炎の塊はその場に止まり空気を焼き付くし、徐々に徐々に小さくなっていく。
熱により周囲の景色は歪み、二人の居た場所はまるで隕石が落ちたかのようにクレーターとなっているのが見え始めた。
余りの熱量に土が溶けて蒸発したのだ。
「いつもながらサラ様の炎王球は凄まじい威力ですな」
悪魔大元帥アモンがサラに話し掛ける。
サラは少し寂しそうな表情を浮かべていた。
擬似的にとはいえゴンザレス太郎を愛した気持ちの幸せが思い出され、その手で始末したのを少し後悔しているようにも見えた。
だがその表情も炎王球が消失し、黒い煙が少しずつ風に流されて驚きに変わった。
「う…うそ…」
「ば…ばかな?!」
そこには両手を広げてフーカをその身で守るゴンザレス太郎が立っていたのだ。
肩で息をしながら俯きかろうじで生きているのは分かる、だがただの人間が耐えられるモノではないのは確かだ。
実際にサラの炎王球を障壁無しで喰らって平然と耐えられるのは、魔王と打ち出した本人のサラくらいしか居ないのだ。
なので魔物達が考えついたのは一つだった。
「火炎属性耐性持ちか、人間にしては珍しいが種が割れれば何て事はない」
先程の風魔法でゴンザレス太郎を吹き飛ばした馬のような魔物が口にする。
だが火炎属性耐性持ちだとするならサラではダメージを与える方法が肉弾戦のみとなる、その為馬の魔物が一歩前に出た。
だがその馬のような魔物『ゴズ』の発言に、首を振って驚いているのは悪魔大元帥アモンであった。
「違う…耐性なんて持ってない…障壁無しでまともに受けて立ってるんだ?!」
ユニークスキル『スキミング』を持つアモンはゴンザレス太郎のステータスを全て見ていた。
だが魔法防御力も普通の人間の子供より低く、耐性属性など一つも持ってない、にも関わらずこうして立っているゴンザレス太郎に未知の恐怖を感じていた。
そんなアモンの心中など知らずゴズはゴンザレス太郎に一気に近づき、近距離から風と氷の合体魔法『マヒヤロス』を唱える!
「合体魔法『マヒヤロス』!この氷の竜巻は永遠にそこの女を追いかけるぜ!」
対象がフーカなので避けたきゃ避けろ!とゴンザレス太郎に伝えるゴズ。
空気が氷り竜巻の中で鋭利な刃物と化し、まるで動く拷問器具のように二人に迫る!
「タツヤ!もういい!私に構わず逃げて!」
フーカの叫びにゴンザレス太郎は振り返り、傷だらけで焼け焦げた顔を微笑ませて…
「助けるって約束したろっ…」
最後まで言い終わらないうちにゴンザレス太郎はマヒヤロスに巻き込まれた。
その中でボロ雑巾の様に揉みくちゃにされ、全身を切り刻まれ、傷口は凍り付き、そのまま上空に打ち上げられた。
やがて竜巻の消失と共に地面に真っ逆さまに頭から落下し、鈍い音と共に倒れるのであった。