそうだろう人は予想外の自称が起こると思考が一瞬停止してしまうものなのだ。

その隙に、七志はルリエッタの手を引いて間を通って受付の方へ向かう・・・

当然無視をされた冒険者たちは面白くない、なにより怖がる七志の姿を期待していただけに予想外の迫力に一瞬でも驚いたのが怒りに火を付けたのだ。

 

「おぉ?!こら待てや!」

 

一人の怒声と共に手が伸びてきて七志の肩を掴んだ!

そのまま勢いよく自分の方を向かせようと引っ張ったのだが・・・

 

「ぎゃああああああああ!!!!」

 

響く絶叫!

驚きに固まる冒険者たち、それはそうだろう・・・絶叫を上げたのが七志だったからである。

だがそれも仕方ないだろう、七志の肩は無理やり引っ張られたせいで脱臼していたのだ。

ブラリと垂れる腕、苦痛に歪む表情、とても演技とは思えない現実がそこに在った。

 

「いきなり何するんですか!?」

 

七志に駆け寄ったルリエッタの怒りの声がギルド内に響く。

その光景を呆気に取られて見ているソフィアとガレフ・・・

 

「ひどい・・・私達何もしてないのに・・・いきなりこんな事するなんて・・・」

 

ルリエッタの鳴き声が漏れ、苦痛に苦しむ七志が呆然としている受付嬢の方を見て告げる。

 

「ここの冒険者ギルドでは、ギルド口座間の振り込みに来た客を襲って怪我をさせるような冒険者を使っているんですか!」

 

痛みに耐えながら七志の口から怒声が告げられる。

その言葉を聞いて真っ青になった受付嬢、慌てて奥の事務所に居る者へ通達に走る。

そう、七志は告げたのだ。

ギルド口座間の振り込みと、つまり七志は冒険者ギルドに口座を持つ一定以上の資産を持つ冒険者で、振り込まれる先は別の区の冒険者ギルドである事を告げたのだ。

この区にはここにしか町はなく、見た事の無い七志達が振り込むとなれば、別の区の冒険者への振り込みの可能性が高く・・・

区を跨いだギルド口座への振り込みは多額の手数料が発生し、それは全て冒険者ギルドの売り上げとなる。

つまり、七志は冒険者ギルドにとって超お得意様の可能性が高いという事で、その人物を何もしてないのにいきなり自分の所の冒険者が集団で怪我をさせた。

その事実はとても不味いのである。

 

「どうされました?!これは・・・酷い・・・」

 

奥から駆けつけたのは胸に役職が記載されている冒険者ギルドの者であった。

直ぐに苦しんでいる七志の元へ駆け寄りその腕を見て絶句した。

実はただの脱臼なのだが、見ただけでは折れている可能性も視野に入れなければならない状態であったのだ。

当然その視線は前に立つ冒険者たちの方へ向く・・・

 

「これはお前達がやったのか?」

「いや、俺達ちょっと遊んでたら・・・」

「ふざけるな!お前達白剣の滝チームだな?ちょっと奥へ来い!」

 

そう言って彼等は連れていかれる。

その間に受付嬢が救急箱の様な物を持ってきて治療に当たる・・・

幸い折れている訳ではなく脱臼だったので、腕をハメて固定していれば数日で回復するのが分かり安堵の表情を浮かべる受付嬢。

しかし、不幸な事にこの区では治療魔法使いは殆ど在住していない、それはそうだろう魔法を使用するのに希少金属が必要なので法外な金額が必要となってしまうのだ。

 

「あぐぅ・・・」

 

少々無理やりではあったが、数名の冒険者の協力で七志の腕は元通りハメられた。

それでも一度外れた事で腫れ始めており、包帯をしっかりと巻かれて固定された。

 

「これでよし、治療費についてはさっきの白剣の滝の人達に支払って貰いますので安心して下さいね」

 

そうニッコリと微笑みかける受付嬢、だが七志はその受付嬢の小指に光る指輪に視線をやった・・・

この区では魔法を使用するのに希少金属が必要、だからこそ冒険者ギルドでは非常時に使用できるようにメンバーに希少金属を持たせているのだ。

受付嬢の指に装着されていたのはプラチナルビーと呼ばれる希少金属、価格は日本円で10万円程と安いのだが・・・

 

「すみません、自分回復魔法使えるので・・・その指輪譲ってもらえませんか?」

「えっ?・・・いえ、でも・・・」

 

七志の言葉に困惑するのも仕方あるまい、七志が嘘を言って指輪を盗もうとしているのかもしれないし、なによりこれはギルドからの支給品だ。

そう考え困っていた受付嬢、だが奥から再び声が聞こえた。

 

「自分で治せるというのなら渡してあげなさい。ただし、この場で使用してもらうのが条件だ」

「いいですよ」

「うむ、それなら渡してあげなさい、代金は白剣の滝に請求するから」

「分かりました。ギルドマスター」

 

その会話でそこに立っていたのがこの冒険者ギルドのギルドマスターだと理解した七志、早速受付嬢から指輪を受け取り呪文を唱える・・・

 

「黒の魔法 火の力よ我が手より全てを照らす火の奇跡を!ファイアー!」

「なっなにを?!」

 

七志の詠唱、それを聞いてギルドマスターは慌てた。

それはそうだろう、その詠唱が黒魔法の火を起こす詠唱だからだ。

こんな室内で火の魔法を使用されたら火事になる可能性もある、慌てて止めようとしたのだが、止めに入ろうとしたその手が止まる・・・

七志は自らの包帯で固定された腕に炎を当てていたのだ。

 

「これは一体・・・」

 

驚く事に服も包帯も燃えるどころか焦げ目一つ出来ず、火に包まれていた。

そして、火が消えると直ぐに七志は包帯を外していく・・・

するとそこには時間が焼却され、巻き戻って治った七志の腕がそこにあったのだ。

 

「本当に治ってる・・・というか戻ってる?」

 

流石ギルドマスターになる程の者と言うべきだろう、七志の腕が治っているのと共に、巻くために切られた包帯が元通り復元し1つに戻っているのを確認していたのだ。

その観察力に七志も驚きを隠せずあまり突っ込まれるのも面倒だと考え・・・

 

「それじゃお姉さん振込手続きお願いしたんですが」

「えっ・・・あっ・・・し、少々お待ちください~」

 

慌ててカウンターに戻り必要書類を用意する受付嬢、その前に腕が治った七志とルリエッタは立ち、出された用紙に記入をしていく・・・

振込先は勿論スマイル館で、給金の支払いを頼んでいるスケさんとナポレさんの共同口座である。

ただ、これからレズの都に行くことも考えて数か月帰れないかもしれない、なので振り込まれる日付を3ヶ月分に分けて記載していく・・・

 

「畏まりました。それでは手数料と共に振り込みを希望される額を・・・」

 

そう言われ七志の差し出した手からそれは出てくる・・・

合計プラチナ金貨24枚、日本円にして2400万円である。

それに驚きつつも、流石プロと言わんばかりに受け取り手続きを済ませ・・・

 

「それでは24億デールをお預かりで8億デールずつを3ヶ月に分けて振り込みさせて頂きます」

「はい、よろしくお願いします」

 

全ての手続きが終わり、手数料と共に金庫の方へ受付嬢が預り金を運んでいった時であった・・・

 

「あったぞ!これじゃな!」

 

ガレフの声が聞こえ、依頼ボードに貼られた1枚の依頼書を手にこちらへやって来た。

そこにはギンジョーから聞いた通り『世界樹の雫と枝の採取』と言う依頼が記載されているのであった。

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