異世界ツクール   作:昆布 海胆

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第49話 早すぎる接近

「第3の選択として二人の未知の力を借りたい」

 

そう告げてきたのはマジメの三人と共に帰ってきたあの男であった。

左腕に装着された小さな盾、それを見たゴンザレス太郎は聖闘志のクロスを想像する…

アニオタは転生しても治らないようだ。

そんな男の視線にゴンザレス太郎の腕を抱き締めるフーカの手が強く握られた。

その様子から、スキミングで見てかなり強い人なのだと分かった事が感じ取れた。

 

「手を貸すのは構わないです。ただこちらは貴方の事を知りません、どちら様ですか?」

 

マコトが妙に親しくしており、この場に居る全員が一目置いてる。

更にはギルドマスターすらもその男の言動を意識していた、その様子から予想はしていたが…

 

「これはすまなかった。俺は盾極のデニム。Sランク冒険者だ」

 

ゴンザレス太郎の想像した通り、世界に5人しかいないとされてるSランク冒険者であった。

デニムと名乗ったその男は7歳でしかない少年少女の二人にも敬意を持った話し方をしてくる。

やはりSランクともなると、特殊なスキルを持つ者が規格外の何かを成し遂げる事を知っているのだろう。

かの宮本武蔵の様に、常にどんな相手でもどんな時でも警戒を怠らないのであろう事が感じ取れた。

その証拠に頭を下げつつも全く隙がないのだ。

 

「これは失礼しました。僕の名前はゴンザレス太郎、こっちはフーカです。」

「うん?ゴン?」

「長いんでゴン太でいいですよ」

「あぁ分かっ…」

 

その時会議室に一人の職員が血相を変えて飛び込んできた!

 

「大変です!迂回してくると思っていたマラナ渓谷を真っ直ぐに対象は進んできてます!このままですと約10分程でここに到達します!」

 

その言葉に一同は驚愕した。

マラナ渓谷と言えばこの町から徒歩で5時間は掛かる場所、それなのにも関わらず職員は約10分と言ったのだ。

しかもあそこは人参ワイバーン以外にも集団で狩りをする吸血胡瓜コウモリや、恐ろしいクチバシで岩にすら簡単に穴を開ける蓮根キツツキ、知性を持つ大根ガーゴイルと高ランクの魔物でも逃げ出す危険地帯なのにそこを真っ直ぐに向かってきていると言ったのだ。

 

「全員、計画した通りのフォーメーションに直ぐ着くぞ!」

 

冒険者達は急いで町の外に出てデニムの指示通りのポジションに着く。

 

「全属性障壁展開!物理半減障壁展開!多重結界障壁展開!」

 

ゴンザレス太郎、フーカ、マジメの3人の計5人は町の障壁の上へ案内されていた。

そして、町の前に立ち塞がる多数の冒険者の先頭にデニムが立ち、そのSランクの実力と二つ名の盾極の名の由来となった障壁を展開する!

50…いや、100に届きそうな程の多重障壁が冒険者達の前に展開され、まるでお伽噺の一つを実際に見ているような光景がそこに広がる…

 

「なんて障壁なの…あれの中の一枚ですら私の全力よりも凄いわ…」

 

結界師のメールの呟きに全員が驚く。

そして、地平線に砂埃が舞い上がっているのが視界に入ると共にそれがこちらに向かってきているのが分かった。

 

「違う…これじゃダメだ…」

 

全員が前方を見つめる中、ゴンザレス太郎一人だけが空中に向かって何かをやりながら呟いているのであった…


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